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スターリングラード前線  作者: Фландол
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ソヴィエト編 Part1

За Сталина!(スターリンのために!)


M1891モシン・ナガンライフルを持ち私は走っていた。


男達は勇敢な声を上げ敵へと突撃する、銃を持つ者は少なく、2人に1丁、銃が渡された、この辛い戦場で私は銃を渡されただけ幸運なのだ、機銃は自軍の塹壕や後方に設置された、悲鳴を上げ逃げ出す者は射殺されていった、国に殺されるのだ。


私は臆病だった、祖国の為に誓いを立て、突撃した、だが途中で止まってしまった、近くに銃弾が飛んできた、一瞬思考が停止し、気がついたときにはモシンナガンに銃弾の痕があった、一歩間違えれば自分の体に当たっていたかも知れない、止まれば敵、そして国に殺される、私は急いで近くにあった塹壕へ隠れた、ドイツ兵の死体が横たわっていた、ドイツ兵は銃をもっていた、黒く細いデザインで、細長いマガジンをつけている、その銃はグローブをはめていてもとても扱いやすかった、持っていたモシンナガンを捨てその銃に持ち替えた。


「ベーア!」

後ろから男の声が聞こえた、ドイツ語らしい硬い発音だった、近くにドイツ兵がいる、ベーアというのは人名だろうか、急いで身を隠す、早い足音が近づいて来た。

「ベーア!ベーア!」

何度も呼びかけるように叫んでいた、ドイツ語であろう言語で必死に呼びかけていた、この激しい銃声や轟音、叫び声の中でも聞こえるほど大きな声で、少しだけ顔を出して男を覗いて見る、そのドイツ兵は怒りや悲しみだけでは言い表せない表情をしていた、その男は少しだけ涙を流していた、銃を持ち突撃していった、それに続くかのように塹壕の奥からもう一人の男が走り出てきた、その男を呼び止めるかのように叫びながら、彼を追いかけていった、すでにソ連軍は危険だった、兵士が少し後退すれば後方から機銃の弾丸が嵐のように飛んでくる、しかし恐怖に負け逃げ出す兵士もいた、すでに混乱状態に陥っていた、逃げ出すソ連兵をドイツ兵の男は追いかけ射殺していった。

男は、国の勝利を思い戦っているようには見えなかった、ただ、ひたすら敵兵を、ベーアを殺した敵を射殺していた。


先ほど飛び出してきた男が、もう一人の男を止める、うまく聞き取れなかったが、ソ連兵を殺しにいった男は「クリストフ」というらしい、もう一人の男は「カール」だろうか、2人は何かを話している、2人の会話の内容は分からなかった、ただ、激しい、怒りのような声でクリストフは話している、戦場の真ん中で、銃弾の嵐の中で、国家と国家のぶつかり合いの中で、感情がそうさせたのだ。


ふと、自分がソヴィエト兵士だということを思い出した、本来ならば、国のために、目の前の2人を殺さなければならなかった、しかし遅かった、あの男達の会話に聞き入っている最中に、もうソヴィエト軍はほぼ壊滅していた、さらに追い討ちをかけるようにドイツ軍の陣地から戦車が走り出してきた、戦車は、歩兵にはとても辛い相手だ、対戦車兵器を装備していない歩兵にとってはなおさらだ、私は、塹壕の中に隠れるしかなかった、戦車が無残にも、人間や、死体を轢いていくその死体にはドイツ兵、ソ連兵の区別などなかった、絶望を覚えた、敵の強大な戦車、多数の兵、死への恐怖、そして退却できない恐怖、これまでにない絶望だ。


しかし、そこへ光が、希望の光が見えた、後方のソヴィエト側陣地から戦車隊のT-34が5台ほど走り出してきた、ドイツ戦車も全力でそれを押さえ込むかのようさらに増える、T-34はドイツにとって、すべての戦車にとっても恐ろしい存在だった、すさまじい機動力、厚い装甲、そして高い火力を誇る戦車だった。


さらにT-34にデサント兵が乗っていた、戦車の上に直接歩兵を乗せて、すばやく展開する兵だ、当然死亡率も高い、とても心強い援軍が来たことで私の士気は上がった、迷いが断ち切れた、即座に鹵獲した銃を構え前にいる2人のドイツ兵を撃つ、クリストフとカールは倒れた、そしてデサント兵が散開し、ドイツ兵を一瞬にして包囲する、ドイツの強大な戦車でもまったく歯が立たなかった、一瞬にしてドイツ軍は壊滅寸前になった、ドイツ軍は撤退した。


ドイツ戦車もゆっくり後退しながらT-34に砲撃する、だがT-34の76,2mm砲は強力でドイツ戦車を貫いた、さらに85mm砲を搭載したT-34-85も1台いた、5台のT-34がドイツ陣地に一気に突撃する、ドイツ軍の戦車は残り十数台ほどになっていた、それらが撤退を始める、だが、彼らは遅かった、撤退を許さないかのように、敵を逃がす気がないように、KV-1重戦車が到着した、圧倒的な重装甲を持ち85mm砲など比較にならないほどの火力の砲を持っていた、ドイツ軍の戦車はいっせいにKV-1を砲撃した、しかし意味などなかった、一発も貫通しない、KV-1の鈍い砲撃音が聞こえる、それと同時にドイツ戦車は吹き飛んだ、残りのドイツ戦車もT-34が襲い掛かる、すっかりその戦車戦に集中していたドイツ兵はデサント兵に回りこまれていた。


デサント兵のPPsh-41サブマシンガンの銃声が響く、無線を担当していた兵、戦車を護衛していた歩兵、指揮をしていた将校、すべてを射殺した、死体には、階級も、人種も、何も関係なかった。


私が送られた場所の戦闘は終了した、ドイツに勝利したのだ。

一瞬だけ、一瞬だけ迷いを断ち切ったがやはりあのドイツ兵が気になる、最後にあのドイツ兵を見ておこうとした。


なかった、そこにあるはずの死体が、いや、正確には減っていた、カールの死体はあった、クリストフの死体が見えない、私は彼を探すため走った、しかし拡声器で指示が入る、戻れ、と、こうして戦いは終わった。


戦いは数時間ほどで終わった、ドイツ、ソ連共に小規模の隊だったため、短時間で終わったのだ、私のいる軍、ソ連軍の被害はさほど多くなかった、いや、正確には多いと認識されないのだ、私のいる軍では人名軽視などは当たり前のことだった、多くの兵士が国のために突撃して行った。


おそらく最初からこの戦いが終わるまで生き残ったのは私を含め数名ほどだろう、だが私は生き残ったというよりは、見つからなかった、のほうが正しかったのだ、ほかの兵士は勇敢に戦った、しかし、それでも私は、安心感に包まれていた、ただ、それだけだった。

この作品はソ連を中心として戦争を書いた物です。

おそらくシリーズのようになるかもしれません、いろいろな視点から見る戦場をできるかぎり書いた物です('ω')

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