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キオクノカケラ  作者: 新楽岡高
第一章 コノヨニウマレ
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No going back ②



 つん、つん、と誰かが頬を突く。

 それを、俺は目を瞑ったまま手で除けると寝返りをうった。

 すると、今度は背中を小突いて来る。


「……ぅん」


 誰だ、人が気持ちよく寝てるのに。

 クィントゥスだろうか? いや、寝相の悪いアイツなら豪快に蹴っ飛ばしてくるはずだ。レメディアは論外だし、だとしたら子供達だろうか。

 グナエウス辺りなら確かにこんな悪戯をしてきても不思議では無いし、ちょっと注意した程度では止めないだろう。

 全く、面倒臭い奴らである。


「おい、いい加減にしろよ」


 目を開けてそう言うが、顔からは自然と笑みがこぼれていた。

 だが、眼前に広がっていた光景に、俺は表情そのままにして固まってしまう。


「……」


 何故ならば、向かい合っていたのは人懐っこい笑みを浮かべた男の子ではなく、人のそれとはかけ離れた複眼を持つ、醜悪な顔をした蜘蛛のそれだったのだから。

 大きさは人の頭くらいだろうか、八本ある足で器用にバランスを取り、こちらの様子を窺うようにうち一本の脚で尚も俺の頬を突いて来る。


「ぅ……うぁぁぁぁぁぁぁあっ!?」


 少しの間、状況が呑み込めず阿呆面を晒していたが、そこに至って絶叫していた。大慌てで右手を振るってそれを払い除けると、すぐに飛び起きて辺りを見渡す。

 空は既に暗く、目の前にあった筈の焚火も煙すら昇らず完全に消えてしまっていた。

 どうやら、少し休むだけの筈が完全に寝入ってしまった様だ。

 そもそも、村を飛び出した俺の周りでクィントゥスやレメディア達が寝ている訳無いし、突発的とは言え覚悟を持って一人で居るのに一体何を望んでいたのか、と俺は自分を罵倒する。

 一方でそんな事を思っているとは露知らず、払い除けられた蜘蛛は弾かれた様にその場から走り去っていった。


「今、何時だよ?」


 日の出まであとどれくらいか、それをある程度は図ろうと空を見上げれば、月は今丁度昇り切った所だろうか。

 そうなるとそれから日が昇るまでの時間、新たに火を起こさないのであればずっと警戒が必要だし、それを避ける為には再び火を起こさないといけないだろう。

 二度手間となってしまった事に舌打ちしながら、乾燥した木の棒と、幅のある枝を積み上げた薪の中から引っ張り出す、のだが。

 不意にした誰かの息遣いを、微かだけれども確かに聴きつけた。

 その数は、一つ。聞こえて来る足音から二足歩行では無く、鼻か何かで匂いを嗅いでいる様だ。

 そしてそれは着実にこちらへと近付いて来ており、もしかしなくとも狙いは俺であるのかもしれない。

 だとすれば、それは一体何なのか?

