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短編集 冬花火

髪の周り灯籠

作者: 春風 月葉

 もう、この世に生まれて七年ほどのねんげつが経った。

 伸ばしきったこの長い髪は生まれてから一度も切ったことがなかったため、踵のあたりにまで届いている。

 この髪は私の時間を記録している。

 今日、私は生まれて初めて髪を切る。

 生まれてから七年、伸ばし続けた髪を切るのだ。

 後ろの方で束ねられていた髪が、母の手で持ち上げられる。

 チャキ…鋏の小気味よい音と共に、私の意識は別の場所へと飛んだ。

 チャキ…あれは生まれたばかりの自分だろうか、母は自分と同じ黒い髪だと喜んでいるようだったが、私はこんなことを覚えていない。

 チャキ…あれは初めてあんよができるようになった時、チャキ…あれは初めて友達ができた時、チャキ…あれは小学校の入学式。

 チャキ、チャキ、チャキ…。

 トントンと優しく肩を叩かれ、いつの間にか閉じていた瞼をゆっくりと開く。

 母がすっと後ろへ消え、正面の鏡に私が写った。

 肩にも届かない程度に切り揃えられた黒い髪。

 私はその毛先をそっと撫でた。

 くるりと後ろを向くと、母は似合っているといった。

 束ねられたまま捨てられ、床に残っている私のものであった髪はつい先程まで生きていたかのようにみずみずしく黒かった。

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