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1.新しい季節2

会場は熱気に包まれている。

銀河戦と呼ばれる大会の、今日は準決勝なのだ。太陽帝国領内のすべての惑星から挑戦者が集い、結局、アド・エトロと、前王座のルッシーニ・エストーナを含む四人が、この会場で決勝戦への出場をかけて戦う。

コールを受け、こぶしを突き上げるアド。若干二十歳の彼は、張りのあるつややかな腕の筋肉、長い手足、身長は百九十八センチ。地球人でこの年齢でこの身長というのは、恵まれているとしか言いようがない。しかも、彼はまだ、成長の途中なのだ。茶色身のかった金髪を短くし、高い鼻を持つ彫りの深い容貌が女性のファンをひきつける。

わっと沸く歓声に、女性の声が混じる。

今日の相手は、前王者。ルッシーニ・エストーナは三十歳。油の乗ったベテランで、褐色のボリュームのある体格は、アドより二周りは確実に大きい。

「アドは不利だな。」

シンカがつぶやくと、隣のジンロが笑った。

「戦い方を知っていれば大丈夫っすよ。実践では相手を選べないっすから。」

「それは、ジンロ、お前ならな。でも、ルールのある競技だろ?相手の目をつぶすわけにもいかないし、肘打ちですら反則なんだろう?」

「もちろん、格闘技で体の大きさはそれだけで武器になるっす。けど、そんな技を使わなくても、多分アドは勝てますよ。しっかり、相手を研究してきているんすよ。奴は。陛下の勉強にもなると思うっす。」

「ルーって呼べよ。」

へへ、と笑う灰色の髪のジンロ。彼は、シンカの白兵戦の先生なのだ。とても、強い。

金髪の青年、シンカは、町に出ると、ファルム・シ・デアストルという偽名を使っている。通称「ルー」。カラーレンズで黒く変えた瞳は、青年のやさしげな大きな瞳を、さらに大きく見せる。笑うと大きい口は、なんともいえない愛嬌を感じさせる。蒼い瞳を黒くし、金色の髪を、少しくしゃくしゃっとみだれさせ、金色の眉を茶色に変える。それだけで、だれも彼を太陽帝国皇帝とは気付かない。

ゴングが鳴った。

ルッシーニは、強靭で大きな体を自由に使って、アドに詰め寄る。正確で鋭いジャブが、アドを下がらせる。ボクシング出身のルッシーニは、力のあるフックと、鋭い右ストレートを武器にしている。連打を浴びれば、アドはガードの上からでも重大なダメージを受けてしまいそうだ。

「アド、危ない!右、右によけろよ!」

次第に、試合に夢中になっていく青年を、ジンロは嬉しそうに見つめる。白兵戦の基本を彼に教え初めて、二年目。確実に、成長している。

「なあ、ジンロ!アドはなんで、右に回らないんだ?ルッシーニの得意の右ストレートをよける為には、常に左前の構えで、右回りでけん制しなくちゃ。」

「そうっすね。まっすぐ後ろに下がると危ない。そのうち捕まりますよ。」

一ラウンド目は十分。既に、五分を過ぎ、このままでは、撃たれつづけているアドが不利だ。ダウンをしなくても、判定で負けてしまう。

「アドは、空手出身なんで。そのうち、蹴りを出します。」

「なあ、この試合のルールって、投げとか締め技とかありだろ?なんで、そうしないんだ?アド、締めわざとか得意だよな?」

瞳は、リングを見つめたままの青年が、ジンロに問い掛ける。

「アドは、地味な技を嫌うんで。」

「地味?それはそれでかっこいいと思うけどな!」

その時、後ろに下がっていたアドが、不意に半身、右にすべるように動いた。

「あ!」

ルッシーニの左フックを身をかがめてよけると、そのまま後ろ回し蹴りで敵の左ひざ裏を捉えた。

膝を突いた元王者。観客のどよめき。

すかさず、背後から締め技を決める。

赤い顔の、ルッシーニが、アドのうでに、タップする。

歓声が、うねるように沸きあがる。

花火の音、打ち鳴らされるゴングの音。シンカの声すら、ジンロに届かない。

「最年少の王座に、また一歩近づきました!アド・エトロ!今だ成長しつづけるその体と強さは、どこまで行くのか!前王者を下しました!」

実況の興奮した声が、シンカの胸をさらに熱くさせた。

「ルー。そろそろ時間っすよ。」

ジンロに引っ張られながら、スタジアムを後にする。


「これから、仕事っすか?」

興奮して話しつづけるシンカに、つまらないことをジンロが聞く。

青年は、肩を落とした。

「いったんミンクに、今日の感想を聞いて、それから、明日からの視察の打ち合わせ。」

「・・大丈夫っすか?もう、二十二時を過ぎてるっすよ。」

「うん。でも、アシラが、この時間でないと空いていないって言うから。彼のほうがずっと忙しい。遅刻はできないな!走るぞ!ジンロ!」

「待ってくださいよ。」

政府ビルでは決して見せない、楽しげな笑顔を、自分だけが見ているという、不思議な満足感を感じながら、ジンロは青年の後に続いた。



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