 恐らく獣であろうが、果たしてその大きさは如何ほどか。

 逃げるのもありだが、匂いを辿られているのでは無意味だし、何より夜の森を歩き回るのは明らかに危険だ。

 ひとまず、丁度良い長さと比較的硬い薪を引っ張り出すとすぐに振れるように身構える。

 戦い方など全く知らないが、今この時間はこうするより他なかった。


「……」


 段々と、近付いて来る気配。

 その足音は身を隠している岩のすぐそばまでやって来て、そして止まった。

 不思議な事に、それっきりその足音は少しも聞こえて来ないのだ。

 一体何が起きているのだろうかと思いつつも、俺はその音の主が頭を出した瞬間に叩きのめしてやろうと息巻いていた。


「……?」


 しかし待てど暮らせど、今か今かと手に汗握って構えていても、一向にそれが攻撃圏内に姿を現す事は無かった。

 流石にもどかしくなってきて、だったら意を決してこっちからやってやろうかと思い掛けた、丁度その時。


 不意に、頭上から――岩の上から、音がした。


 ハッとして顔を上げてみれば、そこには月を背にして岩から飛び降りて来る、一体の狼の姿があったのだった。


「――ッ!?」


 驚く間もあればこそ、殆ど何も出来ないまま二本の大きな牙を持つ狼によって仰向けに押し倒され、無防備になった俺の首筋目掛けてその鋭牙を立てられんとしていた。

 絶体絶命。

 これ以上最適な言葉は見つからないと言えるその状況化にあって、その手に持っていた武器代わりの木の棒を咄嗟に横向きにし、轡のように噛ませていた。

 流石にそれなりの太さを持つ木の棒を奥歯だけで噛み砕く事は簡単に出来ないのか、美味くもないそれを噛まされている狼は不満そうに喉を鳴らす。


「……くっ、そ! 何なんだよコイツっ!」


 完全に裏をかかれたと己の愚鈍さを呪いながら、噛み付かれている木の棒ごと狼を必死に押し返すのだが、上を取られてしまったために中々不利な状況から脱せない。

 しかも、今やこの命を繋いでくれていると言っても過言ではない木の棒は既にミシミシと軋み始め、大きくたわんでいた。

 少しずつ、迫って来る牙と死。

 生まれ変わっていることを自覚し、村で暮らして居た時から、いつ死んでも仕方がないと諦めの境地で居たというのに、いざこんな状況になって見たら死にたくなくてしょうがなかった。

