はっぴーえんど
「ぶっきー、瞬のこと大好きなんだよ。もう、告っちゃいなよ!」
吹雪だから、ぶっきーって…。
「澪さん…!俺は、瞬さんにアイドルとして憧れているだけで…そんな…!」
吹雪君の白い顔が真っ赤になる…。
「あはは、冗談だよー。ぶっきー、何でも本気にしちゃうから可愛くて!」
「もう!澪さん…!」
吹雪君の綺麗な白い顔を見ていると…。
雪のように白い髪と肌の…。
寒太郎は、どうしてるだろう…?
あいつ、結局、俺をひとりにして帰っちゃったし…!
ただの食い逃げじゃねえかよ…!!
今頃、怖い冬将軍のお父さんに怒られてるのかな…?
「おい、澪。お前、いつまで俺に抱き着いてるんだよ…。」
「ええー。もう少しいいじゃん!」
澪は昔っから、スキンシップが多いんだよ…。
「あと、頭撫でるのもやめろ…!」
「だって、瞬の髪の毛ふわふわで気持ちいんだよー。」
天パだからな…。
「澪さん、瞬さん嫌がってるじゃないですか!」
「ぶっきーも触りたいの?」
「えええー!?…瞬さん、触ってもいいですか?」
吹雪君がキラキラの瞳で俺を見つめる…。
「…別にいいよ。」
「ありがとうございます…!じゃあ、失礼します。…わあ!本当にふわふわですね!」
「ああ、ふわふわだな。」
なんで、まっちゃんまで便乗して触ってんの!?
「真琴のやつ、遅いな…。もう、撮影の仕事終わってる頃だけどな…。」
「まっちゃん、あいつは俺になんか会いに来ないよ…。それと、いい加減タバコ吸うのやめろよ。ここ、病院だからね!」
堂々と吸ってるから、誰もツッコめなかった…。
作者、童話で喫煙シーン書くなよ…!
「そんなことないよ!真琴、瞬のこと大好きなんだよ!」
「澪、それはないだろ…!俺、絶対真琴に嫌われてるよ…。現に今だって、来てないし…。」
「真琴は、瞬がiceを抜けた後、ずっと落ち込んでたんだよ…!」
「そうなのか?」
「そうですよ!真琴さん、俺がiceに入ったばかりの頃、俺のこと何度も『瞬』って間違って呼んだんですよ…。…でも俺、瞬さんと間違えられるなんて嬉しいです…!」
吹雪君、そんなに俺のこと好きなの…?
「ほら、瞬。真琴、瞬のこと大好きなんだよ!瞬が病院に運ばれたって聞いたら真琴、その時、大事な番組の収録中だったのにスタジオから飛び出して行っちゃったんだよ!」
えええ!?あの、仕事に絶対妥協しない真琴が…?
「瞬、お前が病院に運ばれた時には、もう…出血がすごくて、手遅れだってここの院長に宣告されたんだ…。」
「まっちゃん!じゃあ、俺どうして…今、生きてるの?」
「真琴が知り合いの…顔に傷がある無免許の天才外科医にお前の手術を頼んだんだよ…。」
ブ●ック・ジャック先生か…!?
「真琴が…?」
「ああ。手術は無事成功したが…そいつ闇医者で法外な手術代を要求してきたんだぞ。」
「全額、真琴さんが支払ったんですよ…。」
「嘘だろ…?」
あの真琴が…。
俺なんかのために…。
「澪、吹雪、そろそろリハーサルの時間だぞ。」
「ええー!もうそんな時間なの?もっと、瞬と話したいよー!」
「澪、早く行けよ。真琴のやつ、時間にうるさいから遅れていくと散々、嫌味言われるだろ?」
「じゃあな、瞬。お大事にな…。また、アイドルやりたくなったらいつでも俺のところに来いよ。」
「まっちゃん…。俺、もうアイドルに戻る気ないよ…。」
「瞬、ライブが終わったらまた来るからね!今度は真琴も連れてくるから!」
「澪さん、俺たち、ライブの後ラジオ番組の収録があるんじゃないですか?」
「あああー!!そうだった…。じゃあ、明日また来るね!」
「瞬さん、今日はあなたに会えて良かったです…!」
「3人とも来てくれてありがとう…。真琴にも…その…お礼言っといてくれ…。」
3人が病室から出て行き…。
病室に俺ひとり…。
でも、ひとりだけど…さみしくないや…。
俺のことを思ってくれる人が…。
ただの深雪瞬のことを思ってくれる人たちがいるから…。
その時…。
病室のドアが開く…。
病室に入って来たのは…。
雪みたいに真っ白で柔らかそうな髪に、冬の海みたいに冷たそうな深い青色の瞳をした可愛い顔の男の子…!
