第5話 サバイバルに必要なあれやこれ
「マヨネーズが手に入ったから、つい叫んでもうたな」
そうつぶやき反省する。その時背後の草むらが不自然に音を立てた。
音に気付き振り返るが、振り返った時には先ほどのより大きいオオカミが1mも無いぐらいまで迫っていた。
「ヤバい!」
間一髪、直撃は避けたが、腕に爪が擦ってしまった。
「デジャビュか? ははっ、俺って学習せんなー……はぁ」
さっきと同じ展開で大阪人として、それはないわー、と気落ちしていたが、そんな状態など関係なく、再び襲いかかってくるオオカミ。
「ちょっ! 鬱陶しいなぁー」
オオカミの突進を避け悪態をつく。
「えぇーと? たしか、影を刀の様にイメージしてー」
影が手から空中に伸び、刀の形になっていく。
だがオオカミはそれを悠々と待っているわけも無く、突進を仕掛けてくる。
「んで、刀の形になったらー……斬るっ!!」
オオカミの突進をすれ違う様によけ、影の刀をオオカミの通る場所に置く様に構えた。そしてオオカミを斬るイメージをして、オオカミの中心を通る様に、水平に刀を抜く。
オオカミの身体は後ろの方に抜けていき、ドサッという音が2つ聞こえた。そして振り返ると、オオカミが真っ二つになっていた。
「オオカミの2枚おろしってか? しっかしまぁ、この刀の切れ味ヤバいなぁ、斬った感触すらないからな」
影を元に戻し、オオカミに近づく。
「このオオカミどうすっかなー。そういえば吸収ってスキルあったな……試してみるか」
そう呟きおもむろにオオカミに手を当て吸収をつかう。
「おぉ! 使えたやん! 俺、天才か? しかも心做しか、腹が膨れた様な気がする。もしかしてこの吸収、かなり優秀? ってことは俺のスキル全部優秀? ゆえに俺、優秀?」
と異世界ハイで意味の分からない思考に陥ること数分……
「調子に乗りましたー! スイマセンしたー!」
オオカミ3匹に追いかけられているなぅ!
「よく考えろ。どっかに勝利への道があるはずだ。神様は乗り越えられる試練しか与えない! はず!」
そんなことを叫びつつ、追いかけられていると前に洞窟が見えた。
「あそこなら囲まれることはない! 1匹ずつならなんとかなる!」
洞窟の中に迷わず突っ込み、少し行ったところで反転し、オオカミ達を迎え撃つ。
「よし! ここならいける。影も……出せる! よしこい!」
気合いを入れたと同時に、襲いかかってくるオオカミ。洞窟が狭いため、1匹ずつ連なって襲いかかってくる。
「行くぞ! 如意棒もどきー」
徹は影をオオカミ達の頭の位置からまっすぐのばし、串刺しにした。
「オオカミ串、一丁上がり! んじゃまぁいただきまーす」
オオカミを1体ずつ吸収していると、後ろに気配を感じ、慌てて振り返る。
「誰や!」
そこにはヒグマの様な獣がこちらに牙を剥き、低いうなり声をあげて威嚇していた。
「どうどうどう、これは……予想外やな。オオカミ1匹やるから見逃せへん?」
徹はそう言いつつ、オオカミを1匹投げる。するとクマは瞬時にオオカミを丸呑みにして、さらに目をぎらつかせながらこちらをみる。
「足れへんか? 俺はおいしないで? やめとき。・・・って言ってもやめんよな」
なかばあきらめながら、クマに対峙する。
体格差はおよそ3倍。
洞窟はそこまで広くはないので、相手が回り込む等はできない。
なら、真正面からの突進のみやな。そこを迎え撃つ!