 別に死ぬのが怖いとか、そう言う訳じゃ無い。そうでは無くて、ただ死にたくない。生きたいのだ。

 思えば、本当に死にたいと思ったらあの時にルキウスを殴って逃げるのではなく、その場に留まって居れば良かったのだから。

 それでも俺は、その選択を採らなかった。死ぬという考えを、最初から採らなかったのだ。

 生きたいと、俺はやはりどこかで思っていたのだろう。

 生きたかった筈なのに死んでいった前世の親友たち、そして今世の俺の肉親。そんな彼らの姿を見て、どうやら今の俺は生きたいと思っていたのだろうか。

 けど、このままではどうやったって死ぬのは時間の問題で、狼の口は目前にまで迫って来ていた。

 それでも尚、歯を食い縛り狼の目を見返しながら叫ぶ。


「この、ちっくしょうがァ!!」


 ここで死んだら、結局逃げた意味なんて無い。

 ここで死んだら、生まれ変わった事も意味も見出せない。

 あんな別れ方になってしまったが、レメディアとだってもう一度会って話したいし、クィントゥスやまだ小さな子供達とだってちゃんと会って話してから別れたかった。

 それをする為にも、まだ死ねない。

 前世では訳わからない奴のせいで天寿を全うできなかったのだ。

 生きてやる、生きてやる、生きてやる。意地でも、自分の力でこの世にしがみ付いて生きてやる。

 その為にはこんな(ヤツ)、邪魔なんだよ。


「う、おおおおおおおっ!」


 不意に、胸先で淡く白く光る球が現れた。

 当初は幻覚だろうかと思ったものの、しかしその光は狼の目にも映りこんでおり、しかも段々とその大きさを増していく。


「……っ?」


 何だ、これは。

 その答えは、体内に流れている未知の存在が教えてくれていた。

 段々と、体内から不思議な何かが抜けていく、そんな感覚。

 体力とか、そう言うものじゃない、また違う何か。

 それが魔力だと気付くのに、一秒だって掛からなかった。

 つまりこれが、発現した魔法の正体。

 白い光の球――もしやこれが、“白魔法(アルバ・マギア)”なのか。

 しかしながらこの魔法は自覚無しに動いてしまっている訳で、言ってしまえば暴走状態と同義。

 どうすれば良いのかも全く分からない状況の中でも白く光る球は膨張を続けて行き……。




 そして、唐突に堰が決壊したような、風船が割れたような感覚が俺を襲っていた。




「――ッ!?」


 視界を真っ白に染める、光。

 不思議と音なんて一切聞こえない中で、俺はその眩さ故に瞼を固く閉じ、その閃光が止むのを待って居た――。





◆◇◆





 遠く、遥か遠くの空に、白い柱が立つ。

 その発源地であろう場所は月明かりなど比較にならないほど一際白く光り、あたかもそこに己が居ると辺りへ喧伝しているようだった。


「……」


 その様子を立ったまま見つめる人物が、一人。

 名もなき草原の中にポツンと立ち、月明かりに照らされた彼の外套は、薄鈍色。仮面を着けている事もあって、彼が男か女かを見分ける事を極めて困難なものにしていた。

 その顔面を覆う仮面は、その双穴から覗く紅い眼以外は白地で装飾も疎ら、少し知視線を上げれば髪も純白であった。

 外套の下にある彼の装束は、それぞれ藍色の上衣と黒っぽいズボン型の袴で構成され、首からは首飾りと思しき一つの紅い勾玉を下げていた。


「...........」


 その彼は、白光が減衰して消えるまでの間も微動だにせずそちらを見続ける。

 それから、漸く辺りが夜の暗さを取り戻した時、何処からともなく彼へと話し掛ける声が一つ。


『おいリュウ、あの光ってる方へ行ってみようぜ?』


「行ってみようって……あそこまで一体どれ程の距離があると思っているのさ? 簡単に行けない場所にある事くらい、君にだって分かっているんじゃあないのか?」


『確かにそうだけどよぉ、そんなに言うなら行かないっての?』


 何処からともなく聞こえる声はそれに不満そうな色を濃く乗せ、リュウと呼ばれた人物へ問い掛ける。

 すると、そう言われた彼は空を見上げたと思えば先程光の上がった方向へと歩き出しながら言葉を返す。


「別に行かないとは言って無いさ。けれども、今はそう簡単には行けるものじゃあ無いって事だけは、知って欲しかっただけだから」


『ふーん、人間って不便だな。……いや、今のお前は人の形をしているだけじゃん』


「それは(コウ)も一緒じゃあないか? 寧ろ僕よりも人間ではないよね?」


 そう言ってリュウは笑う。


 実際には仮面のせいでどんな表情をしているかなど窺えないが、彼のその声音を聞くに察するは容易だった。


『まーな。お互いこうなるまで色々あったしねぇ。って言うか早く窮奇(キュウキ)のヤツを呼び戻せよ。移動に時間が掛かってしょうがねぇ』


「出来たらとっくにやっているさ。他の皆も別件で出払っちゃっているし……ここは多少時間掛かっても僕らだけで行くしかないね」


『はぁーあ、どんぐらい掛かるか知んねーけど、なるべく速く頼むぜ?』


 気怠そうに発せられた声に「善処するよ」と苦笑しながら返すリュウの姿は、気付けば夜の闇に消えていた。

 後には、月光の下でそよ風に靡く草原だけが、何処までも広がっていたのだった。





◆◇◆





「……」


 日は既に高く昇り、ほんの少し前まで薄暗かった森の中の鮮緑を、優しく照らしていく。

 明るくなった事で少し前に比べて格段に歩きやすくなった森の中を、俺は辺りを見回しながら川沿いに上流目指して歩いていた。

 時折死角である背後を確認するがそこには誰の姿も無く、どうやら妖魎(モンストラ)にぴったりと追跡されていると言う様な事は無いらしい。

