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【ブルードラの天空塔】 ――四大宝玉物語――

タマちゃん育生記に似通った設定になっていますが、一応別の世界のお話です。

「さぁさぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい!

 ここでしか手に入らない――ってことはないけれでど!

 体力回復薬ビルドポーション高級体力傷薬ハイビルドポーション魔力回復薬マジックポーション、携帯食料に武具の手入れ道具一式などなど!

 すべて適正価格! 適正価格で取り揃えております!


 そこを行く厳ついお兄さん! 守護符アミュレットはどうです!

 あ、綺麗なお姉さん! 将来の為の美肌グッツも各種取り揃えていますよ!


 さぁ、早いもの順! アイテム補充の最後のチャンス! 買った買っ――」


 スパコ~ン!


 場違いなほどラフな格好――額に白い鉢巻を巻き、その体格には大きすぎる上着を羽織るという妙な趣味な格好だが――をし、何やら筒のようなものを、持っていた大きなリュックに叩きつけながら大声を張り上げていた小柄な少女にそこにいた冒険者達は怪訝な目を向けていた。

 そして突如鳴り響いた、蒼天に響き渡る音――そして荷物ごと少女を引きずっていく、青年の姿に目が点になっていた。


 アロルテイアの東の端、四大魔宮が一つ――【ブルードラの天空塔】の入口前での出来事だった。


 



―――・――――・――――・――――・――――・――――・


 唯一の大陸アロルテイア。

 ここでは毎年いくつもの迷宮が誕生している。

 誕生した迷宮は日々拡張していき、中に生息する魔物も強大なものとなっていく。

 

 そして迷宮からは多くの魔物が外へと流出し、人々の生活を脅かしていた。

 

 そんな魔物を狩り人々の生活を守り――また、迷宮の核となっている宝玉を求めて迷宮の奥へと潜っていくことを生業としている人々を冒険者という――


 こうして日々発生する迷宮は冒険者達に狩られ、攻略されていっている中、百年以上も冒険者達の攻略・制覇を拒み続けている迷宮があった。


 大陸最北端、大山脈【ゲンキブの頂】

 大陸最西端、広大な【ホワタガイガの森】

 大陸最南端、深淵たる【フェニザス渓谷】

 そして大陸最東端、島に唯一、天を貫く様にそびえ建つ【ブルードラの天空塔】


 難攻不落にして、他の迷宮と異なり魔物が外へと湧き出ることが――過去に1度しか観測されていない不可思議な迷宮。

 

 一説には魔を律する王が住まうとさえ言われている。


 これらの4つの迷宮を称して四大魔宮と呼ぶ――


 ・

 ・

 ・

 

 ――以上、簡易説明終わり!


―――・――――・――――・――――・――――・――――・





「で、リン。お前何やってんだ、ここで?」


 絶対零度の視線が少女へと注がれる。

 遠くの方で「なんだったんだ?」「というか行商?」「こんな所で?」「あんな装備でか?」等など

 冒険者さん達の会話との温度差が物凄く大きい。


 パンパン、と手に持った巨大ハリセンで肩を叩きながら青年の視線温度は変わることはない。


「何って……リッくん。行商だよ」


「だから何でココでやるんだよ!?

 それとオレの名前はリクだ! 変な呼び方をするな! 」


 常人なら――いや、中級どころの冒険者でも萎縮してしまいそうな視線を受けているにも関わらず、少女は堪えた様子は見せていない。


「やるなとは言わなが、やるなら自分のトコでやれよ」


「ぶーぶー!

 ソラちゃんに会いに来たついでだもん!

 外にタムロしているから中にはいれないんだもん! 」


 リンと呼ばれた少女が持っている筒――メガホンで指し示す先には何人もの冒険者が塔の中へと入っていっている。


「まぁ俺らのところと違ってここは入口が1つだけだからな。

 もうしばらくしたら落ち着くだろうさ」


 この切り立った岩に囲まれた島に停留できる船着場――開けた箇所は一箇所のみ。

 潮の流れも早いこともあり、上陸するには基本的に1日3回出航しているギルドの船に乗るしか方法がない。そしてここまでの道周辺にも決して雑魚とはいえないレベルの魔物が生息しているため、塔までの到着時間は冒険者パーティーによって異なる。

 

まぁ、世界最高峰の魔宮――名の知れた冒険者しか挑戦しないが――


 ・

 ・

 ・

 

