030-死闘のすえに
「大丈夫か!?」
「...はい!
僕は駆け寄ってきたロームさんに抱きつかれる。
少し戸惑ったけれど、僕はその体をしっかりと抱きしめた。
「民間人と一緒だったんだな! 道理で変な場所に逃げ込むと思ったぜ」
「ええ、でも....助けに来てくれてありがとうございます」
「.....ああ、当然の事だぜ」
僕とロームさんはハイタッチをして、ジガスさんの方に向き直る。
「ぐおおお......てめえ、中々力が強いじゃねえの」
「貴様.....クソ、離せ!」
ロームさんがジガスさんの抑えているアディブ人へと襲い掛かり、羽交い絞めにする。
「民間の器物損壊に、街中での決闘騒ぎ! それに民間人への暴行! てめえはもうおしまいなんだよ!!」
「大人しく連行されろ!」
僕には圧倒的な強さを誇ったあのアディブ人も、二人の戦闘特化のスタイルの前では押し敗けて、動けなくされていた。
そして、ジガスさんがとあるものを取り出す。
手錠。
「大人しくしやがれ!」
あれは僕も見たことがある。
というか、実際に嵌められた事もある。
あれを付けられると、意識はあるのに身体が動かせなくなる。
「黙れっ、くそがああああああ!!」
直後、アディブ人が二人を振り切って上昇する。
まだ空気が残ってたんだ。
...いや、脱出のために残しておいたのか?
「坊主、やっちまえ!」
「はいっ!」
僕に向かってあるものが飛んでくる。
それは、手錠だった。
「ボクにできますかっ!?」
「逃げられる前にやれ!」
「......はい!」
初任務なのに、こんな重大な役目を任されるとは思わなかった。
でも、逃がすわけにはいかない。
「――――!」
「うん、頑張るよ!」
カスミの声を聞いて、僕は即座に振り返る。
僕は空を飛ぶ能力は持ってないし、跳躍力もそこまでじゃない。
でも、この建物を利用すればより高く昇れる。
上昇中のあいつに追いつける。
「っ!」
手足を使って、建物を垂直に登る。
次の掴まる場所を探しながら、昇って、昇って...
「見えた!」
上昇中のアディブ人に、僕は真上から飛びつく。
「離せ!」
「嫌だねっ!」
僕はめちゃくちゃに暴れ回るアディブ人の右腕を捉え、そこに手錠を噛ませた。
「劣等種に手を出しただけで、何故そんなに必死になる!」
「知らないよ、でもボクは...何があろうとお前を許さない!」
そして、手錠が金属音を立ててロックされる。
「グキ......動けな...」
「これで...終わりだっ!」
動けなくなった彼の手を取り、もう片方にも手錠を嵌めた。
推進力が完全に失われ、僕とアディブ人の彼は落下していく。
「マル...に、同情す......な、あいつ.........」
「?」
落ちていくとき、アディブ人が何か叫んでいるのが聞こえた。
でもそれは、風の音にかき消されてしまった。
僕は空を飛べないので、そのまま地上まで一気に落ちる。
「っ、はぁ!」
高所から落ちたけれど、痛みは特にない。
駆け寄ってきたジガスさんが、肩を掴んで僕を立たせてくれた。
「大手柄だぜ、クルス!」
「そ、そうですか?」
「あいつ、自分で罪状を重ねたからな。それをクルスが捕まえたとあっちゃ、大手柄も当然だな!」
なんだか悪いことをしたような気分になったけれど、それでも僕は目的を果たせた。
「(カスミ...)」
僕は、視線に気づいて微笑んでくれたカスミに、笑いかけたのであった。
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