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とりあえず

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 さて、あれからどれぐらい経ったかわからないけど、俺は目を覚ました。とりあえず、現状は最悪よりはマシかもしれない。

なにせ、よくわからないけど建物を作る能力が備わっているのだ、雨風はしのげるだろう。


 問題は食料と、水の確保だ。


 まず例のアイコンをタッチして起ち上げてみる。

どうやら、アイコンタクトとタッチパネル方式の両方対応可能なようだ。機能としては、チュートリアルでやったように細かい建物から地形改造まで色々できるようだ。


 そこにマップのアイコンを見つけタッチしてみた。

どうやら自分が居る場所の上空からの画像が表示されたみたいだ。

視点は固定で、ズームアップとインだけができた。


 ログハウスを中心に、北に大きな山脈があり、陸地が丁度半島の様に突き出た細長い地形だ。イタリア半島を思い出すとわかりやすいかもしれない。


 北にアルプス山脈南に海につきだした半島。

北の山脈から川が流れているようだ。


 森と山脈以外目ぼしい物が無いこの画像を見ると、山と川と森と海という、ワイルドなマップだった。


 一応都市らしき物も確認できたので、後で確認してみよう。


 広さはわからないけど、一番引いた絵でログハウスが全く確認できないぐらいだし、星の輪郭が見えるから数百キロ四方は見渡せると言うわけだ。


 他の都市らしき物も近場に無さそうだし、もしかしたら小さな集落はあるかもしれないが、小さすぎて、丹念に調べないとわからないだろう。


 さて、とりあえず、マップ画面にも操作アイコンが色々あるのでいじってみる。


 お、地図からでも地形改造ができるぞ。


 えっと、水のアイコンから地下水を選択して、自分のログハウスの地下を透視してみる。どうやら水脈も見れるようだ。


 幸い、ログハウスのすぐ近くに地下水脈があるようなので、そこまでの土を地形改造で除去して井戸でも掘るか。


 素材の石と木材を集めるために、ログハウスを出た。


 ログハウスは、横長で、正面左側に扉があり。右側には窓がある。

入り口にはオープンデッキがあり、柵もある。オープンデッキから数段の階段があり、床下の風通しも抜群だ。


 周りの鬱陶しい木々を次から次にカード化していく。石も同様だ。


 一々拾うのが面倒に成って来たので、地面に手をついてカード化と念じてみると、主要なアイテムがすべてアイコン上に表示されて大変だった。


 カード化出来る範囲は目視範囲まで可能なようだが、アイテム数が膨大になるのである程度範囲を絞らないと処理できない事がわかり、とりあえず範囲をログハウスから半径数百メートルを指定してみた。


 指定素材を範囲内で全て回収するという指示ができる事がわかったので、近場の手頃な大きさの石と金属と木材を指定範囲内全てから、採取してみた。


 鉄や銅、他にも見たことも聞いたことも無い金属やらが次々と回収できたが、どれも少量だった。

恐らく、鉱山とかならもっと大量に採集できたのだろうが、ここは普通の土地なので土壌にわずかに含まれる物質が採取されたのだろう。


 お陰で、ログハウスの周囲数百メートルは全て更地になってしまった。


 地形設定で、地下水脈まで、一気に穴を掘る(掘ると言うより正確には周囲に土が寄せられて穴が生成される)と、穴の壁面が崩れないように石を隙間なく壁面に組み、地面から腰のあたりまで木で四角い囲いをして、東屋とつるべを制作して、設置した。