 本日の挑戦パーティは5組だった。

 それを眺めながらリンが「《重鉄剣武》だ! 」「《舞巫女》だ! 」「《白刃の王子》! 」等と声をあげ、青年――リクはそんな少女の反応を無視して本を読んでいた。


 そんな感じで小一時間経過。

 冒険者の入場は終わったのを確認し、2人は塔の入口へと近づいていった。


「そういえば何でお前、ソラのヤツに会いに来たんだ?」


「え~、リンちゃんはぁ~

 ソラちゃんの作るお菓子を食べに来たの~」


「相変わらず商売の時と人格違うな、オイ」


 目の前には壯大な扉。それを押し開けながら青年は呟いた。

 リンはその横をトコトコと抜けていく。


「そういえばリッくん。

 リッくんはどうしてソラちゃんに会いに来たのぉ?」


 扉の先には、フロアの幅のほとんどを占める階段。至るところに植物をモチーフとした彫刻が品良く施されているが、唯それだけ。

 ここだけ見たら四大魔宮の1つだとはとても思えない。


 そんな、先に入った冒険者全てが登っていった階段を無視し、2人は階段の横――人1人がようやく通り抜けれる程のスペースを通っていく。


「あいつに本を貸しててな。

 いい加減返せと催促に来ただけだ」


「え゛……」


 そして階段の奥の方。入口からは見えないが横――階段の下に入っていける道を通り、丁度中頃まで。


 そこでリクは突然、階段側の壁を触り始めた。


「どうしたんだ?

 いきなり変な声を出して」


 するといきなり、壁の一部が開き降りの階段が現れた!

 その先は、この部屋のようには明るくなく、暗闇が広がっていた。


「リ……リッくん、正気?」


「正気って……失礼な」


 狭い長い階段だが、淡く光るコケが至るところに生えており、足元が見えない、ということはない。


「だって、ソラちゃんだよ!あのソラちゃんだよ!

 十中八九、無事に戻ってこないよ! 」


「甘いな。十中八九じゃなくて十中十に決まってるだろ」


「――へ?」


「貸したのと同じのを持っててな。

 それに丁度欲しいモノがあったところだ」


「……リッくん。あいかわらず……あくどいね……」

 

「何とでも言え! 」


 ・


 しばらくすると、階段はいきなり開けた場所につながった。


 鍾乳洞の広場――そして淡く輝く地底湖。


「相変わらず見事な風景だよな。ここも」


「そうだねぇ~

 でもさぁ~いつ見ても無防備だよね、あれ~」


 リンの指差す先――湖の中央に一本だけ建つ柱。その上に淡い青い光を放つ宝玉が浮かんでいた。

 そう、それこそがこの迷宮の核――


「まぁあの性悪女のやることだ。

 舟とかで近づいたら、ドラゴンにパクッ、ぐらいはやるだろさ」


 ――その通りです。


 リクの言葉に反応して、リンとは違う声が広場内に響いた。

それと同時に、湖にある一点を中心に波紋が生じる。そしてその一点の上に、徐々に人の姿が浮かんできた。

 

 長い髪に整った顔立ち。

 ただし耳の部位には大きなヒレのようなモノがあり、また下半身は魚となっている。

 一言で表すなら、宙を浮かぶ人魚。


「けど、誰が性悪女ですか?」


「ソラちゃんひさしぶり~~~」


 ジャンプひとっ飛び!


 結構な高さがあったはずだが、階段から飛び出して!

 リンは現れた人魚に飛びついた。結構な距離があったのは気にしてはいけない!


「久しぶり~、リンちゃん。元気にしてた?」


「うん!

 ソラちゃんも元気そうだね! 」


 抱きつき、くるくるとその場でまわる女2人。

 そんな様子――1人は明らかに人間ではないのを気にすることなく、リクは階段を下りていく。


「しかし、なんで人魚(そんな)の姿しているんだ?

 オレらみたいに人間の格好でいいだろうに」


「私の家でどのような格好をしていてもいいじゃないですか、このレイテツ・リクオ! 」


「へいへい。

 たしかにお前の迷宮()だ。文句はないよ。【天空塔の宝玉】ドノ」


「尺に触る言い方ですが、まぁいいでしょう。

しかし、リンちゃんはともかく何故あなたま「ねぇねぇそんなことよりも! 」


 険悪になりかけた空気を察知して、人魚――ソラに抱かれていたリンが、


「ソラちゃん、今日はお菓子作ってないの?」


 訂正。何も考えていなかっただけみたいだ。


「外にいたと連絡がありましたから、ちゃんと作ってますよ」


 リクの側まで移動して、抱きかかえていたリンを下ろしてニッコリと――ドッカァン!!


 突然の爆発音!


