004-養子縁組
52年前、アディブ人は突然地球にやって来た。
その時代は、世界各地で紛争が起きていて、僕の住んでいる日本も例外ではなかった。
でも、アディブ人は、やって来るなり紛争を鎮めることに注力してくれた。
おまけに、世界各国で起きていた貧困、飢餓、資源問題をすべて解決してしまった。
そのうえで、移住したいなどと言われたら、地球側も断ることも出来ず、一応隔離という形で地球に住んでいる。
「.......まさか、自分がなるとは思いませんでした」
僕は何かの肉を手掴みで食べる。
レイシェさんも手で食べているので、食器の概念はあいまいなのかもしれない。
「.........」
料理はとても美味しい。
ただ、何故かは分からないけれど、肉以外の味がすごく薄く感じる。
これも、この体になった影響なのかな?
その事をレイシェさんに伝えると、レイシェさんは不思議そうな顔をした。
「.....変ねぇ、マルセア肉に異常はないはず......」
「マルセア肉?」
僕は咄嗟に聞いてしまう。
「ええ、安心して。家畜肉よ」
「そうですか.....」
「アナタは多分、菜食ではないのね、肉食タイプだからこそ、肉以外の味に疎いのかもしれないわ」
「そういう....ものですか?」
「ええ、アディブ人にも種類が居るのよ」
「.......」
僕は、改めて自分の身に起こったことを認識した。
食事すらも、以前のままではいられないのだ。
「.......ボクは、元に戻れるんですか?」
「....無理ね、前例がないわ...」
ふと聞いた、その答えに僕は一瞬、呼吸が止まった。
「ぜ、前例....が、ない?」
「ええ、全ての生物はアタシ達の下位互換でしかないもの。元に戻るのを望む生物なんて、そうそう居ないわ」
「........でも、ボクは戻りたいです」
「....まあ、いつか戻れるチャンスがあるかもしれないわ」
レイシェさんは肉を丸呑みすると、四つの目でボクを見てきた。
「な、何ですか?」
「アナタ、身寄りはあるのかしら?」
「.....な、ないですが.....」
「だったら、アナタに良い提案があるんだけど、頷いてくれるかしら?」
レイシェさんが何を言うのか、僕は緊張の面持ちで待っていた。
「アナタ、アタシの養子にならない?」
「よ、養子.....?」
意外な提案に、僕は一瞬固まる。
それは、願ってもない提案だ。
僕は、何故か日本語も喋れないし、先ほど言った通り身寄りもない。
でも......レイシェさんは、何の利があって、僕にその提案をするんだろう?
「でもっ....」
「ええ、いきなりこんな提案をして、ごめんなさい」
レイシェさんは、困惑する僕に、首を横に振って言った。
「とりあえずは、アナタの身分を保証してあげるから、その身体に慣れなさい」
「.......分かり、ました」
僕はとりあえず、その提案に頷いたのであった。
「今日はもう遅いし.......そうね、そこの長椅子で寝ていいわ。アタシ達がどこでも寝られることを体感してみるといいと思うわよ」
「はい」
レイシェさんの好意に甘えて、僕は寝床を借りることにしたのだった。
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