「寒太郎…!?」
「瞬…。」
寒太郎は、申し訳なさそうな顔で俺を見つめる…。
あれ?
なんだか、昨日よりも頬に赤みがさしていて…顔色も血が通っていて…生き生きとしていて…。
「瞬、昨日はごめんなさい…!瞬が死ぬまで一緒にいてあげられなくて…。」
「ああ…別にもういいんだよ!俺、死ななかったし!それより、寒太郎は…お父さんに怒られなかったか?」
「それが…。瞬、僕ね…北風の精霊じゃなくなっちゃったんだ…。」
「ええええー!?」
「瞬と別れた後、お空の上に戻ろうとしたら戻れなくて…。僕、普通の人間の男の子になっちゃったんだ…。」
「どうして?」
「お父さんに聞いたら精霊は、人間の触れた物を食べると精霊の力を失ってしまうんだって…。」
「昨日、俺があげた雪●だいふくのせいか!」
二つ目は、俺の唇が触れちゃったから…。
「そうみたい…。でね、お空の上に帰れなくて途方に暮れていたら…パトロール中のお巡りさんに見つかっちゃって…。僕、瞬の血にまみれてたでしょう。それで、何があったのか聞かれて…瞬のことを教えたんだ。」
「じゃあ、俺の命が助かったの寒太郎のおかげじゃん…!ありがとう、寒太郎!」
あと、真琴の…。
「どういたしまして。それでね、僕のお父さんとお母さんが今、僕が元の精霊に戻る方法を探してくれているんだ…。瞬、お願いがあるんだけど…いいかな?」
「ああ、なんでも聞いてやるよ!寒太郎は俺の命の恩人だろ。」
「瞬、僕が精霊に戻る方法が見つかるまで…瞬と一緒に住んでもいい?」
寒太郎が…俺と一緒に…住む…。
「いいよ。俺なんかで良ければ…。」
「本当に!?」
「うん。」
「ありがとう!瞬、ふつつかものですが、よろしくお願いします。」
結婚のあいさつじゃないんだから…。
「あ、そうだ!瞬、これ真琴から!」
寒太郎が何かが入ったコンビニの袋を俺に手渡す…!
「真琴から…!?」
「うん。瞬の病室の前でうろうろしてたんだ。名前は言わなかったし、変装もしてたけど…背が高くて、帽子からはみ出たあの艶やかな黒髪と低音の綺麗な声はiceの真琴以外ありえないよ!」
コンビ二の袋の中身は、雪●だいふく、ピ●、パ●コ、し●くま…etc、全部、俺の好きなアイスだ!
「真琴のやつ…!」
俺にために…!
大事な仕事を抜けて…駆けつけてくれて…!
法外な手術代を出してくれて…!
「良かったね、瞬!…瞬、なんで泣いてるの?」
「泣いてねえよ…!」
だって…。
だって…。
嬉しくって…!
俺、ひとりぼっちじゃなかったんだ…。
それに…。
今、俺のそばには…寒太郎がいてくれる…!
「瞬、これ食べてもいい?」
「ああ、どれでも好きなの食べて!」
「やったあ!…あれ?瞬、これなんだろう?」
寒太郎が、袋の中から一枚の紙きれを取り出した…。
「何々?これ俺宛の請求書じゃん!…手術代の立て替え、仕事のキャンセル料、アイス代…三千万円!?」
真琴の野郎…!!
「瞬、どうしたの?」
「やっぱり、あいつ俺のこと嫌いなんだ…!」
三千万円って…。
はあ…。
これから、寒太郎も養わなきゃなのに…。
バイト増やすか…。
「…瞬、これ食べて元気だして。はい、あーん。」
寒太郎が雪●だいふくを俺に口元に差し出す。
念願の雪●だいふくを一口かじる…!
「美味い…!」
「良かった。」
「ああ…。アイスって…こんなあったかい味だっけ…。」
「瞬、何言ってんの?アイスは冷たい食べ物だよー。」
「だって…なんだか…すごくあったかくて…。」
俺は、ひとりぼっちじゃないんだ…。
苺鈴です。
最後まで読んでいただきありがとうございます!