表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キオクノカケラ  作者: 新楽岡高
第五章 ココロトジテモ
95/239

第二話 Adventure⑥

◆◇◆



 軽食を取り、小休止はある程度までの疲労が取れた辺りで終了した。


 日が傾くまではまだまだ掛かりそうで、暗くなってしまう前に出来る限り進んで置きたいと、シグと同様に俺も思ったから出る。


 午前中から賞金稼ぎに襲われっぱなしで、走り詰めだったというのに、我ながらよく体力が持っていると思う。


 身体強化術(フォルティオル)のお陰である。もっと言えば、魔力の制御向上による効率化を指導してくれたリュウのお陰でもあった。


「寝るにしても、もうちょっと開けた場所にしたいな」


「あそことか良いんじゃない? 雨風とかも凌げそうだし」


 彼女が指差すのは、少し下った場所にある洞窟。


 人が三人手を繋いで入っても入り口には余裕がありそうで、恐らくそれなりの奥行きもある事だろう。


 おまけにその近くには川まで流れている。一晩を明かす宿としてはこの上ない好立地であった。


 当たり前だがそれに俺が反論する筈もなく、二票による全会一致でそこを目指す事にしていた。


「あの洞窟までそこまで大した距離も無いけど、君達はもっと出来る限り進んでおきたいって言ってなかった?」


「言いましたけど、あんな好立地中々ないじゃないですか。それに山は天候も変わりやすいって言いますし、あそこで夜を明かすのは悪くないでしょ?」


「ちゃんと考えているんだね。でも山の天気は変わりやすいって、ラウ君は何処で知ったのさ? さっきまで見ている限り、山登りの経験は少なそうだったのに」


「え!? あ、いや……以前偶々会った人から話聞いてたんですよ」


 言えない。前世で見たテレビ番組などで説明されていたなどとは言える訳が無い。


 仮に言ったとしても、彼とシグがそれを信じてくれるとは到底思えないのだ。怪訝そうな顔をして、真面目に話せと問い詰められる未来が見える。


 その為、咄嗟に言葉を濁して答えていたが、リュウは軽く合槌を打つとそれ以上追及しては来なかった。


 ちょっとした危機が回避された事に内心でホッとしつつ、その後もリュウと他愛のない話をしていると、先導のシグが足を止めた。


「……後はここを登れば、洞窟の筈」


 後ろを振り返り、元来た道を確認する彼女は、目的地の位置を整理し、割り出している様だった。


 何せ、そもそも持っている地図には山についての詳細な書き込みは無い。縮尺的にも、そこまで細かいものは書けないだろう。


 とは言え、実際に箱入り娘と言っても良いような立場にあるシグの先導では、不安にもなると言うもの。


「本当に大丈夫なんだろうな?」


「先導して貰ってその言い草は何だ!? ふざけんな!」


「不安な事を不安だって言って何が悪い! そう言われたくなかったら自信持って進めよ!」


 何度も確認して、少し不安げな表情をした先導役など、こちらの方が不安になって来る。途中、リュウと話しながら本当に道があっているのかと何度確認した事か。


 こんな事だったら自分が先導をすべきだったと思わなくもないけれど、それだとまた俺だけが働かされる構図が生まれてしまう。


 儘ならない現実に、思わず天を仰がずには居られなかった。


「もういい! じゃあまず私から登ってやる! アンタみたいな臆病者は後からビクビク付いてくれば良いだろ!?」


「なっ!? このっ、言いたい放題しやがって……お前みたいなポンコツ先導役が一丁前な口利いてんじゃねえよ!」


 脚に強化を施し、お互い競う様にして崖へと跳び付く。単純に一番下から()じ登るよりも大幅に距離を省略しながら、登って行くのだ。


 しかしながら、やはり先に動き出したシグの方が早く、登り切るのも時間の問題だった。


「あれ、私の先導は不安じゃ無かったのか? まんまと後について来て……しかも追い付けないとか、情けないったらありはしない」


