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戦地を駆ける奴隷

「はぁ...はぁ...」


あちこちで耳を破裂させるような、雷のごとく重く身体を恐怖で震わせる爆発音が轟く。

体力も既に底を尽きて、走る度肺が痛む。

足が何度ももつれて、足は傷だらけ。

走り続けて、酸素を求める度真っ白な息が吐かれ皮膚は変色し、凍傷に見舞われる。

木々の間を走り抜ける、彼の周りは一面に広がる雪の銀世界だった。

深さも分からないほど降り積もった雪をもう感覚のない足で走り続ける。

まれに、見えない程度に浅く露出した木枝や小石が素足に刺さって雪に血の足跡を残してしまう。

その度に血が止まるまでその場で停滞し、痕跡を削除してからまた走り始める。

痕跡を残してしまっては、奴らに見つかってしまうから。

奴らは血に敏感だ。犬のように嗅覚が鋭く、すぐさま血の匂いをかぎわけて襲ってくる。


「!?っおぇ...!」


生憎、この山はあちこちに死体の山が出来ている。おかげで血が出ても匂いをカモフラージュできる。

既に戦場の跡地となった山々に残るのは人が手に付けられないほどの腐食臭と、吐き気を催す血の匂いだけ。

その死体の山を踏み分け、漏れ出た血の匂いに自分の血の匂いをかき消させながら森を進む。


(くっそ!?なんで、なんでこんなことになったんだよ!?)


戦争が始まって、約二年。

戦況は常に劣勢で、我が人間国『カルミア王国』は傲慢な王の策略により隣国の魔法吸血鬼大国『ヴェルヘラッド王国』を侵略する戦に強制的に参加させられた。

満14歳以上50歳未満を兵士とし、国民から重税を搾り取ると軍事費用に当てて武力を強化。

集められた国民達は過酷な場所での強制徴兵を一年させられた後、武器を持たされ戦場に放り出される。

人権も、自由もそこには無かった。

俺は妹がひとりと父さんと母さんの四人家族でのんびりと田舎で暮らしていた。平和で、のびのびと学校に行って。

ただ、ある日国の偉いさんが家に来たと思えば徴兵命令の召集。

父親は生まれつき身体が病弱で対象にはならなかったのがせめてもの救いと言えるだろう。

そして苦しく、血を吐くように努力させられた徴兵の末行き着いた戦場で見たのは戦いでもなんでもない、ただの蹂躙。

異形国を自国は舐めていたんだ。人間は、何も持たない。

ただ熔鉄して作られた火薬を放つだけのおもちゃを装備して、敵兵の戦果に加わりに行っているだけだ。

相手は魔法と呼ばれる、人智を超えた力を当然のごとく操りいとも簡単に人をひねり潰す。

共に苦楽を乗り越えた仲間も、横を振り向けば肉片と化していた。


(逃げなければ...殺される...)


心の底から迫る、死への恐怖。

生存本能が、彼の足を逃避へと突き動かす。

降り注ぐ異能の爆発の雨を避けながら、死に物狂いで逃げて、どれだけ傷が増えようと、腕がちぎれそうな程に深い傷を負っても足をとめなかった。

どこまで逃げても聞こえる爆発音に、恐怖を全身にまとって走り続けた。


(これなら、森をひとまず抜けられそ———)


血なまぐさく死体に埋もれた地獄をようやく抜けられそうになった、完全に警戒を解いたその時だった。


「んなっ!?」


もう森の出口は目の前というところで、木の影からのっそりと人影が出てくる。

咄嗟に訓練通りの手順で銃を取り出そうとするが、どこかもう覚えてもいない昔に走るのに邪魔だからと捨てたのだろう、手は空を切り万策尽きる。


(くそっ...ここまでかよ。)


両手を挙げて、降伏する。

運良くここで殺されなくとも、捕虜になって拷問を受けてそのまま処刑コースだろう。

まぁいくら拷問をしたところで俺たち低階級の奴隷はまともな情報すら持たされていない。

この戦争の目的も、仲間から聞いただけで国王から告げられた訳でもない。

ただ、従い戦う。

これが奴隷に選ばれた者の道。


やがて、人影がゆっくりと姿を現す。

しかし、その影はパタリと力なくすぐその場に倒れてしまった。

死んだフリ?誘っている?

警戒をとかず、強めゆっくりと倒れこんだ人影に近寄る。


「....!女の子...?」


雪に負けない銀髪、まだ幼く小さい身体。齢12歳程度の少女が、そこには倒れていた。


「お、おい。大丈夫か!目を覚ませ!こんなとこで意識飛ばしたら死んじまうぞ!?くっそ、外傷は...出血多量...貧血か。とにかく治療を—————」


瞬間、首元に悲鳴をあげるほどの鋭く冷たい激痛が走る。

と同時に倒れた少女に押し倒されるように雪に投げ出され、身動きが取れなくなってしまった。


「っああ!ああああああああぁぁぁ!!!」


何とか身を捩り脱出を試みるも、恐ろしいほどの力で抑え込まれて身体に力が入らない。

長い逃走の末、疲労したからだに出血で歪む視界。激しい首元の痛み。

気が飛びそうな苦しみに悶え苦しみながらも、何とか淵で耐え続ける。


「くっ.....そ....」


しかし、とうとう限界が来たのかやがて首元の痛みも感じなくなり、ゆっくりと視界は銀世界の闇に包まれて行った。


初めまして。初めて挑戦するジャンルですので、お見苦しいところを多々お見せしますがどうか応援してくださるとありがたいです。

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