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最強勇者、最弱になったので逃亡する  作者: 心我 湧立


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3/11

勇者、なんか上手くいく

 普通に上手くいった。


 当然のように巡回してる兵士とか居て終わったと思ったけど、夜中歩く奴なんて珍しく無いのか、よっ、と軽やかな挨拶をされ、すれ違いざまに肩トントン叩かれた。


 門番からは荷物の確認をされたが、背中に背負ったリュックには旅用品のみ、聖剣は模造品(パチモン)と騙せた。


 ……いや、まぁ、聖剣が喋るってのは、俺が勇者時代に広まったし、逆に言えば、喋ってない聖剣は、模造品だと判断してもおかしくない……のか?



『………オレサマ、王宮の警備がこんなに心配になった日は無いぜ』


「ああ、俺もだ」


 さっきまで黙っていたセイの声に同意する。


 そんなこんなで、何の障害一つなく、普通に王城から出れてしまった。


 王宮を後にして、まだやってる酒場の隅で夜を明かす。


「何だお前、髪白で染めてんのか!?」


「女かよ、ちんちくりんが!!」


 ぎゃはぎゃはと笑う酔っ払いに頭をがしがし撫でられ叩かれつつ、水を飲む。


 髪色は染められる。酒場にいる奴等はちょっと濃い色で上から染めてるらしい。お気に入りの髪染めとか教えてくれた。ちなみに自分を弱く見せたい人は淡い色で染めるとか……特に女性に多いらしい。


 ついでとばかりに、『勇者』について尋ねると、酒場の奴等は口々におっかないと言い出した。


 『勇者』は黒髪の威圧感のある大男だ、黒髪もだがそれ以上に黒いオーラが滲むようだ、と。


 なるほど、そう言えば、服の採寸をした人が驚いていたっけ? あの吃驚した顔は、威圧感のせいで実際身長以上に感じていたのか。


 仲間達が、お前身長小さいなとかしみじみ言ってたのも、そういうことだったのか。


 変なところで納得した。俺が勇者とバレる心配は無さそうだ。正直なところ、巡回騎士と門番に顔面スルーされたのが若干ショックだったが、そういう理由か。


「ぎゃはは、何だお前、王都は初めてかよ!冒険者じゃねぇよな?」


 髪を見られて断定される。冒険者にも白髪は居ないらしい。


「俺は旅芸人さ、この道一本って芸やってんだぜ?」


「マジで!?なんかやってくれよ!」


「良いぜ!じゃーん!」


「うぉっ!?聖剣か?聖剣かよ!?」


「すっげぇ!!どこで売ってんだ!?」


「売ってないさ、コレ、本物だぜ?」


「んなわけないだろ、はははっ!」


「ははは、俺は腹話術者なんだ、知ってるか腹話術、今からこの聖剣と、小粋な勇者トークしてやるぜ、なぁ、聖剣」


『……おうよ!オレサマは聖剣だぜ!』


「「ぎゃはははははは!!」」


 酔っ払いは、とりあえず笑いの沸点が激低らしい。ついでにやった小粋な勇者トークにより、酒場のマスターも腹抱えて笑ったため金は払わなくて良くなった、やったぜ!

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