「抜かせ! 出だしの時点でそっちの方が有利じゃねえか! そんなんで誇らないで貰いたいもんだな!」


「負け犬のくせに、精々幾らでも遠吠えすれば…………あれ?」


 一足先に崖の天辺(てっぺん)を掴み、まさに登り終えようとした彼女は、間抜けな声と共に止まった。


 後はもう下肢を上に乗り上げさせれば登頂し切るというのに、中途半端な姿勢のまま固まっているのである。


「……嘘でしょ?」


「何だ、やっぱり場所でも間違えたか!? これだから頼りない先導役はポンコツなんだよ!」


 彼女がその場で呆然としているのは、好機以外の何物でもない。ただでさえ身体強化術(フォルティオル)が掛けられている体は、勢いを得た様に尚更軽くなった気がした。


 あれだけの大口を叩いて置きながら、彼女はどうやら失敗したらしいのだ。ざまあないと言ったらありはしない。


 今晩の飯は、本来の味がどうであれ美味しく食べられそうである。


 それはさて置き、この崖を登り終えた先には一体どのような光景が待っているのだろう。シグが驚きの余り固まってしまう程であるから、彼女は盛大に失敗をした筈だ。


 それを見るのが楽しみでならなかった。


「箱入り娘はもう少し世間を知った方が良いって事だ――――あ?」


 崖から嬉々として顔を上げ、そして俺は固まった。


 その先に広がる、余りにも想定外の光景を前にして理解が追い付かなかったのである。


 崖の上には、果たして彼女が言っていた通りしっかりとあの洞窟はあった。


 ぽっかりと穴を開け、確かに存在していたのである。だが彼女自身は喜ぶ事は無く、また違う一点を凝視して硬直していたのである。


 そしてそれは、俺もまた例外では無くて。


「おい、冗談きついぜ……何でこんな所に居る?」


 フシュー、と生温かい風が顔面に押し寄せた。


 二人してその悪臭に顔を顰めながらも、視線はその一方向に固定したまま放さない。いや、放せないと言った方が正しいだろうか。


 何故ならそこに居たのは赤黒い鱗を持つ飛竜、その大きな頭だったのだから。


「…………」


「…………」


『…………』


 こちらが凝視したまま視線も体も動かせずに居ると、その飛竜もまた蜥蜴の様な黄色い目で見返していた。


 そのような奇妙な間と時間が訪れてからどれだけ経っただろうか。


「おーい、大丈夫ー? どうしたんだーい?」


 下から聞こえてくる、リュウの間延びした呑気な声に反応などしてやる余裕も無かった。


 嫌な汗を流し、全身の肌を粟立(あわだ)て、呼吸も浅くなる。


「ラウくーん? シグくーん? 返事してよー?」


「…………」


 煩い黙れ緊急事態だ今すぐ助けろ。


 怒涛の勢いでそう言い返してやりたいが、下手に動けばそのまま食われてしまいそうで、口にする事は出来なかった。


 けれど、このままでは不味い事は火を見るよりも明らかで、俺はゆっくりと、本当にゆっくりと、崖を降りる為に体を動かしていた。


 熊と遭遇した時の対策が役に立つかは分からないが、息を殺し顔も背けず、そのまま段々と後退していくのだ。


 だが、ふと視界に入ったシグはと言えば、驚きの余り先程と同じ姿勢のまま微動だにして居なかった。


 不用意に動くのも危険だが、全く動かないのも危険である。そう判断して視線だけを彼女にチラチラと向けてやるのだが、結果は芳しくない。


 流石に向けられた視線だけで気付けと言うのは厳しかっただろうか。しかし、下手に声を掛けてやる事さえも憚られて、どうする事も出来なかった。


 その間にも、飛竜はその鼻っ面をシグへと向けて、彼女の(あま)色の髪が靡く程の勢いで鼻息を吹きかけていた。多分、匂いを嗅いでいるのだろう。


 俺だけはゆっくりと()(くだ)りながら尚もシグへ視線だけの警告をするものの、やはり変わらず梨の礫だった。


『…………』


 そして飛竜は、(おもむろ)にその大きな(あぎと)を開き――。


 現れた矮小な侵入者を威嚇する様に、耳を劈かんばかりの咆哮を轟かせていた。







 その咆哮は大気を震わせ、心臓にまで響くほど強烈なものだった。