 いつまでその状態が持つかは分からないが今のところ、平和だ。

 安全が確保されている事に安堵して足を止め、喉を潤す為に水を掬う。


「……」


 飲むこと二度、三度。

 村の横を流れる川よりも澄んだ水は、冷たくて渇いた俺の喉を潤すには十分過ぎるほど美味かった。

 やはり川に沿って歩くのは装備がない以上正解だったかと思いつつ、この逃避行をいつまで続けようかと悩む自分がいた。

 今自分の傍にある川は、巨大な山椒魚モドキが住んでいるのだ。

 川沿いでなくとも危険が多いというのに、何処も彼処も危険が一杯な生活をどうして続けたいと思うだろうか。いや、ない。

 冷たく澄んだ水を口の中で転がしながら、今日こそはもう少し安心できる寝床の確保か、もしくは最終的な目標を決めたいと考えていた。

 特に後者は重要だ。意味もなく森の中を彷徨うよりは自分の事を良く知らないところで平穏に暮らすか、危険の少ない場所で一人でも良いから暮らしたい。

 一人で暮らして、前世の世界に存在したものについて色々復元してみるのも良いかも知れない。知識は余り無いので試行錯誤の連続だろうが、それでも十分面白い筈だ。

 そんなことを考え、どんどんと膨らむ妄想。

 だが、そんなひと時は何かが枝を踏む音で瞬く間に消え去っていた。

 すぐさま音のした方へ身体ごと向かせ、構えると全神経を集中させる。

 するとそこから微かに聞こえて来る、何かの息遣い。

 それは確かに、着実に俺の居る方向へと近付いて来ていた。

 そして。


「――来た!」


 俺がそう叫ぶのが早いか、野太い咆哮を上げながら一頭の熊が木の影から飛び出してくる。

 それに対してあらかじめ構えていた俺は難なく躱すと、そのまま一気に逃げへ入っていた。

 一方で仕留め損ねた熊は不満気な呻き声を漏らし、それでもまだ諦めず追跡してくるのだった。


「っ!」


 人間に比して遥かに速い熊は、俺との距離を見る見るうちに縮め、そしてその鋭爪を振るう。

 それを間一髪で躱した俺は、すぐ横にある木の幹に手を掛け、ぐるりと方向転換をする。

 熊はそんなトリッキーな動きにすぐ対応できないのか、その勢いを殺す為に制動を掛けていたが、そんな隙を俺が逃す訳もなく。

 俺は右手を熊目掛けて突き出すと左手を添え、その掌に神経を集中させた。

 すると、次第にその掌には白い球体が浮かび始め、そしてそれは徐々に大きくなって行く。

 対する熊はそれが何なのか分からない、もしくは気にしていない様子で、短い咆哮を上げると突進を再開していた。


「……」


 しかし、それを前にしても今度は逃げる真似をせず。

 怖くないと言えば嘘になるし、今も微かに膝が笑っているものの、それでもここで逃げる訳には行かないのだ。

 体長三M(メトレ)はありそうな熊との間にある距離は、今やおおよそ十M(メトレ)程。


「――いっけぇっ!!」


 逃げ出したくなる衝動を堪えながら、ここまで引き付けた熊に、俺は微かに白く光る球体を射出する。

 その反動たるや凄まじく、大きく上体を仰け反らせると辛うじてその場に踏み止まるのが精一杯だった。

 その間に巻き起こる、轟音と砂煙。

 しかしそれで安心して居る暇など無く、すぐに己の紅い瞳を熊の方に向けた。

 するとそこに転がっていたのは、頭と背中の肉を吹き飛ばされた、大きな熊の死骸。

 その死骸の背後には、無残に薙ぎ倒された木々が広がっていた。

 その衝撃が余りにも大きかったのだろう、森のあちこちからは鳥が喧しいほど鳴き、慌ただしく空へと飛び出しているのが見えた。

 それらを見て、再び目の前の転がる熊の死骸に目を向けた俺は魔法の「失敗」を悟る。

 まず、魔法を撃つのに時間が掛かる上に反動がとんでもないので連射が利かない。

 そして、威力が高すぎる。実際、直撃した熊はいま目の前にある様に、頭が吹っ飛び背中の肉まで抉られているのだ。その上、更に木を派手に薙ぎ倒す始末である。


「これじゃ、自分すら巻き込みかねないな」


 流石に昨夜の様な、とんでもない威力を発揮するようなことは無くなったものの、今でもそれにしてはと言える過剰な威力を誇っているのだ。

 ただ、それにしても昨夜の事は俺としても未だに信じられない気持ちで一杯だ。

 あの光量は勿論、威力が途方も無かったのだ。実際、昨夜俺を襲撃して、それの直撃を受けたであろう大牙を持つ狼は消し炭……というか炭すら残らず消滅してしまい、その場には俺以外誰も居なくなっていた。

 まるで何かの冗談かのように跡形も無く消えて、後には仰向けのまま呆けた面を晒す自分だけが居たという訳である。

 俄かには信じられない事ではあったものの、そのまま緊張が切れたらしく気付けばそのまま気絶。

 朝、誰かに頬を突かれて起きてみれば、そこには例の蜘蛛が懲りずに俺の頬を突いている光景が広がっていたのだった。

 それにびっくりして手をつきだしたところ、その先から昨日よりは遥かに小振りな魔力を放出し、蜘蛛を追い払っていた。

 残念な事に直撃しなかったものの、それによって自分が魔法を使えるという事実は証明され、それ以降は居るかもしれない追手から逃げながらその練習を続けてきた。

 しかし、その練習が思ったよりも難しかった。

 特に威力調節は攻撃対象などによって変えていくのが当然だろうが、その丁度良い威力というのが分からない。


「威力が弱すぎると今度は俺は身が危ないしなあ」


 事実今目の前で倒れている熊は上半身の肉が結構吹き飛び、その上貫通した白い球は派手に木々を薙ぎ倒しているのだ。攻撃する度にこれでは、使うのに一々躊躇しなくてならない。

