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もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた 【閑話・小話集】  作者: ひつじのはね


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アンケート閑話 バレンタイン

2020/02/14

Twitterアンケートで1位になったキャラとのバレンタイン。

バレンタインですから、なるべく甘く……?

今日はちょっと忙しくなりそうだ。きゅっとエプロンを結んで、よし、と気合いを入れた。

たくさんのものを焼くには、やっぱり厨房の窯が一番!料理人さんたちも、すっかりパティシエ技術を身につけつつあって頼もしい限りだ。

『主ぃ、なんで朝からおやつなんだ?』

ザーッと入れたお砂糖に、チュー助が目ざとく反応する。みんなオレが作ってるのが料理なのかおやつなのか分かるようになってきたね。

「今日はたくさん作らないといけないんだ。お世話になった人にチョコ……お菓子なんかをプレゼントする日なんだよ」

『わーい!俺様楽しみに待ってる~!』

『まってゆ~!』

パタパタとかけ出して行ったチュー助とアゲハに、シロが慌てて後を追った。ごめんねシロ、お守りを頼むよ。

『お世話になった人にって言ったのに……どうして自分がもらえると思ったのかしら……』

「ふふっ、ちゃんとみんなにもあげるからね!」

『あら、ありがとう』

モモはちょっと照れたようにふよんふよんと伸び縮みした。


――クッキー?絶対そうなの!

「ピピっ!ピッ!」

バターと小麦粉、卵におさとう。ラピスとティアはもうクッキーだと大喜びでくるくる回っている。この材料で作れるものはたくさんあるんだよ?でも、今回はたくさん作るからクッキーで正解!

『チョコがあればいいのにねぇ……なんだかそれらしくないわ』

色々とこだわるモモはお気に召さないようだけど、ないものは仕方ない。たくさん作るには金太郎飴状態にして切って作るか、絞り出して作るのが一番早いのだけど、今回は感謝を込めて作るものだから、少し手間を掛けたいな。

「うーん、アイシングはどうかな?見た目がいいから特別な感じがするよね?」

『そうね!かわいいと思うわ!』

別にかわいくなくてもいいのだけど……苦笑して生地を棒状にまとめようとした所で、モモから待ったの声がかかった。

『ちょっと何してるの?!それじゃダメよ!』

「えっ?丸や四角のクッキーにアイシングするんじゃないの……?」

『そんなわけないじゃない!!』

モモの剣幕にたじたじしながら作らされたのは、オレの手のひら大のシンプルな抜き型。その形は言うに及ばず……

「えぇーハート型ってなんだか恥ずかしいよ……」

『ダメ。これ以外は認めないわ』

仕方なくポンポンと型抜きを始めたら、蘇芳がきらきらした目で見つめていた。

「蘇芳もやりたい?」

こくりと頷いた蘇芳にもう一つ型を作って渡してあげると、真剣な顔でぽんぽんやり始めた。うん、中々器用だね!


型抜きした大量のハートを焼き上げると、一気に厨房には良い香りが漂った。

『できたー?』

飛んで戻って来たのは、ぱたぱたとしっぽを振ったシロ。その口にはチュー助がぶら下げられ、チュー助の腕にはすやすや眠るアゲハが抱えられていた。

「もう少しだよ、あとは飾り付け!」

お砂糖を使ったアイシングには、果物をフリーズドライにした粉を使って色を付けるんだ。

「そうだ、ムゥちゃんの葉っぱも使おうか!」

「ムィ?」

楽しそうにポッケから作業を眺めていたムゥちゃんが、きょとんと頭を傾けた。


「あれ?ムゥちゃんの葉っぱは緑じゃないんだね」

ムゥちゃんからもらった葉っぱを同じように粉にすると、なんだかきらきらしたものになった。苦いと困るなと味をみたけど、ほんのり甘いだろうか。色はつきそうにないからベースに入れてしまおうかな。


『わ~!ゆーた、すごいね!きれいだね!』

『やっぱりハートじゃなきゃね!』

出来上がったアイシングクッキーに、シロがすごいすごいとぴょんぴょん跳ねて喜んでくれた。監修に当たったモモも満足の仕上がりだ。

「みんなには後でちゃんと渡すからね、お世話になった人に配りに行こうかな」



「カロルス様ー!」

「おう、どうした?」

両手を上げて駆け寄ると、子犬のようにひょいと抱き上げられる。

そのままオレの体に顔を埋めたカロルス様が、すんすんと匂いを嗅いだ。

「お前、うまそうな匂いだな!……菓子だろ?」

わざと顔をぐりぐりするカロルス様に、くすぐったくてきゃっきゃと身をよじった。なんだかカロルス様が言うと、そのままガブリと食べられてしまいそうな気がするよ!