 崖を掴んでいた両手を思わず離し、耳を塞がずには居られないくらいに、である。


 事ここに至ってはゆっくり崖を降りるなどと言った悠長な真似は出来ず、咆哮によって弾き飛ばされるみたいに岩肌から飛び降りていた。


 それは至近距離で大音声(だいおんじょう)を受けたシグも同様であり、彼女は両眼を強く瞑って両耳を塞いだ格好で落下していた。


 あの様子だと特に何も考えられずに落下しているのだろう。恐らく、今崖へと真っ逆さまに落ちている事を気にしている余裕も無いのだと思われた。


 当然だが、特に何もせずこの崖の天辺付近より落下してしまえば只では済まない。良くて大怪我、普通なら死んでもおかしくないと言えた。


 そうであるのだから、俺が彼女を助けなかった場合、まず間違いなく悲惨な事になる筈だ。


「……!」


 別に、見殺しにしても良かった。けれど、助けられる距離で助けられる命を見殺しにする事は、どうにも憚られて。


 人に興味はない、人を助けても無駄、人は信頼しないと何度も暗示の様に言い聞かせて来ても、結局こんな状況では簡単に剥がれ落ちてしまう。


 前世で救えなかった親友たちの顔が頭に浮かんで、ここで見捨ててしまったら彼らに尚更顔向け出来ない様な気がして。


 瞬時に全身へ魔力を巡らせ、身体強化術(フォルティオル)を施していた。


 着地した両足はほんの少しだけ地面に減り込み、しかしそれをすぐに引き抜いて横へと滑り込む。


 そしてその頭上には丁度、己が崖下へと落下している事に気付いたばかりの少女が居たのだった。


 直後、広げた両手は彼女の――シグの背中を、お姫様抱っこの様にしっかりと受け止めていた。


「~~~~~~~~ッ!?」


 崖下から上まで数十M(メトレ)もある訳ではないけれど、それでも人間一人分の質量に自由落下の勢いが加われば、受け止める方に掛かる衝撃は相当なものだった。


 実際にやった事が過去にある訳ではないものの、もしも体を強化しなければ腰や関節などを壊しかねないだけの負荷が掛かっている筈だ。


「え、何……これ?」


 取り落とさない様に苦労して受け止めてやった張本人は、呑気にも呆然として呟いていた。


 またも思考停止状態となっている彼女に、苛立ちを覚えてしまった俺は、多分悪くないと思う。出来る事なら思い切り地面に叩きつけてやりたかったが、状況はそれを許さなかった。


『――――ッ!!』


 又もや咆哮が聞こえたと思えば、上空には大きな翼を広げた飛竜が飛び上がっていたのである。


 その胴体は広げられた翼に比べると小さく、例えるならば地球の絶滅生物である翼竜の如きシルエット。


 しかしその下肢には長い尾が付いており、体もそこまで貧相には見えない。


 逆光のせいで色合いや細部までは分からないものの、明らかにその辺の妖魎(モンストラ)とは格が違った。


「急に何事かと思ったら、これはまた……君達も凄いの引き当てたね」


 少し離れた背後に立つリュウも、声の様子からして空を見上げているらしい。


 そこには驚きもあるが、何かに対する呆れも混じっていたように感じられた。


「ド、赤竜(ドラコ・ルベル)……!?」


「あー……これが話に聞く」


 驚きのせいか目を見開いたままの彼女を腕から降ろしながら、我が物顔で空を舞うそれを改めて見上げる。


 類型種が多く存在する為、飛竜種(ウィウェルヌス)として分類される翼を持つ蜥蜴。


 長い尾も活用して自在に大空を飛び回り、殆どの生物にとってみれば射程圏外から攻撃を仕掛けてくるので、生態系上位に位置する存在だ。


 当然それは人間からしても同じ様に厄介この上なく、狩猟者組合(ギルダ・ウェナトルム)の出している依頼区分では上級(スペルス)に設定され、多くの人がその危険度を認知している。


 滅多に討伐依頼は出されないが、その分一度でも討伐すれば狩猟者(ウェナトル)は一躍有名人と成れる程だ。


 それくらい有名で、誰にでも分かりやすく強いという印象が持たれている。酒場で何度かこの類の話を小耳に挟んだ事はあったけれど、討伐隊が壊滅する事も普通にあるのだとか。