 まだまだ魔法には慣れないものだと苦笑しつつ、俺は石を削ったナイフをその手に熊の解体を始める。

 時刻は日が最も高く昇った頃、森の明るさも最高潮に達し、作業をする上でも最適な時間であると言えるだろう。

 しかし、石器のナイフでは鉄製でない為にその解体は中々進まず、まるで切れ味の悪い鋸のように何度も刃で切りつけていくのだ。

 こんな事なら、村からすぐ逃げないで家から刃物の一つでもくすねて来るべきだったかと、詮の無い事を思わずにはいられなかった。





◆◇◆





 グラヌム子爵(ウィケコメス・グラニ)ことアラヌス・カエキリウス・プブリコラは、その報告を受けて我が耳を疑った。

 しかしそれが聞き間違いで無いと分かると、今度はその報告を疑った。

 彼には到底信じられなかったのだ、その報告が。

 まさか自身の封土で、そんな事が起こるとは思わなかったのだ。

 故に彼は最初、その報告を真面に取り合おうとはしなかった。しなかったのだが、通報者の中に聖職者アッピウス・パピリウスの名を見つけた彼は激しく狼狽した。


 本当なのか、と。自分を馬鹿にしているのではないのか、と。


 領主である自分からすれば、一々世俗の(まつりごと)に口を挟んで来る教会という存在は非常に面倒なものだが、彼らはその役柄としてこのような嘘を吐きにくい。

 冗談ならまだしも、これほど大きな報告を上げるにあたってその聖職者が居ると、彼の疑いを大きく揺るがすほどの信頼性を持っていたのだ。

 それが故に、会って話がしたいとプブリコラはこの日の仕事を投げ出し、パピリウスを呼び出した。

 その結果、彼がその日の夕方になって“報告”に下した判断は「真」。

 すぐさま領内の軍へ指示を出し、森の中を捜索するように命じたのだ。

 準備にどれほど、などと家臣は泣き言を言っていたが、そんな物は些末な問題だ。

 そう思ってはいたものの、流石に日没が迫ってはどうする事も出来ず、軍の出発は明日へ持ち越してそれまでは準備を整える事となった。

 止むを得ないとは言え他の仕事も手に着かず、そのもどかしさを抱えたままベッドで就寝していた、その時。

 森の中から発生した白く眩い閃光が、村を、彼の館を、照らしていた。

 丁度、夕方に煙が上がっていた辺りから発生したそれは、夜空を穿つように天へと一直線に伸び、やがて消えた。

 使用人に起こされるでもなく、その眩さに目を覚ました彼は、閃光の消えた夜空を仰ぎ、大声で笑った。

 大丈夫だ、まだ領内に居る。




「――“白儿(エトルスキ)”は、まだ我々の領内に居るッ!!」




 朝日に照らされて、他の士卒よりも比較的煌びやかな軽鎧を身に纏い、アラヌス・カエキリウス・プブリコラは馬上でその拳を振り上げた。

 彼がそこから見渡せば、そこには村の空き地に集った約百名もの兵士達が武器を携え整然と整列をしている。

 彼らの装備はプブリコラのそれと比べると数段劣り、兜の他には鉄を鱗のように組み合わせた胴鎧を身に着けている。

 彼らはいずれも、プブリコラが領民に課して搾り取った重税によって雇われた傭兵である。

 中々辺境の農村に傭兵が集まらないからと、領主権限で一つの傭兵団と独占契約し、大枚叩いて維持している、いわば常備軍。

 通常の領地であれば軍は日常設の為、民の負担もそこまでではないのだが、プブリコラは時折圧政に対して叛乱を起こす領民を鎮圧する目的でも常設していた。


「……随分と気合入ってんな、あれは。確か五十くらいじゃなかったか? あの歳で領主自ら森へ入るってのは大丈夫なのかよ」


「さぁ? そんなのは案内役の俺ら気にする事では無いからな。それよりも村長の(せがれ)だろう」


 演説をボンヤリと聞きながら呟く狩猟者(ウェナトル)――ミヌキウスに、同じくアウレリウスがもう一人の注目人物の方を顎でしゃくる。


 そこに居たのは右手に槍を握り、その顔に怒りを浮かべた村長の息子――ルキウス・クラウディウスの姿があった。


 すると彼の方を見ながら、今度はユニウスが口を開く。


「あれ、大丈夫なのか? 明らかに戦い方なんて知らないヤツだけど……“白儿(エトルスキ)”捕まえる前に死にそうじゃね?」


「知るか。それよりもプブリウス、その口振りだと本気でラウレウスを捕まえに行こうって口振りだが……彼に料理を振る舞って貰った恩を忘れた訳じゃ無いよな?」


「……当たり前だぜ。なぁマルクス?」


「ああ」


 念を押すようなミヌキウスの言葉に、彼ら二人は瞑目しながら頷く。

 それを確認し、「なら良い」と呟くミヌキウスは、再び退屈そうに領主(プブリコラ)の演説に目を戻す。


「手柄のあった者には相応の恩賞も出す! では()くぞ者ども、出陣!!」


 彼の演説に触発された約百人の兵士達は、その号令と共に大きな声を上げ、その左手を振り上げていたのだった。





◆◇◆





 パチパチと、目の前で火が燃える。

 そこに千切られたような無残な形をした熊肉を枝に差して、それを炙る。

 そしてそろそろ良いかなーと思った所でそれを引き上げ、拳大ほどのそれに齧り付けば、獣臭くありつつも昨日食った木の実などよりは遥かに食べ応えが良く、腹にも溜まって行く。

 しっかり血抜きをしたかったし、ほんの少しでも塩が欲しくなるところだが、あれ程の貴重品がその辺に落ちている訳もなく、それでも今までの村生活に比べて豪華な食事が摂れていた。