「さぁ、こいやー!!」
かけ声と同時に両者ともが駆け出す。
そして両者がぶつかる寸前、徹の姿が消える。
虚空を切り裂く熊の爪。手応えが無かったことに疑問を感じているのか、熊はその場を何度も見渡していたが、突如視界の右と左の映像がずれ、意識が途絶えた。
「ふぅ〜。やってみると案外できるもんやな。ようはイメージちゅーことやな」
熊が縦に真っ二つになった背後には、徹が影の刀を構えた状態で立っていた。
「まさか影に潜れるとは思わんかったけど。やってみるもんやな」
徹はあの瞬間、影と同化して熊の突進をさけ、後ろから一刀両断していた。
「さてと、ほな吸収、吸収っと。でもやっぱり膨れた気がするだけで、腹は膨れんみたいやな。腹へってきた。ちょっとだけ肉も残しとこ」
影で10kgほど肉をカットし、その肉をアイテムボックスに放り込む。そして残りを吸収する。
「なんだかんだで、家と食料は手に入ったな。次は、水か? てか喉乾いたな。よし、水探しにいこ。この洞窟まだ奥に続いてるし、地底湖とかあったりして」
しかし、洞窟の奥にいくにつれ、いっそう暗くなり、ほとんど何もみえなくなったため引き返す。
「あかん。全く見えへん。こうなったら外で探すかー」
外は少し薄暗くなっていたが、水確保のため探索にでる。
っとその前にカロリー補給しとかな。
マヨチュッチュっと。この1本しかないから大事に使わなな。
周囲を警戒しつつ、帰り道を確保する為にまっすぐに、かつ踏み荒らして進む。
約30分後
「あれへんなぁ、逆方向いった方がよかったかなぁ」
と、独りゴチながら歩く。
それから約1時間後
「なんか聞こえるな? この音は……なんや? ん〜まぁ行ってみたらわかるやろ」
音の聞こえる方向に進んで行くにつれ、次第に大きくなる音と緊張感。
「まてよ……どっかで聞いたことあるで……っ! そうか!」
そう叫ぶと、一直線に音の方向へ走り出した。
徹が聞いたその音は、ゲリラ豪雨の雨が叩き付けられる様に振っているときの、ザーっという音に似ていた。
音の発生現にたどり着いた徹は息を呑んだ。
目の前に広がるのは大きな湖と、壁の様な断崖絶壁から、毎秒十数万トンは水が落ちていそうなほどの滝であった。
その滝は湖を半分囲う様に広がっており、湖のそばでは雨が振っているのではないかと思うほどの、滝による水しぶきが舞っていた。
その自然の雄大さと、力強さに圧倒され呆然と立ち尽くす徹。
数分立ち尽くしたのち呟く。
「こんな景色地球じゃ見れんかったやろうなぁ。良い経験できたわ。クソな神様の世界やけどやるやんけ」
と、異世界の評価を上方修正し、目的だった水を取るため湖に近寄る。
湖の水を掬う為に手を湖にのばす。
しかし、寸前のところで何かを感じ手を戻す。
「まて、ここは異世界や。慎重に行動した方が良いと、今までの事で学んだ。それを今生かす時!」
近くにあった拳だいの石を手に取り、おもむろに……
「チェストー!!」
湖に投げ込む。いや叩き込んだ。
石は水しぶきを立てて湖に飲み込まれていった。
石が飲み込まれた場所から波紋が生まれ、その波紋が消える頃、変化は起った。
「シャーララァラァ!!」
湖から5mほど飛び出した水柱から現れたのは、赤い目に白い鱗、人の胴体はありそうな太さの牙を持った大蛇だった。
「あー、そのー、なんや、おはよう?」
そんな徹の反応に周囲一帯が凍り付きそうな殺気を放ちながら叫ぶ。蛇が。
「おはよう? だと……貴様、なめておるのかー! 我に石をぶつけた罪、その身で償ってもらうぞ!」
そういうと、徹を丸呑みできそうなほど大きく口をあけ、一直線に突進してくる大蛇。
大蛇に狙われた獲物は、大蛇の姿と殺気で、それこそ皆等しく、蛇に睨まれた蛙の状態になるだろう。
そう普通ならば。
大蛇が徹の立っていた所を過ぎ、呑み込んだ感触が無い事に疑問を抱き、振り返る。
そこには黒い剣で斬りつけ、鱗に弾かれている徹がいた。
「なんで弾かれんねんなぁ〜。堪忍してぇや。これしか攻撃方法ないんやで」
大蛇はなぜ通り過ぎたであろう場所に、徹がいたのか理解出来なかったが、なんにしても何らかの方法で避けたのだろうと納得した。そして、徹の評価を1段階上げた。
「おい貴様、何者か知らんがそんな陳腐な魔法なんぞ効かん。あきらめて食われろ」
「そやな〜あきらめるわ」
予想外の返答に動揺する大蛇。
「そっそうであろう。我に挑むのがいかに愚かな事か分かったであろう。では食われ「ほな。さいならー」ろ?」
いきなり目の前から徹が消えたことで唖然となる大蛇。
大蛇が正気をとりもどしたのは十数分後だった。