「当たりー!あのね、今日はお世話になった人にお菓子をあげる日なの」

「ほう……お前の国にはいい日があるもんだな」

「うん!だからね、カロルス様にあげる!こっち来て」


ぴょんと腕の中から飛び降りると、大きな大きなカロルス様の手を引っ張って、応接室のソファーに座らせた。

「なんだ……??」

てっきりお菓子を受け取るだけだと思っていたカロルス様が、ちょっと面食らった様子だ。でも、お菓子だけじゃ足りないでしょ?

「あのね、これもサービスなの!」

「お、おう……?」

カロルス様の後ろへまわって、金の髪をゆっくりとブラッシングする。オレのブラッシングの腕は随分磨かれているからね!神獣様だって大好きだもの、きっと気持ちいいはずだよ。

「おーー……」

気持ち良さげに背もたれに体を預け、目を閉じたカロルス様。喉を晒してされるがままになっている姿は、なんだか信頼を感じて誇らしい。


ルーたちで慣れていると、カロルス様の頭の小さいこと!丁寧に丁寧にブラッシングしても、あっという間に終わってしまう。

「もうちょっとたくさん髪があったらいいのに……」

「おっお前っ!その言い方はないぞ!!」

うつらうつらしていたカロルス様が、ガバッと起き上がって頭に手をやった。

「気持ちよかった?」

「お、おう……最後以外はな」

どこか納得いかない顔のカロルス様だったけど、まあいいか。


興味津々に見つめるカロルス様の前で、テーブルにクッキーを並べ、熱々の紅茶にほんのちょっぴり薫り高い果実酒を垂らした。途端に漂う、どこか上品で高貴な香り。いつもと違う場を演出するのに最適だ。

「これ、アイシングクッキーって言うの。きれいでしょう?」

「これ、食い物か?食えるのか?」

しげしげと眺めていたカロルス様が、驚いてオレを見た。そっか、知らないと食べ物に見えないかもね。

「もちろん食べられるよ!甘くてカリッとしていて美味しいよ」

「マリーじゃねえけど、さすがに勿体ねえな」

ああ、マリーさんだとカビが生えるまで置いておきそうだ……。口に入れようとしないカロルス様に、しびれを切らしてお膝に座った。

小さな指でクッキーをつまむと、無精ひげの生えた口元へもっていく。

「はい、あーんして」

「食っていいんだな?」

もう一度確認するカロルス様がおかしくて、くすくすと笑った。間近にあるブルーの瞳が、オレを覗き込みながら大きな口を開ける。

オレの拳も楽々入りそうなお口にクッキーを差し出すと、目を伏せてサクリと囓った。あれ?いつもは一口で食べるのに。

「お前も食え、美味いぞ。半分こ、だ」

にっと笑った顔に、オレも思わず笑った。カロルス様が美味しいものを半分こしてくれるなんて、なんだかオレはまだまだ守られる対象なんだなと、ほわりとくすぐったくて、そしてほんの少しだけ悔しい。

いつか、対等になったら、セデス兄さんみたいにカロルス様とケンカできるのかな。

「どうだ、美味いだろう?」

残りの半分を口に入れると、カロルス様が得意げに言った。

「オレが作ったんだよ!」

「はっはー、そうだな!!ほら、次!」

あーんと口を開ける大きなひな鳥に抱えられ、せっせとクッキーを運んではオレも残った半分を食べる。

早く肩を並べたいとも思うけれど………オレ、まだ当分はこのままがいいな。

「美味しいね!」

「おう、うまいぞ!」

半分こ。なんだかわき上がる楽しさに、これじゃあオレへのプレゼントになっちゃうかもしれないと笑った。



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