小学生に惚れた高校生ヤンキー
ちょっと展開速いです(^o^;)見たら感想下さい(*^^*)
「ゲホっ!!...ヤベーな」
隼人はちょっとしたピンチだった。ここら一帯をしめる、最強と名高い隼人は当然敵が多い。
仲間と別れ、一人で帰っていたら前に潰したチームの残党に奇襲をかけられたのだ。当然、将軍とさえ言われる隼人はなんとか全員倒したのだが、30人も越える不良たちに無傷ではいられなかった。
多少ボロボロになりながら、夜空の下で倒れるように座っている。道行く人達は隼人をみながらも関わりたくないという気持ちからか、見てみぬフリをしている。
「しゃーねーよな......」
自分はヤンキーなのだから仕方ないと割り切っているが...やはりどこか悲しさが出てくる。
「あの......大丈夫ですか?」
その時、幼い子供の声が聞こえた。ハンカチで血に濡れた額を一生懸命ふいている。
「んだ...テメー...」
どうしていいのか分からずに凄んでしまった。隼人は美形であるが故に女性に言い寄られることはあったが、ここまで幼い女に話しかけられた事は殆ど無かったのだ。
子供は聞いていないのか、無表情に濡れたハンカチで傷を拭いている。
そこそこ整った顔立ちで、成長途中だというのが分かり将来的にも可愛くなるだろうと予想の出来る姿だった。
「スポドリ、ここにおいて置きますね」
目の前にペットボトルを置き、少女はそれだけを言って、立ち去って行った。
これが、少女と俺の出会いだった。
「そ、そんな事があったんすね!!」「マジやべーっす!」「そりゃ惚れるっすよ!」
「ちょっ!!なくなって!」
舎弟たちは感動の嵐だ。自分たちが敬愛してやまない将軍のめったに聞けない恋愛話を聞いて、涙をながしている。
一体どこにそこまで感動する部分があるのか正直な話、先程話に出てきた少女、如月 茜がとった行動は濡れたハンカチで傷を拭いて救急車も呼ばずにスポドリを渡しただけである。
しかし、誰もそこに突っ込まない。
「だから...あいつと出会えたのは運命だと思ったんだが...」
逃げられた。偶然にも路地裏で茜と出会ったのだが、気分が高揚し過ぎて質問攻めとなり、最終的にメアドを聞こうとしたら悲鳴をあげて逃げられたのだ。
「畜生!!将軍にこんな顔をさせるなんて!!」「将軍ほど素晴らしい人はいねーのに!!」「将軍!!落ち込まないで下さいっす!」
うなだれる隼人に周りは励まし、少女に怒りを覚えた。彼女はまだ10歳であることなど、誰も気にも止めていない。
そして強烈なカリスマ性を出しまくっている隼人の願いは自分達の願いだとそう意気込んだ。
「将軍!!まってて下さいっす!すぐに!すぐに茜っていう女と連絡が取れるっすから!!」「いくぞヤローども!!!」「おお!!」
舎弟たちはそう言って、あらゆる手練れを駆使し少女の居場所を突き止め、半ば無理矢理にメアドをゲットした。
そして、周りの後押しもありメールのやり取りが始まったのだが、恋愛初心者である隼人はどうしていいのか分からなかった。
女は基本的にウザイ位メールを渡す存在だと思っていたので、全然メールを寄越さない茜に何度もメールを送ってしまった。
後に彼女はこう言う
『めっちゃ怖かった!!』と
そして隼人...と言うよりかは、周りの存在がアレだった。ヤバイ位に敬愛の念を抱き、最早異常とも呼べる程隼人を慕っている彼等は茜の意思を度外視して隼人の幸せを願っていた。
「その結果がこれなんですね」
茜は隼人の膝の上でそう項垂れた。
「どうしたんだ?」
隼人は茜の顔を覗きこむ。現在、茜と隼人の関係は所謂恋人となっている。周りの脅しに屈した形になってしまったが、茜は既に悟りを開いた状態になっていた。
恋人なので週に一回彼氏の家で遊ぶと言うなんとも面倒くさい状態にいまいる。
「隼人さんは皆さんに慕われているんですね」
遠い目をして言う茜。それを見て隼人は少し悲しそうに言った。
「お前は...後悔してるのか?」
はい、そうです。と出そうになった言葉を飲み込む。
「いや...その...もう愛があればいいです」
それは諦めの境地に達してした。何度も怖くて逃げようとしたが、舎弟たちや息子ラブな隼人の親からは逃げられない。なので一旦冷静に、ポジティブに考えてみた。
最近愛の無い家庭が増え、仮面夫婦が増えている。しかも不況のせいでいい結婚に恵まれない人は沢山いる。けれど目の前の男は愛も経済力もあるからきっと将来的には幸せになれるだろうし、贅沢も出来るだろう。
と、およそ小学生の発想ではない事を考えている。それに最低でも後6年の猶予があるから、いつか冷める時がくるかもしれない。
「そうか...大好きだ!!!いっぱい愛をあげるからな!!」
カバ!!っと隼人は抱き締めた。
「あの...出来れば、もう少し薄めで...」
茜の声は、隼人には聞こえていなかった。
「よかった...これでお前の家を潰さずにすんだ...」
そして、ボソリと言った隼人の声も茜には聞こえていなかった。