033-温泉旅行1
「わぁ.....」
駅の改札を出ると、まず真っ先に湯畑が目に入った。
そして、遅れて鼻腔を硫黄の香りが擽る。
「ここが温泉って奴か! なぁクルス、あのデカイのに入ってもいいのか!?」
「火傷しますよ....ってそうか、ボクたちなら大丈夫ですね」
「じゃあいいんだな!?」
「....人間の迷惑になりますから、やめておきましょう」
「「おう!」」
何とか事件になるのを防ぐことができた僕は、周囲を見渡す。
時間が正しければ、もうカスミ達はロータリーで待ってていてくれる筈だ。
「クルス、あっちの生物はなんだ?」
「あれは...あー、なんて言ったらいいんでしょうか」
ロームさんが指さしたのは、所謂地方のPRキャラクターである着ぐるみだった。
「俺たちと同じ異星人なのか?」
「着ぐるみですよ...人間はそういう文化があるんです」
「じゃ会いに行こうぜ!」
「まずは合流してからにしませんか?」
「...ああ、分かった!」
こんな感じのやり取りを経て、僕たちはバスロータリーへと向かった。
温泉地だけあって、人の数は夥しい程に多い。
世界が平和になってからは、いろんな人種がこの国に訪れているから、目にする人種も年齢も様々だ。
「お、合流するってのは民間人とだったか!」
「偶然知り合ったんです」
「いいじゃねえか」
二人に絡まれつつ、僕はカスミの元へ向かう。
流石にアディブ人三人は目立つので、カスミはすでに気づいていたようで僕に駆け寄ってきた。
「ど、どうも...」
通じないだろうけれど、彼女の家族にも一応挨拶はしておく。
カスミの家族は、僕も小さい頃に何回か会った事があったけれど、その知人とも言えるような人に怯えられるのは慣れない。
でも、流石はカスミの家族だけあって、何をしてくるかも分からない僕らに挨拶をしてくれた。
「移動するのか?」
「どうもそうみたいです」
「じゃあよ、俺たちは観光してくるから、後からお前を追うってのはどうだ?」
ジガスさんはそう提案してくるが、この二人だとストッパーがいないので、何が起こるかわからない。
「...明日にしましょう、ボク達は招かれてるんですから、迷惑をかけないように動くべきです」
「それもそうだな...」
意外にもあっさり二人は引いてくれた。
ボクはカスミの家族達に向き直り、頭を下げた。
「――――――――、――――――――?」
「――――――」
「――――――」
しばらく、カスミとその父母が会話する雑音が耳を打つ。
カスミは僕の手をとって、恐らくカスミの父である人を先頭に宿への移動を始めた。
宿は、予想通り大型の大衆旅館だった。
けど、それが悪いわけではなくて、ロビーは綺麗で落ち着いた空間だった。
「へぇ、ニンゲンってのはこういうのが好きなんだな」
「わかるような気がするぜ」
二人は口々に感想を言いつつ、周囲を見渡している。
カスミたちがチェックインを済ませている間、僕たちはロビーを見て回ることにした。
でも、椅子に座ることができないのは少しだけ寂しい。
僕らだと、重量的に椅子が壊れてしまう。
エレベーターの重量制限にも引っかかるくらいだしね。
「終わったみたいです、行きましょう」
「おおっ」
チェックインが終わったらしく、三人が僕たちの方へ戻ってくる。
カスミはスマホを操作して、クジェレンにメッセージを送ってきた。
『五人部屋はもういっぱいだったので、別々のお部屋を取りました』
僕はカスミからカードキーを受け取った。
三人と三人で部屋を分けるらしい。
「僕らは階段で移動しましょう」
「ああ」
エレベーターは使えないので、僕らは階段で移動する。
すれ違った人たちがギョッとして道を開けるのが、少しだけ申し訳なく感じる。
「ここですね」
「どうやって開けるんだ?」
部屋の前にたどり着いた僕は、カードキーを使って鍵を開ける。
そして、扉を開けて......
「おぉ...」
絶景を見た。
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