 もちろん石組みも家を建てた方法と同じような感じでやった。


 これで、井戸は完成だ。


 つるべの滑車には貴重な金属から生成した鉄の車軸と軸受が使われている。地味にこんなものまで製作可能なのは、ありがたいことだ。


「後は食糧問題だな」


 植物のアイコンをいじっていると、作物の項目が出てきた。

見たこともない作物がずらりと並ぶ、一応トウモロコシとか、コメとか普通のもあるけど、大半が得体のしれない、謎な植物だった。


 どうやら、品種改良もできるらしく、色々と応用ができそうだ。


 しかし、今すぐに食料を確保するのは難しい状況だ。

作物も栽培期間を考えれば、かなりの日数が掛かる。

とりあえずログハウスの正面に畑を設置することにした。


 土壌のリン酸などの養分を畑に集め、土以外の細かい石やゴミを取り除き、ふわふわになるぐらいに地面を柔らかくほぐして、いも科の作物を植えてみた。


「あぁ、おなか空いたなぁ…」


 考えてみると、昨日から何も食べていなかった。

どうしようか考えていると、比較的近くに河川が流れている事思い出す。

その近くには、確か三日月湖があったはずだ。

とりあえず、森の中をマップを確認しながら移動する。


 道無き道を歩くのは、かなり難航した。

なにせ、近くのコンビニに行くために外出したのだ、森林探索のための装備など無い。


 ジーパンにロンT、履き古したスニーカー。

人の手の入っていない森は予想以上に進路を阻んだ。

あまりにひどいので、多少進んだ所でふとある考えが浮かんだ。


 地面に手を触れてアイコンを出して、マップ画面を選択して少し引いた視点にする。

三日月湖からログハウスまでの間を選択、そこにある地表の物をを全てカード化選択。


 すると、三日月湖からログハウスまでが綺麗な直線で結ばれたのだ。

幅にして5mはあるだろうそこは、地面の凹凸以外に一切の草木や石が存在しない空間とかした。

ついでとばかりに、土木画面で地面の凹凸をいじって、ログハウスまでの直線を緩やかな丸みのある路面の道路に変えてみた。

これなら多少の雨風でも水はたまらないだろう。

ついでに高低差もいじって、直線の範囲の高低差を平均化しておいた。

上り下りが無くて、非常に楽だ。

そして、三日月湖までの道を歩いて行く。


 三日月湖について湖の中を伺うと、色々な生き物がいそうだ。


 試しに、水に手を付けてカード化を試みるが、水はどうやら土と違ってカード化の効果範囲を及ぼさないらしい。


 仕方なく、今度は画面から地形変更設定をだして、三日月湖の一部を切り取り、そこの水位を低下させた。

切り取られた三日月湖の地表部分を徐々に隆起させて、余分な水を切り取った部分に水路を作って流す。

水位を低くすると、水中に居た生物が大量に溜まっていた、地球と同じ魚も居れば見たこともない形容しがたい生き物も居た。


 とりあえず、やばそうな生き物は放置して、魚に触れてカード化していく。

どうやら、生き物もカード化できるようだ。生きていても普通にカード化できる事はありがたかった。


 そこそこ捕れた辺りで、池からでて三日月湖に戻し。ログハウスへと帰還した。


「これで当面の食料は一応大丈夫かな?」


 魚以外にも、道路製作時とログハウス製作時に回収した動植物(地表に直接触れていた動植物は全てカード化された。逆に触れていないものはカード化されずに放置された)から食べられる物を選択して、材料加工を選択して料理してみた。


 火も水も包丁も要らずに、アイテムを選択して加工すると、切り身に成ったお魚がこんがり焼かれて出てくる。


 ついでに木材で皿を作って、土壌の塩分から作られた塩をふりかけて食べる。


 食べられるものと食べられないものは、カード化した時に説明と共に効果の項目で有毒か無毒かが分かるようになっている。


 しっかし自分もいきなりこんな状況になったのに、よく冷静でいられると思う。


 いや、正直混乱しているのかもしれない。


 あるいはここがゲームの世界だと思っているのかもしれない。

兎に角、今オレには現実性というものが欠けていたんだと思う。


 ニートになった時も、どこか他人事だったような気がする。

なんというか、現実感が自分は乏しいのだと思った。


 毎日同じ日常を繰り返しながら、それが永遠に続くものだと幻想を抱いていたのだ。


 現実は、両親は日々老いて行き、自分もどんどん老けていった。


 30歳を目前にして徐々に焦り始めたが、それでも全く動かなかった自分。

ここがどこだかわからない不安以上に、あの場所の自分も現実の世界に生きていなかったのだと、この場所に来て初めて判った。


 だからだろうか、不思議とパニックにもならずに、この理由の分からない機能を使いつつ、適当にこの場所にとりあえず生活する場を構築していく。


 なんとなく生き、なんとなく生活する。


 あるいは現実逃避の極致だったのかもしれない。


 これはゲームだと、遊びだと。いつか覚めるからそれまで楽しめと言う甘い誘惑の言葉に乗せられたのかもしれない。


 焼き魚をかじりながら、じっと炎を見つめつつ次第に黄昏時から夜へと変わる夜空へ視線を向けた俺は、その時この場所が恐らく地球では無いだろうことを悟った。


 夜空に浮かぶ星々の中に知る星座が無く、何より赤いもやのような不気味な物が夜空の一部を覆っていたのだった。


 あれは、恐らく超新星爆発後のガスであろう。


 地球でも、古代には観測された現象だがあれほど大規模な物は聞いたことがない。


 何より、あんなにはっきりとガスが夜空の一部を覆うのに、どれだけの月日がかかるだろうか。


 それこそ、人類が誕生して消滅するまでかかっても、恐らく地球では観測できない美しくも怪しいチリとガスが、星空に漂っていたのだった。

お読みいただき、ありがとうございます。

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