現代版リアル『笠地蔵』!
お待たせしました! 現代版リアルシリーズ第5版、『笠地蔵」です!
ご感想等いただけると嬉しいです。
むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは20年前に会社を定年退職して以降、引きこもりニートな生活をダラダラ送っております。
一方で年金暮らしのおばあさんも、どこで人生の道を踏み外したのか、80歳を過ぎてから萌え系中心のコスプレに目覚めてしまいました。
いい歳して魔女っ娘やロリメイドのコスプレをするわが妻に、おじいさんは嘔吐を繰り返す日々です。
さて、年末のある日のことです。
消えた年金問題により、年金を受け取れなくなったおじいさんを養うおばあさんの年金だけでは、コスプレ衣装を満足に買うお金はありません。
「ばあさんや、家計も火の車だし、そろそろ衣装を買うのはやめなさい」
とおじいさんが注意しても、
「見て見て、今日はロリメイドですよ! おじいさんや!」
「おえええええっ」
と、会話になりません。
そこで来年こそ良い年を迎えるため、おばあさんの所持しているコスチュームをコッソリ街で売って、その金でエンジョイしようと考えました。
――☆――☆――
雪の激しく振る城下町。
「衣装はいらんかねー! ババアの使用済み核燃料――いや、使用済みコスチュームはいらんかねー!」
一瞬、人々の笑顔あふれる商店街で放射能があふれそうな用語がでてしまいました。
『使用済み』+『本当は触りたくない』というだけで核廃棄物を想起してしまったことにちょっと反省です。
事実、ババアの使用済み衣装は核廃棄物並みに人気がありません。
当初は興味を持っていたドゥフドゥフ系キモオタさん達も、「ババアの使用済み」といっただけで気を失ってしまいました。
核兵器並みの威力です。
「むぅ」
結局一着も売れず、おじいさんはトボトボと肩を落としながら帰路についていました。
その時、おじいさんは道端に雪をかぶった7体の地蔵を発見したのです。
「ああ、かわいそうに」
おじいさんは寒そうに凍える地蔵たちを見て、あることを思いつきました。
(そうだ! この汚染された衣装を地蔵に着せて帰ろう! そうすればワシは身軽でいいし、地蔵は温かくてよかろう!)
一石二鳥とはまさにこのことでしょう!
おじいさんは早速手にしていた衣装を順に着せようとします。
「やめて! ババアの使用済みなんて着せないで!」
おじいさんの手元にあるセーラー服を見て、地蔵は震えながら断りました。
色んな意味で寒気がするからです。
美人なお姉さんの使用済みパンツ等なら地蔵たちも喉から手が出るほど欲しいですが、なにせ相手はババアです。
そんな汚染物質を着せられるくらいなら、今のままで十分です。
「まあそうおっしゃらず」
「いやだ! やめておじいさん!」
「ええい、これでもくらえー!」
「ああっ!!!」
嫌がる地蔵らを押さえ込み、ムリヤリ着せてやりました。
No thank you過ぎます。
で、左から順に1号~7号まで名づけ、
1号→セーラー○ーン
2号→『ドラゴン○ール』の悟空
3号→『北○の拳』のケンシ○ウ
4号→『宇宙戦艦ヤマート』のデ○ラー総統
5号→アメリカン・ラッパー
6号→『ルパァン3世』のフジコちゃん
7号→初○ミク
という格好になりました。
特に7号に関しては石頭から水色の髪が伸びているので不気味です。
「これでよし!」
おじいさんは衣装をボンドで固定すると、足早にエスケイプしてしまいました。
意地悪なおじいさんが去って行く様子を見て、7体の地蔵は同時にこう言ったのです。
「「「「「「「ジジイに倍返しだ!」」」」」」」
――☆――☆――
その日の晩、大変雪が降りました。
今日は雪がよく振るなあ、なんて呑気に思いながら寝床についていると、変な音が聞こえてきておじいさんは目を覚ましました。
「い、一体何の音楽じゃ、これは」
時刻は深夜の2時です。
なのに外から「か~め~ぱ~め~波ー!!!!」とか、「お前はもう死んでいる」だったり、「ヘイ、Yo! ヘイ、Yo!」というラップ調の音声が聞こえてくるのです。
安眠妨害もいいところです。
「ぬぅ」
おじいさんは布団をかぶって無視することにしました。
――が、
「Hey Yo! ジジイの~♪ 家に~♬ レッツGoだぜYo Yo! 気分は上々!♪」
「オッス、オラ○空!」
「波動砲発射10秒前、セーフティーロック解除! 目標、ジジイの家!」
「ルッパ~ン♡」
「お前はもうすでに死んでいる」
各名言がうっとうし過ぎて眠れません。ただでもラップ調の音楽に悩まされているというのに、奥から初音○クの某名曲が聴こえてきます。
美声ならともかく、あまりに音程を外し過ぎていて聴いていられません。超ド級のオンチです。
「むふぉぅ!」
声は次第に近くなり、おじいさんはついに耐え切れなくなりました。
深夜2時過ぎから「波動砲、エネルギー充填率120パーセントぉ!」とか叫ばれたんじゃあ、たまったものではありません。
撃たれる前に「20パーセント漏れとるやん!!」と文句を言ってやりたいくらいです。
省エネが叫ばれるこんにちでエネルギーを2割も無駄にするとは、許しがたいエネルギーだだ漏れ宇宙戦艦なのです!
