始まり
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七夕祭りに賑わう商店街を、一人の男がとぼとぼと歩いていた。名は、犬神史郎。今年28になるニートだった。目はどこか虚ろで、全てに疲れきった感じであった。
あぁ、もう死にたくなって来た…
最近ひとりごとが増えてきた。家族との会話も殆ど無いし、友だちもいない。現世に全く未練がない自分はもう来世に賭けるぜ!!的な思考で、絶賛絶望の中を漂い中だった。
そんな彼の目の前に、商店街の七夕飾りが目に入った。
『ご自由に願い事をお書きください』
そんな文言で、短冊とマジックペンが置かれたテーブルが笹の前に置かれていた。どこにでもある、七夕イベントのサービスだ。
この時俺は、無意識に何かにすがりたかったのかもしれない。
それが、あんなことに成るとは夢にも思わなかった。
何の気なしに、その短冊飾りセットを見た史郎は、特に考えもせずに近づき、小学生以来書いたことのなかった短冊飾りを小汚い字で書いていたのだった。
『人生をやり直せますように』
気分はサンタクロースにプレゼントをねだる子供そのもの。
本来の七夕の意味合いとは大きくかけ離れた短冊を、史郎はちょっと見えにくい笹の内側に吊るして、足早に商店街を去って、親から頼まれた買い物を済ませたのだった。
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