目に見えた悲しみ(プログラムアウト)
「ケイジさん!今日は…本当に……あれ……?」
お礼を言おうとしたナツキが突然意味深な発言を始めた…
「ナツキちゃん?どうした?」
ケイジは、ナツキに呼び掛けるが…
明らかにナツキの態度はおかしかった…
「嫌……助けて……私……どうして……」
ケイジは異変に気付き、急いでナツキの端末の電源をつけた…
その画面に写ったのは、ナツキを処刑する文だった…
…イハラナツキのプログラムデータの破壊を開始…
…イハラナツキ、人生終了…
「何でだよ…人生終了って禁止事項に触れなきゃいいんだろ…?おかしいだろ…?」
ケイジには、ナツキが人生終了される理由が分からなかった…
「誰!?…そこに誰かいるの!?」
「えっ…?ナツキ…見えてないの?」
「誰?私の事…知ってるの?」
「あぁ…知ってる……知ってるよ……まだ…会ってからそんな経ってないけど……でも……知ってる」
ケイジは、自分でも言ってる意味が分からなくなってはいた…
でも、心のどこかでナツキを安心させたかったのだ…
「知ってるなら…助けて…?何も見えないし…頭の中で…声が聞こえる…」
「声…どんな?」
「人生終了…人生終了って…」
「!!」
ケイジには、想像がついた…
もうすぐ、ナツキが死ぬことが…
「……ごめん………ごめんな……………ナツキ…………」
「えっ?………どうして………どうして謝る…………の………?……………あ………………れ…………?」
ナツキの体は…段々と、動きを縮めていった…
それと同時に、声も…細くなっていった…
体からは、どこから出たのか…
血が滲み出していた…
ナツキはその血を止めることは出来ず…
ケイジも、涙を止めることが出来なかった…
「ナツキ……ごめん…」
「ケ………イ……………ジ…………く……………ん………………」
「へ…?…ナツキ…?俺の事……」
「さ………き…………は……………あ……………り………が……………と…………………」
言い終えた瞬間…
ナツキの体は、支える為の骨がなくなったかのように…
目や…口…その他色々な部分から、血のような液体を溢れ出しながら…崩れ落ちた…
「あぁ……」
ケイジは、先程まで“ナツキだったモノ”に触れながら…
大声をあげた…
「ああぁぁぁあああぁぁぁぁ!!!!!」
その声は密林の中で、遠くまで響いた…
ケイジは両手を、ナツキの血で汚しながら…
顔は涙でグシャグシャにしながら…
声が枯れるまで…
永遠と叫び続けた…