「この辺に妖魎の影が全くないから、おかしいとは思っていたんだよね。何か変なのが居るなとは分かっていても、ここでまさかの赤竜(ドラコ・ルベル)を引き当てるか……」


「だったら最初からそう言って下さい! 流石にこれはリュウさんも介入してくれないと無理ですよ!?」


「いや、ラウ君もある程度は山の知識がありそうだったし、警戒していると思っていたのだけれど、違った?」


 恐らく彼は、少し前に俺が「山は天候も変わりやすい」と言った事を指しているのだろう。だがそれはあくまでも前世で得た山の知識である。


 魔法があって、文明水準も違って、獣以上に凶悪な妖魎(モンストラ)が居るという、地球とは全く違う異世界(ここ)で役に立つ訳が無かった。


 ましてや、前世でさえ碌に山は登った事が無い。


 それなのに色々と知っていた方がおかしいくらいだと、怒鳴り散らしてやりたい気分だった。


「まぁ、大丈夫。君らならこの事態も何とか出来るでしょ? 僕は信じているよ」


「思っても居ない事をどうもありがとうございます」


 結局、今回も彼は手伝ってくれるつもりはないらしい。剣も抜かず、腕を組んで悠々と空を舞う飛竜を眺めて居るのだった。


 衝動的に殴りたくなるのだが、これまで散々稽古して来ただけに、勝ち目が無いのは目に見えている。露骨に舌打ちをしてやりながらも、仕方なく空に目をやった。


「シグ、赤竜(ドラコ・ルベル)と戦った事は?」


狩猟者(ウェナトル)でもないのに、ある訳ないじゃん」


 戦闘の邪魔なると判断して外套を脱ぎ捨てながら、横に立つ少女に問い掛ければ、素っ気ない返事が来る。


 リュウに続いてまたストレスを溜めさせるようなシグの応答に思わず二度目の舌打ちと嫌味を混ぜながら重ねて問う。


「使えねえな。元がついても東帝国の第三皇女だろうに。じゃあ、あれの習性とか特性は?」


「人に訊ねるならもう少し態度をどうにかしたら?」


「はいはい、それでどうなの?」


「……私についてた教師の話だと、大体色ごとに属性が違うらしいってのは聞いてたけど」


 実際に使う知識でも無いと判断されていた為に深くは教えられる事もなく、彼女自身も縁遠い事だと思って大体忘れてしまったらしい。


 その有様に思わずわざとらしい溜息が漏れた。


「それ以外は分からない、って? そんなので帝国は大丈夫なのかねえ」


「逆に訊くけど、アンタはこうなるって予想してた訳? 私にそこまで言えるなら、そう言う事でしょ?」


「……高貴な生まれで、高貴な教育をお受け為さって来た元皇女様なら何か知って居るかもって思っただけだ。期待するだけ無駄だったけど」


 大仰に肩を竦めて見せれば、彼女の天色の目が細められる。その姿は思っていたよりも様になっていて、やはり貴族の人間なのだなと感じさせる。


 もっとも、だからと言って気圧される訳では無かったが。


「あ、そう。私は最初からアンタみたいな人間は期待するだけ無駄だと思っていたから、そう言われても何とも思わないね。育ちが悪いと性根が悪くなる人も居る訳だし」


「なあお前、タグウィオスのおっさんの話だと民にも優しいって聞いてたのに、さては化けの皮でも被ってたか?」


 聞いていた話とは全然違う。獄中で聞いた話では民を思いやる素晴らしい皇女の様に描写されていたが、もしや誇張も入っていたのだろうか。


 あるいは人気取りの為だったのか。だとすればあのマルコスとの政争で負けたとて不憫に思ってやる事は無かったかもしれない。


 だが、彼女が募る苛立ちを漏らすみたく強く真っ直ぐに睨みつけて来た辺りを鑑みるに、化けの皮を被っていた訳では無さそうだった。


「労わって欲しかったの? でも残念、別にアンタは帝国の人間でも何でもないでしょ? それに、私としては白儿(エトルスキ)とかで差別するつもりは全く無いけど、人に頼るだけで好き勝手言う人なんて大っ嫌いだし!」


「じゃあその大っ嫌いな奴に助けられた気分はどうだ!? そういやお前から未だ礼の一言も貰ってなかったよな!?」


 苦労して受け止めてやったというのに、そう言えば飛竜の出現と言う事実の前に有耶無耶となってしまっていた。


 だが、彼女が人間性云々を説くと言うのならば、絶対にここは指摘しておかなくてはいけない点でもあった。


「へえ!? 勝手に救っておいて御礼を求めるの!? 浅ましいったらありゃしないな! だから私はアンタが嫌いなんだ!」


「助けられたら口だけでも礼は言うだろ普通! どの口で俺を貶せるって言うんだ!?」


「何だって!? この……!」


 気付けば額と額が接触しかねない程の距離で睨み合い、口論は白熱して行くと思われた、そんな時。


 やや苦笑の色が見えるリュウの声が、そこに割って入っていた。


「……二人共、仲が宜しいのは大変結構だけれど、その調子で本当に後ろは大丈夫?」


「「後ろ……?」」


 邪魔するなと言わんばかりに二人してそちらへ目を向けて睨み付けてやるが、その言葉でおずおずと背後に首を巡らせた。


 するとそこには、俺達目掛けて凄まじい勢いで接近してくる赤竜(ドラコ・ルベル)の姿があった。しかも殺意と攻撃の準備は万端らしく、矢の様に突っ込んで来るその口元には炎の影がチラついていた。


