表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた 【閑話・小話集】  作者: ひつじのはね


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/66

シロの街歩き

2020/6/2

シロ主体のおはなし。


ユータが忙しいとき、ぼくは1人でお散歩する。


前は他の人が怖がっちゃうからできなかったけど、配達屋さんをしているうちに、随分みんなと顔見知りになったから、大丈夫になったんだよ。みんな、このきれいな腕輪さえしていたら、ちゃんとぼくだって分かってくれるんだ。

しっぽをピンと上げ、耳はぴこぴこ、足取りも軽く街を歩く。固い石の道は、ぼくが歩くとチャッチャカと音がする。

チャッチャッチャッ……

耳を立ててリズミカルな音を聞いていると、心地よいリズムに心が弾んで、お口がにっこりと上がった。


「お、シロちゃん今日はひとりかい?」

「ウォウッ!」

おじさんかな? おばさんかな? いつもお肉のかけらをくれるお肉屋さん。

ゆーたが横に入りそうなぐらい立派な人だ。こんなに大きくなるのは大変だったろうなあ。

分厚い手でなでなでしてもらって、ぶんぶんと尻尾を振った。

「今日もかわいいなあ!ま、あんたんとこはご主人もかわいいけどさ」

そうでしょ! ゆーたはかわいいよ、それに優しくて、とっても好きなんだよ! えへっと笑うと、お肉屋さんも嬉しそうに笑った。きっと、お肉屋さんもゆーたが好きなんだね!

「あんたを見てると、心がきれいになる気がするよ。ほれ、おやつだ」

ひょいっと投げられたお肉のカケラを、ぱくっとキャッチすると、急いで飲み込んでお肉屋さんに突進した。

「え? シロちゃ……」

どん、と大きな身体をすくい上げるように背中に乗せると、素早くその場を離れた。ずっしり。ゆーたとタクトとラキを合わせたよりずっと重いね、でもぼくも強いから平気だよ!


バキバキ!ガラン!


その直後、すごい音がして棚が崩れると、お肉屋さんがいた場所に色んなものが落ちてきた。

ぼくの三角のお耳には、棚がミシミシと限界を告げる音がちゃんと聞こえていたよ。ほら、あんな大きなお肉を引っ掛けておくからだよ……。

そっとお肉屋さんを背中から下ろすと、さっきまでいた場所には、でっかい剣みたいな包丁がいっぱい刺さっていた。

ぎらりと鈍く光る刃物たちを見たお肉屋さんが、空気が漏れるようなへんな声を出して、へたりと地面に座り込んだ。


危なかったねえ、たぶん、ゆーたのおうちの人と違って、お肉屋さんは大きいけど普通の柔らかい体をしてるよね。だから、きっと刺さったら痛いだろうなと思って。でももう大丈夫だからね。

お肉屋さんの震える身体がかわいそうで、怖かったね、元気出して、と頬を舐めた。

「し、シロ……ちゃん……あんた……」

大きな音を聞いて、周りの人が集まってきた。もう大丈夫だね。

お肉のお礼にもう一度鳴いて、ぼくはチャッチャカ音を鳴らしながら歩き出した。

お肉、美味しかったな! よくしてくれる人たちに、ぼくもなにか恩返しができたらいいのになぁ。

できることがないか、今度モモに相談してみようかな。 


街はお日様がぽかぽかして、色々なお店のおいしいニオイがして、ちょっと離れただけなのに、もうゆーたが恋しくなってきた。

チャチャチャチャ……

自然と早くなるリズムを感じながら、ぼくは足早にゆーたの元へと急いだ。

そうだ、お肉もらったことも教えてあげよう。ぼくが嬉しいから、きっと、ゆーたも喜ぶよ。

えへっと笑うと、しっぽがぶんぶんと揺れた。



ユータ:ねえシロ、お肉屋さんがいっぱいお肉くれたんだけど、何か知らない? シロちゃんにって言われたんだけど…?

シロ:知らないよ? 多分、ゆーたが好きだからじゃない?

ユータ:それはないかなぁ……


ピュアで無垢なシロのおはなし。

助けるのはごく当たり前なので、シロにとってはお肉をもらったことの方が特別なこと。

ただし、悪気がないからと言ってヒトが傷つかないとは限らない…お肉屋さん、言葉は通じない方がいいこともあるね…(笑)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 可愛いいいいい! 街の皆に親しまれていてほっこり。
[一言] お疲れ様ですm(*_ _)m シロちゃんは純新無垢だからぁ うん。でも色々ぐさぐさ来そうな心の声だね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