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瞬と寒太郎  作者: 苺鈴
7/8

なな

 

 目の前は真っ暗で…。


 ここは、どこだろう…?


 天国かな…?

 

 俺、死んだんだな…。


 天国って…なんか、ふかふかで…あったかくて…。

 布団の中みたいだな…。


 なんだか、学校の授業サボって保健室のベットで寝てた時を思い出すな…。

 何でだろう…?

 

 消毒液のにおいがするからか…。


 天国って…消毒液のにおいがするのか…?

 

 それに、タバコのにおいもする…。

 このタバコのにおい…どこかで嗅いだことがあるような…。


 俺は、恐る恐る目を開けた…。

 あれ、俺死んでるのに目を開けられるのか?


 目を開けると…真っ白な天井が見える…。

 俺はベットの上で寝ていて…。

 ここは…どこだろう? 

 

 天国じゃないみたいだ…。

 俺、生きてるのか…?


「ようやくお目覚めか、お姫様。」

 この声は…!

 俺のベットの横でタバコを吸いながら椅子に座っているのは、黒のスーツ姿で、7・3分けのツーブロックの大人っぽい髪型に、なかなか男前の見覚えのある顔立ちで…。

「…まっちゃん!?」

「瞬、久しぶりだな…。」

「まっちゃん…どうしてここに!?…てか、ここどこ?」

 俺は、ゆっくりと上半身を起こす。

「病院だよ。お前、路上でわき腹刺されて、血を流して倒れてたんだよ。危うく出血多量死するとこだったんだぞ。」

「俺…刺されて…。それで…。」

「安心しろ。犯人は、もう捕まった。」

「そうなんだ…。でも、まっちゃんがどうしてここに?」

「お前、身寄りがないから…警察から俺に連絡がきたんだよ。」

「ごめん…。俺たちもう関係ないのに…迷惑かけて…。」

「気にするなよ。瞬、無事で良かった…。」

「まっちゃん…。」

「瞬、謝るのは俺のほうだ…。瞬、本当にすまない…!全部、俺のせいだ…。お前を無理やりアイドルにして…お前を苦しめて…。危うく、命まで脅かしちまったのも…!」

 まっちゃんが椅子から降りると、土下座しようとしている…。

「やめろよ、まっちゃん!まっちゃんは、何も悪くないよ。俺、アイドルになって、たしかに辛いこともあったし…本当の俺じゃなくてアイドルの俺を、幻想の俺を狂ったように崇拝するファンが怖くて…逃げちまったけど…。でも、俺、アイドルになったこと後悔してないよ…!まっちゃんが俺をアイドルにしてくれたことで、いろんな経験ができたし、たくさんの人に出会えて…真琴と澪と友達になれて…。」 

 でも、iceを辞めてからは絶縁状態なんだけどな…。

「瞬…。」

「そういえば、二人は最近どう?まあ、毎日テレビで何かしらの番組やらドラマやらCMで観るけど…。」

 iceは今じゃ国民的アイドルだからな…。


 

 その時、病室のドアが開いた…!

 病室に入って来たのは、黒のロングコートに帽子とグラサンとマスクで完全変装した謎の2人組…!?

「瞬―!!無事だったんだねー!!」

 1人がコートを脱ぎ捨て、帽子とグラサンとマスクを取り、俺に抱き着いてきた…!

 コートの下は、iceのアイドル衣装に身を包んでいて…赤っぽい茶髪の巻き髪に、健康的に焼けた肌の…。

「澪…!」

「そうだよ、澪だよ!瞬、刺されたって聞いてびっくりしたよー!」

 澪は、あの頃と変わらない無邪気な瞳で俺を見つめる。

「澪、なんでアイドル衣装なんだ?」

「ライブの前に瞬のお見舞いに来たんだよ!!」

「じゃあ、もう一人は真琴か…?」

 いや、違うな…。

 だって、背が俺より小さい…。

 真琴は、来るわけないよな…。

 俺の面なんて二度と見たくないだろうし…。

「ううん、違うよ。真琴は、雑誌の撮影に行ってるんだ。」

 もう1人が、俺の前に来ると、帽子とマスクとサングラスを取る…。

 キラッキラッの銀色のミディアムショートヘアーに、灰色の瞳をしたこの超絶イケメンは…!

「はじめまして、瞬さん。佐倉(さくら)吹雪(ふぶき)です。」

 俺がiceを抜けた後に入った新メンバーの佐倉吹雪君(20歳)!

「どうも…深雪瞬です。」

 吹雪君の灰色の瞳が、俺を見つめる…。

 うわあ…テレビや雑誌で何回も観てるけど、実際会ってみると…すごいな…。

 イケメンオーラがハンパない…!

 吹雪君て、たしかハーフなんだよな…。

 だから、髪も目も本物なんだよな…。

「瞬さん…。俺…瞬さんに憧れて、アイドルになったんです!」

 吹雪君がキラキラした瞳で俺を見つめる…!

「そうなの?…なんで俺?」

「ステージの上の瞬さんはキラキラ輝いていて…。すごくかっこよくて…。俺…昔、すごく辛いことがあった時に、瞬さんの歌にすごく勇気づけられたんです…。特に、3rdシングルの『僕の愛す君へ』は歌詞がまるで俺に語り掛けてくれてるみたいで…!」

 iceの歌の歌詞は、俺じゃなくてプロの作詞家さんが作ったんだけど…。

「だから、俺も誰かを勇気づけられる存在に…瞬さんみたいなアイドルになりたいって思ったんです!」


 



 

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