「またか?」

「またぁ?」


「あああああ――クッキーがぁ! 」


 慌てず騒がず。

 この塔の主が慌てて奥へと飛んでいったのに対し、客2人は落ち着いていた。


「今回はオーブンかなぁ?」


「みたいだな。おそらく焼いている時に爆発でもしたんだろう」


「相変わらずだねぇ~

 この前来た時は、お鍋が溶けたんだっけ?」


「鍋が爆発したとか、フライパンが火を噴いたとかもきいたけどな」


 人、それを慣れと呼ぶ。


「しっかし、そんなんなのに、出来上がる料理は絶品なんだよなぁ」

「だよねぇ」


 遠くから、「あぁぁぁぁ……オーブンがぁ」とか聞こえてくることから、2人の予想はあっていたらしい。

 

 取り敢えず、ボーとしていても仕方がないと判断し――


「まずは片付け手伝うか。設備のリセは簡単にできるだろうけど」

「美味しいお菓子のためガンバる! 」


 勝手知ったるなんとやら。奥へと行った空を追いかけるように、彼らも奥へと向かっていった。






 オチはない。

 ダラダラとした彼らの日々はまだまだ続く――

 そんな日常の一幕であった。











 ――おまけ――とある冒険者パーティーのお話――


「おおぉ――」


 その部屋に到達したとき、彼――《豪腕》アレル・ハルバートは思わず感嘆の声を上げていた。彼の仲間も似たような反応をしている。


 何人たりとも拒み続けていた四大魔宮が1つ、【ブルードラの天空塔】

 入ってから早1週間。

 ひたすら上り、襲いかかってくる魔物をある時は切り捨て、ある時は逃げ――

 体力気力的にも限界が近づいてきたところで、この部屋へと到着した!


 今まで異なり、ちょっとした大きさの部屋。後ろには登ってきた階段。壁はなく怜美な彫刻が施された柱のみが天井を支えている。その柱と柱の間からは、しばらく見ていなかった蒼天な空と白い雲の海という景色が広がっている。

「スゴイ。ここ、雲の上なんだ……」


 階段の下と違い、魔物の気配は一切なく、どことなく神聖な雰囲気すら感じる場所――

 その中央に――淡く輝く宝玉があった!

 

 大柄な彼の背よりも少し高い箇所に浮かんだ、宝玉(それ)――


 誰もが夢見た、この魔宮の核!


 手に入った地位、名声、金――


 パーティーの誰もが、そんな輝かしい未来を妄想した。

 それだけの――もしかしたらそれ以上の価値がもの。


 さぁいよいよ――と近づいた瞬間!

 宝玉下の床が開いた!


 突然の事だったが、そこは歴戦の冒険者。瞬時に思考を切り替え、構える!


 開いた床からは――小さな女の子? が出てきた。いや、強い魔力を感じることから、動く人形(リビング・ドール)かもしれない。


 一目見ただけでそう判断し、どのような事態にも対応できるよう警戒心を強める!


 しかし――出てきた女の子は優雅に一礼し、あまりの歓喜に気づかなかったが、宝玉から伸びていた縄を掴んだかと思うと、それを強く引っ張った!


「え?」


 瞬間、割る宝玉! 舞い散る紙吹雪!

 そして宝玉の中から段幕が現れる!


 そこに書かれた文字は――ハ・ズ・レ。

 ご丁寧にハートマーク付き。


 一瞬、あまりのことに脳みそが理解するのを拒んでいた。

 それでも徐々にその意味が浸透し――


 一気に襲って来た虚無感に、思いっきりその場に崩れ落ちたのだった。











 ――おまけ2――ソラについて――

 

 四大魔宮が1つ【ブルードラの天空塔】の核――の人格。

 写し身を習得しており、塔の中で写し身を出す際には人魚体を好んで出している。

 もう1つの形状――人間体は街に遊びに行く時のみ使用。

 

 お菓子作りをメインに料理全般が趣味。

 出来上がる料理は全て絶品なのだが、何故か調理途中に必ず何か器具が通常有り得ない壊れ方をする。


 最上階のくす玉を筆頭に、冒険者たちをおちょくる仕掛けをつくるのも、隠れていないが隠した趣味となっていたりする――


 






やっつけ感、中途半端なところまでしか書いていませんが、取り敢えず世界感が少しは分かればいいかな~といった程度で書きました。


それぞれの魔宮については考えていますので、ご希望があれば――もしくは気がのったら書き上げたいと思います。

リクとリンの正体(笑)――わかりきっているかと思いますが、その時にはキチンと公開したいと思います。


現在タマ~の方も書いている最中ですので、おそらく次の更新はそちらになるかと。

では御付き合いいただき、ありがとうございました。

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