 ただし、非常に獣臭いし味の癖が強いが。

 熊の死体の方はある程度まで解体すると、死臭につられて余計なものが来る可能性を考慮してそのまま遺棄。

 折角熊という大物を仕留めたのに勿体ないが、大量に肉を確保したとしても保存できないし、これからも移動をする上で非常に不便なのだ。

 それでも、残された死体の所には死肉を食いにそっちへ妖魎(モンストラ)が集まるだろうし、俺は焚火の周囲に肉を刺した枝を立て、それらが焼けるのを呑気に待つだけ、という訳だ。

 安全が確保できるのは良い事だと思いつつ、肉を口の中に入れると、途端に溢れて来る脂。

 日本での食事に比べれば遥かにお粗末だが、それでも何と言う美味さと充実感だろうか。

 多分、こうして村を出る事が無ければ一生味わえなかったかもしれないものであると言えよう。

 そうして感動の内に心行くまで肉を堪能した俺は、川に沿ってただ森の中を歩いて行く。

 出来る事なら事情を知らないどこぞの村へ行き、そこで暮らしていきたいものだが、中々そうはいくものでも無い。

 そもそも、自分は村の外から出た事の無い農民であり、旅とかもした事がないのだから。

 一応、村から遠ざかる為に目印にしている山脈はあるものの、あっちの方向を目指す以外には何も決まっていないという訳だ。

 こんな事なら街道を行くべきかとも思ったが、人が通る場所で白髪紅眼の子供が居ては目立つ事この上ないだろう。

 すぐに目撃証言が寄せられて、即捕縛されても不思議じゃない。

 というか、仮に森から出るにしても、最低限この白髪を隠せる何かが無くてはいけないといえる。

 もっとも、いずれもどうする事も出来ないのだが。

 そのどうしようもない壁に立ち塞がれ、打つ手なしと思考を打ち切った丁度その時。


 遠く、誰かの笑い声が聞こえた。


「……?」


 その野太い声は明らかに男性のそれであるが、はてさて声の主は一体何処に居るのか。

 人と遭遇しない為にも辺りを見回していた俺は、誰かの足音を聞きつける。

 咄嗟に木陰へ隠れて様子を窺ってみれば、姿が見えたのは五人ほど、そのいずれもが武器を携帯し、毛皮で出来た服や粗末な金属の防具を纏っていた。

 顔……というか全身そんなに手入れされている様子はなく、髭も髪も伸び放題の上に少し離れている俺でも分かるほど異臭を放っていた。

 それには堪らず鼻を押さえてしまうが、声を漏らす訳に行かず気合で声を押さえ込む。

 一方、そんな俺の事など知る由もない彼らは野太い声で話を続けていた。


「でよ、昨日のアレは何だと思う?」


「いやー、流石に分からんだろ。あの白い光は魔法の類だろうが、あんな事が出来る魔法なんて聞いた事無いぞ」


「いやいや、俺らの中に魔法使える奴が一人でもいたかよ?」


「居ねーな」


「居たら余程の訳アリだし、普通の魔導士はとっくに何処かで仕事持ってるだろ」


 違いない、と彼らはまた大声で笑う。

 どうやらその後も続いている会話を聞くに、昨日の夜に打ち上がった白い光の場所を見に行くようで、その張本人である俺としては何とも言えない複雑な気分である。

 それにしても、やはりあの光は非常に目立ったようで、この様子だと追手が出て居れば同様にそちらへ向かうのは間違いないだろう。

 そのまま彼らをやり過ごせれば良いと思うのだが、果たしてそう上手く行くか。


「............」


 もっと言えば彼らは一体何の集まりなのだろう。見たところ真面な集団に思えないし、あの身形からして盗賊かもしれない。

