勇者、なんか上手くいく
普通に上手くいった。
当然のように巡回してる兵士とか居て終わったと思ったけど、夜中歩く奴なんて珍しく無いのか、よっ、と軽やかな挨拶をされ、すれ違いざまに肩トントン叩かれた。
門番からは荷物の確認をされたが、背中に背負ったリュックには旅用品のみ、聖剣は模造品と騙せた。
……いや、まぁ、聖剣が喋るってのは、俺が勇者時代に広まったし、逆に言えば、喋ってない聖剣は、模造品だと判断してもおかしくない……のか?
『………オレサマ、王宮の警備がこんなに心配になった日は無いぜ』
「ああ、俺もだ」
さっきまで黙っていたセイの声に同意する。
そんなこんなで、何の障害一つなく、普通に王城から出れてしまった。
王宮を後にして、まだやってる酒場の隅で夜を明かす。
「何だお前、髪白で染めてんのか!?」
「女かよ、ちんちくりんが!!」
ぎゃはぎゃはと笑う酔っ払いに頭をがしがし撫でられ叩かれつつ、水を飲む。
髪色は染められる。酒場にいる奴等はちょっと濃い色で上から染めてるらしい。お気に入りの髪染めとか教えてくれた。ちなみに自分を弱く見せたい人は淡い色で染めるとか……特に女性に多いらしい。
ついでとばかりに、『勇者』について尋ねると、酒場の奴等は口々におっかないと言い出した。
『勇者』は黒髪の威圧感のある大男だ、黒髪もだがそれ以上に黒いオーラが滲むようだ、と。
なるほど、そう言えば、服の採寸をした人が驚いていたっけ? あの吃驚した顔は、威圧感のせいで実際身長以上に感じていたのか。
仲間達が、お前身長小さいなとかしみじみ言ってたのも、そういうことだったのか。
変なところで納得した。俺が勇者とバレる心配は無さそうだ。正直なところ、巡回騎士と門番に顔面スルーされたのが若干ショックだったが、そういう理由か。
「ぎゃはは、何だお前、王都は初めてかよ!冒険者じゃねぇよな?」
髪を見られて断定される。冒険者にも白髪は居ないらしい。
「俺は旅芸人さ、この道一本って芸やってんだぜ?」
「マジで!?なんかやってくれよ!」
「良いぜ!じゃーん!」
「うぉっ!?聖剣か?聖剣かよ!?」
「すっげぇ!!どこで売ってんだ!?」
「売ってないさ、コレ、本物だぜ?」
「んなわけないだろ、はははっ!」
「ははは、俺は腹話術者なんだ、知ってるか腹話術、今からこの聖剣と、小粋な勇者トークしてやるぜ、なぁ、聖剣」
『……おうよ!オレサマは聖剣だぜ!』
「「ぎゃはははははは!!」」
酔っ払いは、とりあえず笑いの沸点が激低らしい。ついでにやった小粋な勇者トークにより、酒場のマスターも腹抱えて笑ったため金は払わなくて良くなった、やったぜ!




