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君のいる風景

process

作者: 蒲公英

「こんばんは。」

駅で声をかけてきたのは知ってるような知らないような顔の、スーツ姿の男の子。

もしかしたら、どこかで会ったのを私が忘れてるのかしら。

ご近所だったり取引先だったりすると困るので、とりあえず返事をする。

「こんばんは。」

そのまま無難に行き過ぎようと愛想笑いもしたのに、彼は隣を歩いてくる。

どこ?どこで会った人?

記憶を一生懸命に探るけど、まったくわからない。


「夜、お会いすることは珍しいですよね。」

いや、私はあなたのことを覚えてないし、人違いじゃない?って言っていいのかしら。

「はぁ。」

不得要領の私の表情に、彼はやっと気がついたらしい。

「朝、7時53分の電車に、2両目の2番目のドアに乗ってますよね。」

「はい、そうですけど?」

彼は少し苦く笑って言った。

「俺、毎日あなたと同じところから乗ってるんです。」


あ、そうか、なるほど道理で知ってるような知らないような顔。

「よく顔なんて覚えてますね。」

呆れたように言葉に出てしまったので、彼はすこし赤くなった。


「前から、声かけたいなーなんて思ってたんですけど、会うのは朝だし。」

照れくさそうな顔が可愛らしいけど、きっと年下。

「とりあえず今、お茶に誘いたいんですけど、お時間どうですか。」

礼儀正しい誘いの言葉が来たので、お茶だけならとOKした。

男の子って表現がぴったりな彼は、まだ学生でも通じるほどの童顔で

きっとスーツよりもジーンズのほうが似合う。


駅前のスターバックスで、軽く自己紹介をしあった。

「つきあってる人がいないんなら、今度はメシ誘っていいですか。」

可愛い顔でニコニコしながら言うものだから、ちょっと断わりにくい。

「年下の子に誘われると、迷うなぁ。」

そんな風に返したら、彼はちょっと驚いた顔になった。

「俺、いくつに見えてます?」


私よりふたつ若い年齢を言ったら、彼は唇を尖らせて言った。

「あのさ、俺、童顔だけど君より上だと思う。」

あなたから君に変わったのは、不愉快だったから?

年齢を教えあったら、私よりみっつも上だった。

「きゃー、ごめんなさい!」

慌てる私に、彼は笑顔になって言った。


「これから、知り合いになっていきたいんだけど、どう?」

お読みいただき、ありがとうございました。

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