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目的(カスミ編)
10/13

哀しみの壁(ヒトヲツツミコムモノ)

カスミが黙ってから、十分ほど沈黙が流れた…

そして、先に声を発することになったのはケイジの方だった


「さっきはごめん…カスミちゃんは俺の知ってた人に似てた…ただ…それだけ」


一言話し終わったケイジは自身の端末(タブレット)を開き、三日前に新導入(インストール)されたアプリを開く


…「Shot shop」を起動します…

…アプリを初期化します…

…初期化完了しました…

…「Shot shop」を起動します…

…・・・起動完了しました…


起動画面を覗き込むカスミは、顔をしかめる…


「Shot shop?」


先程見たカスミの端末(タブレット)には、アプリがインストールされていなかったのだ…


「さっき言ったろ、この世界では殺さないやつが罪なんだよ」


「だからどういう事なんですか!」


そしてケイジは、その問いに答えるようにアプリを操作する…


…何を買いますか?…

…《食料品》《アイテム》《火機(けんじゅう)》《弾薬》《チケット》…


「チケット?それに…食料!?」


「食料はここで買うんだ」


「そっか…あるんだ…良かった」


「いや…いいわけじゃ……ん?」


そこでケイジは、何とも知れないモノが胸を襲っていた…

まるでカスミのその時の安心した顔が…

昔を思い出させるようだった…


(なんだ…この嫌な感じは…)


その時…後ろから声が聞こえた…


「君たちもプレイヤー?♪だったら…」


その声は間違いなく、二人を地獄へと突き放すものだった…


「っ!…」


「何ですか?」


ケイジは、“奴”がしようとしてることに気付いた…


「逃げろ!!」


「ほぇ?」


キュンッ!


「えっ?…ひっ…」


カスミの足下を、一発の弾丸が掠めた…


「だったらぁ……死んで♪」


「いやぁ!!!」


カスミはパニックになり、懐から拳銃を取り出そうとした…

ケイジは咄嗟に止めようとする…が…


「止めろ!カスミ!」


「えっ?」


…遅かった…

カスミは、拳銃を相手に向けた…

その瞬間に決まった…

殺戮(コロシアイ)が始まったことが…


「ヒャッハァー!!」


“奴”は狂ったかのように、カスミに弾丸を打ち込んだ…

しかも、“奴”は機関銃(マシンガン)を使っている…

拳銃(ハンドガン)を使っているカスミが勝てる筈無いのだ…

その場は…悲惨だった…


「あっ!がっ!」


「カスミ!」


機関銃(マシンガン)の弾丸は、柔らかいカスミの肉体に入り込み…

そして…そのままカスミの体外へと抜けた…


「かっ…は……」


カスミの身体には、小さい無数の穴が開き…

そこからは鮮血が、散っていた…


「大丈夫か!カスミ!」


「そ…んな……私……死ぬの……?」


「ちっ…くしょおぉ!!」


「ははははっ!!♪死ねぇ!♪」


ケイジは、一週間前を思い出していた…


あの希望に満ちた顔…


あの安心感…


カスミは…虫の息になり…

目の前で横たわり…

そして今…息絶えようとしているのだ…


何故…この世界は安心を許さないのだろう?


何故…この世界の神は安心を嫌うのだろう?


何故…生きたいと思った人間だけが死ぬのだろう…?


悲しみと…そして無数の疑問だけが…


ケイジの周りを包み込んでいた…

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