036-温泉旅行4
『ロビーで待っています』というカスミのメッセージに従い、僕らはロビーへと降りた。
「――――――」
「うん」
「――――?」
「――――」
「――――――」
クジェレンに、『宗教上の問題で食べられないモノはありますか?』と出る。
僕は一応、二人に問う。
「僕らって何か食べられないものってあるんですか?」
「ないぜ」
「...まぁ、同族はそんなに食いたいとは思わねぇな」
ないようだ。
僕はその質問に首を振った。
「―――――――――」
「―――、――――――」
「――――――」
夕食会場の前で、家族と一緒に僕も夕食券を出した。
すぐに手続きは終わり、僕たちは家族と一緒に席に案内される。
「ボクら、見られてますね」
「当たり前ではあるんだけどな!」
僕らが入ってきた瞬間、入り口の方を向いていたお客さんたちは、皆それぞれの反応を見せた。
子供は泣き出すし、ちょっと申し訳ない気持ちになる。
「あそこに座ればいいんだなっ」
「そうです」
僕らはカスミの家族と一緒の席に案内される。
椅子には多分座れないので、片付けておく。
「......これからどうするんだよ?」
「ちょっと待ってください」
僕はカスミの方を見る、
カスミははっとしたような顔で、こっちを見た。
直ぐにスマホを取り出し、操作する。
『私たちは順番に料理を取りに行くので、あなたたちもどうぞ自由に行ってください』
『あ、ルールは分かりますか?』
クジェレンに来たメッセージに、僕は頷く。
「あそこに人間が集まってるのが見えますか?」
「ああ、見えるな」
「お皿に料理を好きなだけ取って、席で食べるんです」
「へぇ....やっぱり面白いな」
とりあえず、ジガスさんとロームさん、英治さんとカスミのお母さんを先に行かせ、僕とカスミはその場に残る。
といっても、会話はほとんどないけど。
『アディブ人の星にも、こういうモノはあるんですか?』
「.......」
首を横に振る。
僕はアディブ星に行ったことはないし....
『どうして人間の文化に詳しいんですか?』
『あ、ごめんなさい』
僕がYESかNOかで答えられない質問が来たので、つい戸惑う。
すぐにカスミは手前の質問を消した。
『そういえば、聞きたいことがあります』
「......」
『どうして』
次の質問が来る前に、みんなが帰ってきた。
人間組が普通なのに対して、ジガスさんとロームさん達は、プレートの上にあるのは肉ばっかりだ。
「ジガスさん」
「......いや、よぉ.....オレらは肉の方が好きだしよ....」
アディブ人は野菜や肉に拘らなくてもいいので、選択としては正しいんだけど...
ちょっと引くものがある。
「じゃあ、ボクも行ってきます」
「おう」
僕はカスミと一緒に、バイキングの列に並ぶ。
二人に申し訳が立たないけれど、いざ目にしてみると...やっぱり肉の方が魅力的に見えてしまう。
野菜をなるべく避けつつ、肉や刺身を皿に盛り、ドリンクバーでコーラを注いで席に戻る。
席に戻って、カスミのプレートを見ると、信じられないほどにバランスが良くて、僕は申し訳ない気持ちになる。
「じゃ、食おうぜ」
「ええ」
僕らはすでに食事を始めていたみんなに混じって、食事に手をつける。
若干の物足りなさはあったけれど、レイシェさんに貰った錠剤を食べたら治まった。
結局、僕も二人も、プレートを何枚も積み上げてしまい、スタッフさんとカスミたちを呆れさせた。
「食べ過ぎましたね」
「ああ.....でもよ、俺たちはこの味、気に入ったぜ」
僕は先程食べたものが、全くお腹に溜まらないことに驚いていた。
でも、食べたっていう思い出が大事だと思い返す。
そのせいで、忘れていた。
――――カスミが僕に、なんて送ろうとしたのかを。
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