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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた 【閑話・小話集】  作者: ひつじのはね


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33/66

ルーと石けん

2020/7/22

ごくごく短い小話

漆黒の獣は一点を見つめて身じろぎもせず、背中には落ち葉が降り積もっていた。


『人の姿になったら、身体洗うのも楽ちんじゃないの?』


すん、と鼻をひくつかせると、確かに香る獣の匂い。別に、獣の姿なのだから、この匂いがおかしいはずはない。

ただ……そう、ただ……風呂上がりのあの毛並みはいい。あれは好きだ。

ち、と視線を外して鼻面にシワを寄せる。穴があくほどみつめられていた石けんは、きっと生きた心地がしなかっただろう。

別に、泡が苦手などと……そんなことはない。

――仕方ないだろう、獣は目を擦ることも、石けんを拭うこともできないのだから。

フン、と鼻を鳴らしたところで、さっきの台詞がまた頭をよぎる。人の姿になったら、だと……そんなことのために……。

馬鹿馬鹿しい!まるで気を紛らわせようとするように、ごろごろと草の上を転がった。別に今洗う必要はねー。泡は好きじゃね-けど、あの小さい手がわしわしと洗うのは悪くない……。


――ルーはユータに洗ってほしいの。甘えん坊なの。


刹那に、生意気なチビ助の言葉も思い出してしまい、仰向けになったルーの顔にビシリと怒りの感情が浮かんだ。

瞳孔の小さな金の瞳がギラリと光った。むくりと身体を起こすと、黒の被毛に絡んだ葉っぱがひらひらと舞う。

と、唐突に被毛が金に染まり、ふわりと巨大な獣の姿が歪んだ。

「………」

するすると金の光が収縮した場所には、あぐらをかいて石けんを睨む、凜々しい青年の姿。

喉の奥で低く唸ると、ユータ特製露天風呂にはすぐさまお湯が溢れて、ほかほかと湯気をあげた。


ルーは仏頂面でばっさばさと乱暴に黒衣を脱ぎ捨てると、ざばりとお湯をかぶって石けんを手に取った。

「……ふん、両手があれば洗えるに決まってる」

つるっ

つるり……

普段から獣の姿で過ごす弊害か、不器用な手は何度も石けんを取り落とした。

「………」

ルーはイラッとまなじりを険しくすると、ざくりと石けんに爪をたてた。

「手間を取らせるからだ」

フンと鼻で笑い、さて、と指を食い込ませた石けんを泡立てようと試みる。



「――あれっ? ねえルー、これ見て! 」

「――なんだ」

黒い体がピクリと反応を示した。

「石けんが……こんなにばらばらになってるの。なんでだろ?」

「………知らん」

「ちゃんと保管してなかったから溶けちゃったのかな? こんなに細切れになっちゃうんだ」

ルーはきっちり背中を向けて、決して振り返らなかった。


更新できないのでせめて小話でも…


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― 新着の感想 ―
[一言] 石鹸掴めなければタオルも無い、哀れルー。
[一言] 自力で「あわあわ」の道が遠いルーが愛しいですね。
[一言] お疲れ様です ユータくんタオルも渡さなきゃ……
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