 もしそうなら身包み剥がされるかもしれないし、下手をすれば殺されるかもしれない。それらについては確証が無いけど、見つからない事が一番の安全策だ。

 息を殺して木陰に身を隠し続け、彼らが通り過ぎて安全を確認したところで、肩の力を抜いて伸びをした、直後。


「!?」


 横合いから飛んできた矢が俺の鼻先を掠め、すぐ横の木に刺さる。

 そのまさかの出来事にド肝を抜かれた俺は、そのまま無様に尻餅をつき、矢の飛んできた方向に目を向けた。

 見れば、そこには更に弓を番えている一人の男の姿があった。


「ガキが居る! 小遣い稼ぎに丁度良い、捕まえろ!」


「……!」


 油断した。まさか五人だけじゃなくて六人目が居たとは。

 幾ら森の中に慣れて来て、魔法が使えるようになったからとは言え、もう少し用心しておくべきだったと後悔しても後の祭りである。

 通り過ぎて行った筈の五人も射手の声に反応して駆け戻り、皆が俺目掛けて殺到してきていた。

 どうやら予想が的中したらしい。彼らは賊だ。

 逃げる為、元来た方角へと戻る羽目になってしまうが、これはもう仕方がない。

 ここまでくれば明らかに害意のある行動をしている彼らに捕まってやる義理は無いし、あの様子だと俺を捕まえて奴隷商にでも売り払うつもりだろうか。

 仮にそうなったとして、結局はどこかしらで“白儿(エトルスキ)”だと思われてしまう事は目に見えていた。


「逃がすな! 追え!」


「たかだかガキ一人だ! とっとと捕まえろ!」


 流石は賊。この辺りを根城にしているのか、大人の図体でありながら所狭しと生えている木々にぶつからず、川の流れに沿って逃げる俺を追い駆けて来る。

 こちらが小柄な体を活かしているというのに、それでもしっかりと喰らい付いてくるのだ。

 その気配をしっかりと感じ取りながら、自身の不利を悟っていた。それというのも、子供で相手は大人、それも数が六人も居るのだ。

 それはつまり体力でも、手数でも、自分は賊より不利に立ってしまっている事の証明に外ならない。


「おいおいボウズ! 俺達から逃げられると思ってんのか!?」


「大人しく従っとけば痛い目見ずに済むぜ!?」


「へへ、こんな森の中に一人で居たお前が悪いんだからな!?」


 時折、牽制で放たれる矢。

 それは木と木との間を巧く射抜き、進路を着実に縛って行く。

 どうやら、連中の射手は相当にその技量が高いらしい。


「この……好き放題しやがって!」


 チャージに三秒ほどかけ、俺は右掌上に集めた魔力の塊を、背後に投げ付ける。

 一拍置いて巻き上がる爆音と土煙に賊たちは驚きの声を上げるが、しかし止まらない。

 土煙と言う煙幕を突っ切り、尚も距離を詰めて来るのだ。


「……このガキ、魔法を使いやがるぜ!」


「狙いは甘い、当たったら余程のドジだな」


「こりゃ捕まえたらいい値段で売れそうじゃねえか」


 全く怯えた様子は見せず、寧ろ士気が上がったと言わんばかりに彼らは口々に言う。

 その間にも一定の間隔で白い魔力の塊を背後へ撃っていくのだが、狙いが荒い事もあって全く牽制足り得てないらしい。

 どちらかといえば、俺の方が魔法を撃つ度に体を捩ったり、反動を受けたりで姿勢を崩しがちで速力が落ちているくらいだ。

 全く以って、逃げ果せるビジョンが見えない。

 段々と距離が詰められていくのを感じながら、荒い呼吸の中で必死に考えを巡らす。 


「っ」


 どうする、どうする、どうする? コイツらを撒くには、どうしたらいい?