 既に接触まで殆ど猶予も無い。当然、回避が間に合うとは思えなかった。()しんば躱せたとしても、あの巨体の引き連れる風圧で体勢を崩すのは必至。


 それでも散々リュウから練習させられていた事もあって、向上した魔法の発動速度で瞬時に魔力の盾を生み出す。


 間髪入れずに盾をかなりの衝撃が襲い、火の粉と共に肌を焼くような熱風が押し寄せてくる。


 その上更に、何か大きな物が引っ掻くような音がして、再度大きな衝撃が盾を揺らしていた。


「クッソ、なんつう威力だ!?」


「多分、赤竜(ドラコ・ルベル)吐炎(レスピロー)と脚の鉤爪だ! 次も来るぞ!」


「呑気に説明してないでお前も戦えよ!?」


「折角人が教えてやったのに、一々無駄口の多い……!」


 不機嫌そうに整った顔立ちに皺を刻んだシグは、それでもすぐに魔力を練り、機関銃の様に氷の弾丸を撃って行く。


 だが相手は空を自由に飛び回る相手。目も良いのか、痛撃を与えられる気配はなかった。


「ちゃんと狙え!」


「この距離からそう簡単に当てられる訳ないでしょ!? そこまで言うならアンタもやってみれば!?」


 言われるまでもない。盾として展開していた魔力を分割し、残っていたそれらを白弾(テルム)として活用しようとした、が。


 こちらを牽制する様に飛竜はもう一度、吐炎(レスピロー)を放っていたのだった。


「無駄に狡猾だな、コイツ!?」


 慌てて分割した魔力を再集結させて盾とするが、この動作と攻撃を受け止めた事で、盾として展開していた魔力はその量を大きく減じていた。


「もういい、俺が基本守りと援護に回るから、シグが仕留めろ!」


「何でアンタが渡しに命令されなくちゃいけないんだ!? ……まぁ良いけどっ!」


 彼女の魔法は、氷造成魔法。炎を吐く赤竜とは相性が悪かった。それ故にこの状況下では、攻撃が出来ても防御には不向き。


 純粋な魔力の塊である白魔法(アルバ・マギア)の方が、相性も気にせず敵の攻撃から身を守れるのである。


 ある程度の間隔を開けて襲来してくる吐炎(レスピロー)を防ぎながら、時折牽制の為に幾つか白弾を撃っているが、正確に狙い撃てる訳でも無いので当たらない。


 しかし、横では俺に守られてしっかりと狙える筈のシグもまた、碌な攻撃を当てられていなかった。仮に当たっても、何の痛痒も感じていない様である。


「おい、お前ちゃんと殺せる攻撃してるんだろうな!?」


「そんなの当たり前でしょ! でも、距離があるのと奴の鱗が固すぎて……!」


「じゃあデカいの一発撃てよ!」


「それで当たったら苦労はしないだろ!? 野次ってないで援護しろ!」


「してるだろボケナス!?」


「もう少し援護の質を上げろって言ってるんだよ!」


「じゃあお前はもう少し命中率と威力を上げろ!」


「……僕の見立て以上に余裕そうだね、二人共」


 不意に背後から聞こえた、穏やかなリュウの言葉。しかし暗に真面目にやれと言われた気がして、そこで口論は打ち止めとなる。


 その分、口論に向けていた意識が周囲に()てられるようになり、お陰でふと気づく。


 視界の端で、ちりちりと何かが燻ぶっている事に、意識が向いたのである。


「なぁシグ、あれ!」


「何!? 私は忙しいんだけど? アンタも手を止めてないで……っ!」


 不機嫌な表情と声をしながら俺の指さす方を見た彼女も、その手を思わずと言った様子で止めていた。


 それもその筈、視界の端で燻ぶっていたのは木の枝だったのである。おまけに燻ぶっている火種は一つや二つではない。


 放っておけば、もしくはこれ以上の火種が追加されてしまえば山火事になってしまう可能性まであった。


「これもういよいよ洒落になんねえぞ!? シグ、早く勝負を決めろ!」


「そんな事言われても……!」


「皆仲良く丸焦げになりたいのか!? とにかく急げ!」


 出来る事なら戦闘も放棄して撤退したい。可及的速やかにこの山から退避すべきである。


 しかしながら、それは今も空を舞っている飛竜が簡単に許してくれるとは到底思えず、思わず悪態を吐いていた。


「ってか何であんな場所に赤竜(ドラコ・ルベル)が居るんだよ!?」


「これは僕の想像だけれど、君達が向かっていたあの洞窟が巣だったんだろうね。で、君達は目出度くそれに近付いた侵入者である、と」


「今そんなご丁寧な解説は望んでないんですけど!?」


 口を出すくらいなら手を出して欲しい。リュウほどの実力者なら、まず間違いなくこの場からの逃走或いは討伐も行える事は明らかなのだから。


 もっとも、こんな事態にまで陥っているというのにリュウは相も変わらず呑気なまま。観戦気分で介入してくれる様子は一切無かった。


「このままだと山火事になってもおかしくないんですからね!?」


「そりゃあ、赤竜(ドラコ・ルベル)がこんな木々の生い茂る所を住処にしていれば当然だろうね。あの子が火を吐いた時点でそれに気付かなくちゃあ駄目でしょ」


「異常事態が連続してるのにそんなのに気付けるわけあるか!? 何でも初見でこなせる程に俺は出来る人間じゃないんですよ!」


「まぁ大丈夫さ。君達なら出来る」


「その根拠の無い自信と信頼は何処から出てくるんですかね!?」


 そんな遣り取りをしている間にも、盾が受け止めた吐炎の火の粉が舞い、火種が増殖していく。


 今のところは乾燥した枯木や落ち葉、少しの枝葉が燃えている程度ではある。


 生木が燃えにくいのは周知の事実だが、それでも何度となく火の粉が巻き散らかされれば素人でもその後の結末は想像がつく。


 いつ完全な山火事となるかは分からないけれど、そのタイムリミットはそこまで遠くはなさそうだった。


「ラウ! そっちに文句を言ってる暇はもう無いよ! 早く手伝って!」


「言われるまでもねえ! とっとと仕留める!」


 飛竜の攻撃を受け切った魔力の盾を瞬時に分解し、狙いもそこそこに弾幕を張る。赤竜(ドラコ・ルベル)の逃げ道を塞ぐように軌道を曲げ、上下左右から囲い込む様に放っていたのだ。