「むむぅ!」
近くにあった阪神タイ○ースのメガホンを片手に出陣します。
こうなったら仕返しに応援歌の『六甲お○し』でも歌ってやろうではありませんか!
「おんどりゃあ! いま何時かわかっとんのかァ!!」
叫びながら戸を勢いよく開けます。
安眠妨害する奴は許せません!
「オッス、くそジジ――おじいさん!」
なんと戸の向こうには、某アニメの主人公にコスプレした地蔵がいたのです! 胸に『悟』と『空』の刺繍があります。
「ぬ?」
よく見たらセーラーム○ンとか初○ミクにコスプレしたオンチ地蔵までいるではありませんか。
「き、貴様らはっ!!」
水色髪にツインテールの地蔵を見ていると、落ち武者みたいでめっちゃ怖いです。
しかも『Bボーイ』と書かれた帽子を被る地蔵が、ピースをしながら「Yo Yo!」とか言ってくるのですから、おじいさんの腰は抜けまくってしまいました。
「おじいさん、服をありがとうございました」
胸に七つの傷がある地蔵が言います。
あの模様は北斗七星でしょうか。それにしては斬新すぎる入れ墨です。
「それでは、よいお年を」
胸に七つの傷のある男――もとい地蔵は、おじいさんに名を名乗らぬまま、持っていた財宝や食べ物を置いて行ってくれたのです。
しかも財宝に紛れてお宝AVまであるではありませんか!
「ああ、これでよい年を迎えることができそうだ!」
おじいさんはコスプレ地蔵たちの残してくれたアダルトビデオに抱き付きました。
かくしておじいさんとおばあさんは、コスプレ地蔵のくれた食べものや財宝でよい年を迎えたのでした。
めでたしめでたし――
――と見せかけて、物語にはまだ続きがあったのです!
フツーの食べものや財宝をくれたらそこでハッピーエンドだったのに、コスプレさせられた“半沢地蔵”たちはおじいさんへの倍返しを忘れていませんでした。
「さあ、早速AV鑑賞でもするか!」
それはおじいさんがリビングのDVDデッキに向かった時のことでした。
「むっ!!」
なんとお宝AVはDVD非対応のブルーレイディスクだったのです!
わが家にブルーレイが無いことを知っての汚い仕打ちです。
このAVをくれた地蔵はどうやら、「AVが見たければブルーレイを買え」という電機業界からの刺客だったようです。
「むぅ!!」
AVは諦めます。
ここで電機業界の言うことに従いブルーレイを購入すれば、男のプライドもなんちゃらです!
泣く泣くおじいさんはAVを手放し、食べ物と財宝に賭けることにしました。
しかしまた事件は起こったのです。
「むむっ!」
財宝だと思っていた小判、大判は全て、メッキだったのです!
ご丁寧にも裏面に『メイド・イン・チャ○ナ』と書かれているではありませんか。
しかも紙幣は全て“子供銀行”ときました。
せめて子供用ではなく大人のオモチャが欲しかったところです。
「むむぅ」
子供銀行の財宝は大人銀行ではゴミクズです。
この流れだと食べ物は汚物か何かじゃないのか、と心配でしたが、食べものの方は案外イケそうです。
ただし異臭を放つドリアンや消費期限が数か月前に切れたであろう納豆、しかも道具が無ければ食べれないヤシの実etc。
この品目から半沢地蔵の仕返しスピリッツがうかがえます。
「ぬう」
まともに食べれそうにないので、適当に食べ物を物色していると肉まんが出てきました。
ただしめっちゃ軽く、怪しく思ったおじいさんが中身を開くと、肉のかわりにティッシュが詰められているではありませんか。
ふと段ボールのラベルを見ると、『原産地:中華人○共和国、輸入者:地蔵1号~7号』となっておりました。
あの短時間で異国から輸入してくるとは、半沢地蔵の仕事の速さは半端じゃありません。
流石は元銀行マンです。
のほほ~んとしている市役所のお役人共に知らせてやりたいくらいです。
「ちっくしょー!!!」
かくして、まんまとコスプレ半沢地蔵にしてやられたおじいさんは、トンデモナイ形で新年を迎えてしまったのでした。
あなたはリアル笠地蔵、どうでしたか?