 目まぐるしく回転する脳味噌だったが、そんな時にその前方に一つの大きな影を確認する。

 イチかバチか、すぐに決断を下した俺はわざと大きな足音を立てると、手頃な石を拾い上げてソレ――熊を目掛けて石を投擲していた。

 そして、それの命中如何に関わらず木の幹を掴んで直角に曲がった俺は、その場に隠れて身を潜める。

 するとすぐに賊たちの足音が辺りに響き渡り、同時に怒声が辺りに木霊す。


「何処に消えた!?」


「遠くには行ってねぇ! 足音が消えたんだ、どっかに隠れてるぞ!」


「どっかとかいわれても一体何処に……って! 不味い、“剛爪熊(ワリドゥルスス)”だッ! テメェら、気を付けろ!」


「畜生、こんな時に!」


「六人で一気に片付けろ! 悠長にしてるとガキに逃げられちまう!」


「弓で足を止める、手足から無効化していけ!」


 一時的に狼狽える賊たちだが、嫌な事に緊急事態にも手慣れた様子で対応している。

 俺が投げた石が直撃したのだろう、森中に響き渡る妖魎(モンストラ)――“剛爪熊(ワリドゥス・ウルスス)”の怒りの咆哮も何のその、彼らは瞬く間に躍り掛かっていた。

 しかし、それでも隙と言うものは生じてしまう訳で、俺はそれに乗じて彼らから更に距離を取る。

 俺の背後では逃げるこちらの気配を察したのか、賊からの怒声が掛けられるが、それを待つ筈も無く俺は走り続ける。

 迷子になってしまわないようにと、元来た道を戻る――つまり川の流れに沿って走るのだ。

 そうして走り続けて、一体どれほどの時間が経っただろうか。


「はぁ……はぁ……」


 顎から滴る汗を腕で拭い、膝に手をついて俺はその呼吸を整えていた。

 走った距離がどれくらいかなど全く以って分からないが、恐らく相当な距離を逆戻りしてしまった筈である。

 そうなると今度は派遣されたかもしれない追手と鉢合わせる危険がある訳で、その懸念に己の目を細めて辺りを見渡す。

 これだけ広いのだ、早々見つかる事は無い筈だがそれでも警戒するに越したことはない。


「……っ」


 渇いた喉を潤す為に水を含むも、未だに呼吸は荒いし、心臓も激しく拍動している。

 川に沿って逃げた事は正解だったかと思いながら、更にもう一口、口に含もうと思った丁度その時。




「――いたぞォ! “悪魔”だ! 捕まえろォ!!」




 唐突に鼓膜へと飛び込んで来たその声に、俺は肩を跳ねさせると共に、弾かれた様にして声のした方へ顔を向ける。

 そして、直後に顔を顰めた。

 そこに居たのは右手に槍を持ち、見覚えのある質素な鎧を着た、つまり村の領主の軍の鎧を着た、無数の兵士――傭兵達であったのだから。


「……追手!? くそ、今ここでッ!?」


 逃亡から二日目、ここに至って捕捉される。

 まさか、まさかの、最悪のシナリオが、早くも現実となってしまっていたのだ。

 巣穴から一斉に湧き出す蟻のように、ここを目指してわっと駆けて来る兵士達。

 その目はもはや俺しか見ておらず、疑う部分もなく彼らは俺という存在を捕まえに取り掛かっている様だった。

 向こうも相当な強行軍をして来たのか、疲労の目も見えるのだが、それは賊に追われていたこちらも同じ。

 このまま、ただ追われて逃げるだけでは確実に捕まるであろう事は想像に難くなかったが、だからといって逃亡を諦める筈も無く。


「こんな所でっ、捕まってられねぇんだよっ!」


 心の底から、腹の底からそう叫ぶと、己の数M(メトレ)先の地面に向かって右手を突き出す。

 そして。

 そこへ向かって、魔力を撃ち放っていたのだった。




◆◇◆





「――いたぞォ! “悪魔”だ! 捕まえろォ!!」


 出し抜けに聞こえて来たその声に、ガイウス・ミヌキウスはその表情を引き締めていた。

 まだ生きていられたのかと、この危険な森の中での発見に驚きつつも安堵し、彼はその声がした方へ駆けていたのだ。

 実際のところ、道案内役として先行する斥候部隊と共に行動していた彼は、出来る事なら他の兵士達よりも先にラウレウスを見つけるつもりでいた。

 しかし、結果はこのザマ。

 先に斥候部隊員に発見され、彼は当初の予定を大幅に変更する事となったのだ。

 本隊への通報の為に駆け戻る兵士と擦れ違いつつ、彼は現場へと向かう、が。


『――ッ!?』


 突如として巻き起こった轟音と砂煙が、ミヌキウスから視覚と聴覚を一時的に奪っていた。


「クソ、何だよ急に……っ、この魔力は?」


 辺りからは咳き込む声がする中、ミヌキウスは自身の魔法――風造成魔法で砂煙を飛ばし、咳をする際に生じる隙を無くす。

 そんな中でこちらまで流れ込んで来た魔力の質に、彼は眉を顰めていた。

 つい少し前に通った、川の付近に残留して居た魔力と同質であったそれは、まず間違いなく“白魔法(アルバ・マギア)”の魔力なのだろう。

 本当にあの子(ラウレウス)が“白儿(エトルスキ)”であったのか、と今でも信じられない気持ちではあるが、ここまで来てしまえば信じる他は無いと言えよう。

 どちらにしろ、ミヌキウスのやるべきと思った事は変わらないのだから。


「状況は!?」


「視界が悪く、何も見えねえ! ただ、悪魔はこの機に乗じて逃げたらしい、二人ほどがそれを追って行ったぜ!」


「どっちに!?」


「分からんっ、混乱を避ける為にここは一先ず留まって後続を待つべきじゃねえか?」


 もっともな兵士の提案に、それを捻じ伏せる効果的なものが見つからず、ミヌキウスは内心で舌打ちしながらやむを得ずその提案に従う。

 意思を確認したその兵士は一度頷くと、戦場でもそうして来たようによく通る声で命令を下す。


「後退だ! 少し下がって後続を待つぞ!! ……ってミヌキウス、お前さんはどちらへ?」


「隊を離れて様子を見て来る。戻らなくても構わないでくれ」


 元より彼は狩猟者(ウェナトル)であり、傭兵ではない。

 細かい規律に従う必要は無いし、ある程度断りを入れておけばそれなりに自由に動けるのだ。


「気を付けてな。ああそれと、手柄の独り占めとかすんなよ?」


「ああ、そっちこそ。んじゃ、行ってくる」


 軽く牽制を入れて来る兵士に微笑み返しながら、ミヌキウスは足早にその場を立ち去るのだった。






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