 これによって逃げ道をある程度限定されてしまえば、シグもまた狙い撃つのが容易となる。そう考えたのだが。


「……あ!?」


「馬鹿野郎!? 何でこんな時に外す!?」


 狙い澄まして、一際大きな氷弾(テルム)を放ったのにもかかわらず、狙い過ぎたせいか直撃コースから逸れてしまう。


 そしてその上で、お返しと言わんばかりに放たれる吐炎(レスピロー)。慌ててそれを展開した盾で受け止めるが、又もや辺りには熱風と共に火の粉が舞う。


 山火事の危険もそうだが、何度も高温の攻撃を受けていた事で周囲の気温も上昇しており、喉も渇いて来る。


 このままずっといては熱中症になる可能性も考えられ、状況は更に悪化の一途を辿っていた。


「皇族のくせに下手糞な奴だな!? 俺なら絶対当てたぞ!?」


「う、煩い! じゃあ今度はアンタが攻撃すれば良いだろ!?」


「お前が氷の盾張っても一瞬で溶かされるだろうが!?」


 溶かされないにしても相性が不利なのだから、彼女に防御を任せて氷の盾に隠れるのは心臓に悪かった。


 だからシグがどうにかしてアレを仕留めてくれるのが一番良いのだが。


「今度また赤竜が近付いて来た時に、アンタが乗り込めば良いんじゃない!? 私よりも身体強化術(フォルティオル)も得意だって言うんだから、それくらい朝飯前でしょ!」


「馬鹿か!? 流石にそんなのは経験した事ねえよ! 危なすぎる!」


「その代わり私が援護する!」


「けどなぁ……」


 その時、再びこちらへと炎の塊が放たれる。


 咄嗟にそれを受け止めようと盾を造ろうとして、それをシグが片手で制す。


 何をするつもりだと思いながら彼女を見ていると、瞬時に大きく分厚い氷の壁を造り出していた。


 壁の向こうで吐炎の衝突する音が聞こえたが、それだけだ。溶ける事もなく、微動だにせず氷の壁はそこに在った。


「アンタ、散々私の事を貶してくれたけど、帝国の皇族は伊達じゃない。政略結婚もあって魔力の多い血筋が選択されて来たからな」


「……!」


「さっきまで散々あの攻撃の威力は見て来たし、相性の不利があってもこの程度ならどうにかなりそうだと思ったけど、その通りで良かったよ」


 盾として展開されていた氷の壁は、その瞬間一気に分割され、杭のように尖った形となっていく。


 それらは一気に殺到し、しかしやはり今までと同じように赤竜(ドラコ・ルベル)は回避していくのだった。


 そして、しっかりとこちらを見据えながら突っ込んで来る。何度目かの鉤爪による近接攻撃をしようとでも言うのだろう。


 こちらとしても、またとない絶好の機会だった。


 彼女は無言で、又もや氷の分厚い壁を造り出し、赤竜との視線が断絶した隙に、壁の正面へと回り込む。


 丁度その時に吐炎が直撃し、火傷してしまいそうに思える程の熱風が叩き付けて来るものの、些事と斬り捨てた。


 一方、俺に気付いた様子の無い赤竜(ドラコ・ルベル)は、今度こそ手応えの無かった攻撃を成功させたかったらしい。壁の向こうに居るシグの命を絶つべく、(さか)しくも迂回しようとする動きを見せていた。


 しかし、壁から顔を出していた俺からすれば、その動きは丸見えである。


 速度はそのままに右へと舵を切る赤竜(ドラコ・ルベル)の足へと、機会を見計らって跳躍した。


『!?』


 意識していなかったところから唐突に何かが付着した事に、赤竜(ドラコ・ルベル)も即座に気付いていた。その長い首を巡らせ、人で言う所の白目が黄色くなった目で俺を凝視していたのである。


