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瞬と寒太郎  作者: 苺鈴
2/8

 俺の目の前に現れた男の子、寒太郎は雪みたいに真っ白で柔らかそうな髪に、冬の海みたいに冷たそうな深い青色の瞳をしていて…。肌には血の気が通っていなくて、お人形みたいに白くて…可愛い顔をしている。服装は、白のセーターに白の半ズボン、首に白いマフラーを巻いていて…足は裸足。

 

 全身、真っ白だな…。


 寒太郎って、北風小僧の?

「うん。僕は北風の精霊だよ。」

 精霊って…。

 まあ、こんな夜中に子どもが出歩いてるはずないし…。

 寒太郎、精霊でも何でもいいから、俺を助けてくれないか!?

「ごめん。僕、人間の手助けをしちゃだめなんだ…。」

 えええー!?

 どうしてだよ!?

「人間と話すのも本当はいけないんだよ…。今だって、お父さんに内緒で下界に降りて来たんだよ!」

 寒太郎のお父さんって?

「冬将軍だよ。僕のお父さん、怒るとすごく怖いんだよ!…でも、僕、どうしても下界に降りてみたかったんだ。だから、お父さんが眠っている間に家からこっそり抜け出してきたんだ!」 

 へえ…。


「ねえ、お兄さん。雪●だいふくをくれたら、お兄さんのお願いを一つだけ叶えてあげるよ。」

 本当に!?

「うん。」

 じゃあ…。俺が死ぬまでそばにいてくれ…!

「うん。わかった。お兄さんが死ぬまでそばにいてあげる!」


 おいおい!…俺、何を願ってんだよ!?

 違うだろ!

 救急車を呼んでくれとか、せめて誰かを呼んできてくれとか…お願いすれば良かったじゃん!

 

 たしかに、ひとりで死にたくなかったけど…!

 俺のバカ―!!


「いただきます。」

 寒太郎が雪●だいふくの蓋をはがして、緑色の楊枝で白くて丸いだいふくを突き刺す。

 あああ…。

 俺の雪●だいふく…!!


「おいしい…!!」

 雪●だいふくを一口食べた寒太郎。

 血の気のなかった白い顔の頬が赤く染まる…!

 冷たそうな青い瞳が輝き、小さな唇が緩み、可愛い顔が笑顔になる…。

 良かったね…。

「お兄さん。これ、すごくおいしいね!」

 雪●だいふく食べたことないの?

「うん。今日初めて食べた!」

 そうなんだ…。

 ああ、下界に降りて来たの今日が初めてなんだから当たり前か…。

 じゃあ、もう一つ食べていいよ。

「いいの?」

 ああ。

「ありがとう、お兄さん!」

 寒太郎の嬉しそうな笑顔を見ていたら、俺まで嬉しくなってきた…。

「お礼に、もう一つだけ願い事を叶えてあげるよ!」

 本当に!?

「うん!」

 じゃあ…。その雪●だいふくを一口だけ食べさせてくれ…!

「うん!はい、あーんして。」


 俺のバカ―!!

 なんで、またどうでもいいお願いをしちまったんだー!!

 いや、どうでもよくないな…!

 だって寒太郎が、あんなにおいしそうに食べるから…!

 俺も食べたくなっちゃったんだよー!!


「ほら、あーんして?」

 寒太郎が、俺の口元に雪●だいふくを差し出す。

 

 ダメだ…。

 身体が麻痺して、口を動かせない…。

 俺は、差し出された雪●だいふくに唇を触れるしかできなかった…。

「お兄さん。食べないの?」

 ああ。

 やっぱり、いいよ…。

 

 ああ…ピ●にしとけば良かったかな?

 ピ●なら、口の中に入れられれば食べられたかもしれないし…。

 てか、ピ●なら6回は寒太郎にお願いできたよな…!!


 でも…。

 

 俺、もう助からないよな…。

 血は、止まらないし…。

 もう、痛みも何も感じなくなっちまったし…。


 それに、俺はひとりぼっちで死ぬんじゃないから…。

 俺のそばには、寒太郎がいてくれるから…。




 俺は、ずっとひとりぼっちだったから…。

 

 誰かに愛されたくて…。

 誰かに必要とされたくて…。

 

 アイドルになったんだっけ…。

 


 


 

 

 

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