 それに対して睨み、笑い返してやりながら、必死に脚へしがみ付く。何せ風圧が凄まじいのだ。呼吸するのも苦しく、気を抜けば振り落とされてしまいそうだった。


 その上更に、赤竜(ドラコ・ルベル)自身も体に引っ付いて来た矮小な存在を振り落とそうと目まぐるしく軌道を変えて来る。


「……ッ!」


 既に地面は遠く、この距離から生身で落下でもしようものなら即死は免れない。それは身体強化術を施していたとしても、ただでは済まない事を示していた。


 心臓は激しく拍動し、じわりと嫌な汗が頬を伝い、風によって飛ばされていく。


 このままではその内振り落とされてしまう――。


 そう思った時だった。


 飛竜の体に衝撃が走ったと思ったら、先程までの滅茶苦茶な飛行軌道が不意に止まったのである。


 何事かと思って竜の体を見遣れば、それは大きな氷の杭によって腹を貫かれていた。


 一歩間違えれば俺もその攻撃に巻き込まれていたかもしれないというのに、シグも自分と思い切った攻撃をしてくれるものである。


 けれど、その援護によって赤竜(ドラコ・ルベル)の動きが大幅に鈍くなったことに変わりはない。


 竜の足に掴まり続ける以外にも余裕が出来た俺は、持っていた槍を突き刺しながら、魔力を練る。

 何をやるかは言うまでもない。


 赤竜(ドラコ・ルベル)もまた本能でそれを察したのか、傷付いた体でも弱々しく暴れ出し、自傷も厭わずに吐炎(レスピロー)を放つ準備に入っているらしかった。


 しかし、それよりも俺の方が早い。


 生成するのは、一撃で飛竜を殺せるだけの魔力を込めた、白弾(テルム)


 向上した魔力操作もあって、圧縮したその魔力の塊の大きさは、人の頭よりは尚も大きいと言った程度。


「これでッ――ッ!」


 頭部だと外す可能性もある為、狙いは真上。人と比べたら遥かに大きなどてっぱら(・・・・・)を攻撃するのなら、不安定な状況下でも当てる事は容易だった。


『――――ッ!?』


 赤竜(ドラコ・ルベル)の喉の奥から、赤い炎がせり上がって来ようとしているのを横目に見ながら、白弾(テルム)を放つ。


 無論その狙いが外れる筈もなくその腹を固い鱗ごと貫き、破壊した。


 一瞬で赤竜には見事な風穴が開き、それは俄かに悶えだす。


 撃ち出される寸前だった吐炎(レスピロー)は喉の途中でつっかえた様に止まり、体に開いた風穴からは火の粉が舞いつつある。


「……え?」


 まさか、とは思った。


 そこはかとなく嫌な予感がして、背中が粟立つ。


 そして最悪の予想を実現したかのように赤竜の鼻や口、傷口から炎が噴き出し、段々と大きくなっていく。


 既に大空で羽ばたいていた大きな翼は動きを止め、慣性のままに山から離れた方向へと滑空する様に進んでいくのだ。


 このまま行けば、生い茂る木々の中へと突っ込んで行くのが先か、もしくは爆散炎上でもするのが先か。


 どちらに転んでも最悪な事に変わりないが、どうなっても言いように素早くこの場から脱出する必要があった。


 このまま飛び降りるか――却下。ただでさえ勢いも付いているのに、この高さから降りたら如何に身体強化術を施して居ようとも、自分の練度では意味がなさそうだ。


 リュウがやって居た様に、魔力で足場を造り出すか――これも却下。問題はやはり速度だ。空中に足場を造ったとしても、勢いを殺せなければそこから落下してしまう。何より、自分の練度ではまだ出来ない。


 もはや八方塞がりである。


 その間にも高度はグングン下がり、地面への激突ももはや秒読み段階だ。


「クソ……!」


 こんな事態なればリュウがもしかすると助けてくれるかもしれないと思ったが、流石に飛竜に追い付くのは至難の業だろう。


 間に合うとは思えなかった。


 それでも何か手はないかと思って焦る脳味噌をフル回転させる、が。


 しがみ付いている赤竜(ドラコ・ルベル)の脚が、どういう訳か熱を持ちつつある。普通、生命機能を停止していれば体温も一定以上からさらに下がってしまう筈なのに、だ。


 もしや未だ生きて居るのかと思いかけたものの、それにしては体温が高い。飛竜が変温動物か恒温動物かは知らないが、これはどちらにせよ異常だった。


 だとすれば、その異常の原因は何か。


 難しそうなその問題は、意外な事にすぐさま判明した。


 何せ、傷口などから飛び出す炎が、更に勢いを増していたのだから。


「ふざけんなっ――!?」


 誰に対してでも無く悪態を吐いた直後、煙をたなびかせる赤竜(ドラコ・ルベル)の体は、爆散した。


 咄嗟に魔力で盾を造った事で身を守る事は出来たが、衝撃までは殺し切れない。


 踏ん張る足場も喪失し、為す術なく青空に投げ出せるのだった。


 一瞬の浮遊感に襲われる中、スローモーションの様な視界に広がるのは、人の手が入っていない大自然。少し向こうにはリュウやシグも居るであろう山が見え、そこからはこちらの方へと澄んだ川が伸びていた。


 それらの雄大な自然を鳥瞰(ちょうかん)し、ああ綺麗だなと刹那の間に感じて。


 間を置かず、俺は自由落下を開始していたのだった。


「~~~~~~~~ッ!?」


 悲鳴を上げる余裕もない。高さ的にはもう問題なさそうだが、迫って来るのが地面では無く木々と言うのも中々に迫力がある。


 出来る限り全身に魔力を張り巡らせ、身体強化を施しながら目を瞑るのだった。


 体を出来る限り丸め、来るべき衝撃に備えて――。





◆◇◆





(あつ)ッ!? あち、あっちちちちち!?」


 木の枝葉は、落下時の衝撃を和らげてくれるとは聞いていた。そのお陰か、身体強化もあって怪我を負う事は無かった。


 しかし、そこで一息吐けたかと言えばそれは違っていて。


 あの時、赤竜の体が爆散した際に、その火の粉が俺の服を少しずつ燃やしていたらしい。


 気付いた時には“かちかち山”よろしく背中の方が燃え上がっていたのである。その結果、手に持っていた槍も手放し、もはや形振り舞わず転げ回る羽目になっていた。


 寒さも凌ぐ上で貴重な服なのになどと思う暇もなく、とにかく熱くて仕方ない。


 形振り構わず火を消そうとしているのに、勢いが強いせいか一向に鎮火してくれない。このままでは火達磨になってしまいそうだった。


「水……水っ! 川!!」


 そう言えばここへ落下する際に、この辺りに川があるのは見えていた。距離も早々離れていない筈である。


 大至急、何としてでもそこへ向かう必要があった。


 その為に川があるであろう方向を目指して一直線に全力で駆けだし、そして清流と大きな石の転がる河原が見えてくる。


「うおおおおおおおおおっ!!」


 もしかしたらその川の中には大型の水棲の妖魎(モンストラ)が潜んでいるかもしれない、と警戒して居られる余裕は、もう一分も無かった。とにかく、今も服を燃やし続ける火を消さなくてはならない。


 理性などもはや吹き飛び、躊躇なく川へと飛び込むのだった。


 すぐに全身を冷えた水が包み込み、あれだけ背中で存在感を放っていた熱は瞬時に鳴りを潜める。


「――ぷはっ!!」


 背中は火傷のせいでヒリヒリするが、何はともあれ助かった事には変わりない。地獄の痛みから解放され、俺はしゃがみ込んでいた水中から立ち上がる。


 川の水深は立ってしまえば腰より少し下程度しかなく、溺れる心配もなさそうだ。


 俯いて目元を拭いながら、長い安堵の溜息を吐いた、その時。


 視界の外で、水音がした。勿論それは川の流れとは違う、作為的な音である。自分が立てた水音でも無い。


 つまりすぐ近くに何かが居る訳で。


「――ッ!!」


 即座に身構え、そちらを睨み付ける……のだが。


 そこに居たのはどう見ても人を害すようには見えない、一人の少女だった。


 年の頃は多分年上で十六、七くらい。緑髪緑眼で顔立ちは整っているが、その相貌はどちらかと言うと綺麗と言うよりも可愛いと言った方が正しいだろう。


 人当たりの良さそうな、包容力のありそうな性格を象徴するように、彼女の胸にあるたわわな双丘は見事の一言――というか、全裸だった。


 片手に手拭を持っている事を見るに水浴びでもしていたのだろうが、何せよ一糸纏わない生まれたままの姿である事に変わりはない。


 彼女自身、こんな森に大して人など居ないとでも思っていたのか、水の滴る若々しい肌は惜しげもなく陽光に晒されていた。


 しかし、少女はその瑞々しい肢体を隠そうともしない。寧ろ驚きで目を見開いて、確認する様に訊ねて来るのだ。


「ラ、ラウ君……だよね?」


「……レメディア?」


 思わず、こちらもまた訊き返していた。


 何故なら相手が俺の名を知っている様に、俺もまた相手の名を知っている。


 知らない訳が無い。忘れない訳が無い。


 彼女はレメディア。まだ貧しくも平穏な暮らしが出来ていた頃、寝食を共にした掛け替えのない“家族”の一人だった(・・・)から。


 知らない振りなんて出来ない。


 タルクイニ市で別れの言葉を告げて、もう二度と会わないだろうと思っていたのに。


「良かった……無事なんだね」


「何で、何でお前がここに……?」


 綺麗な緑色の瞳から一条の涙を溢す、少女。


 その顔を凝視しながら、信じられない気持ちを発露させる様に訊ねていたのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