003-原因究明
僕が連れて行かれたのは、先程の部屋よりずっと広い謎の部屋だった。
いや、よく見るとあちこちにクッションのようなものがあって、休憩できるスペースだとわかる。
「ここは...........」
「レイシェ様、お連れしました!」
「我々は外で待機しております!」
「あっ、待っ......」
止める間もなく、二体は外に出て行ってしまった。
室内には僕一人が残される。
「どうすれば.......」
「アナタが、不法移民の疑いがあるフリエルね」
「ふりえる?」
「どこにも所属していないアディブ人の事よ、何にも知らないのね?」
「あ、あの!」
僕はレイシェと呼ばれていたアディブ人に縋りついて、言った。
「ボ、ボク、本当は人間なんです!」
「ニンゲン? そう、擬態しているのかしら?」
「いえ、気が付いたらこの姿になってて......」
「そう.....いいわ、座りなさい」
レイシェさんは、僕に椅子をすすめた。
僕はちょっと遠慮しつつ、その席に座った。
「アナタはやっぱり、何も知らないのね?」
「な、何がですか.....?」
「その椅子は、ニンゲン用なのよ。アタシ達は、殆ど疲弊しないから立ったままでも休めるわ」
「じゃあ.......」
「ええ、アナタの話は信じるに値する」
どうやら、何とか信じてもらえそうだ。
「アナタは多分、”生殖”されたのね」
「生殖?」
「アタシ達は、両性具有だけれど.....」
僕は、ふと自分の大きな胸元を見る。
股間にも、上から何かが覆っているだけで「あれ」の気配はある。
アディブ人は皆そうだから、特に驚かなかったけれど.....次の一言で、僕は驚きに包まれた。
「生殖能力はないのよね」
「えっ? じゃあ......」
「どうやって増えるか、でしょ?」
「はい」
「簡単よ、主族って呼ばれてる、ほんの一握りの血統を持つ一族の系譜だけが、同族を増やすことができる」
「ボクも.....?」
「そうよ、主族は、普通に子を成すこともできるし、他の生物を書き換えて同族にすることもできる。アナタは多分、それね.....ただ、ペスル人のアディブ化はまだ例が少ないわね....」
「そうなんですか?」
「そうよ」
レイシェさんは、一瞬思案顔になった。
だがすぐに、元の表情に...戻った。
表情が何となく読めるのも、何でかわからないけど。
「アナタに聞きたいのはそれね、主族は基本的に本星から出てこないのに、アナタは生殖によってアタシ達と同じになった。主族がこの星に来ていることになるわ.......姿を覚えていないかしら?」
「すいません......暗闇で分からなかったです」
僕は正直に答える。
あの時、ナニカを貪っていた者の顔は、分からなかった。
「.......いいわ、信じる。アナタに嘘を吐く理由がない」
レイシェさんは、頷いた。
こういう仕草は、地球人と同じなのだなと僕は思った。
「これからの話をしましょ、アナタ....お腹は減ってるかしら?」
「お腹......そうだ、チキン!」
コンビニでチキンを買おうとしたのを思い出した。
だけど、財布もなくしてしまったし......
「減ってるようね、ローム、ジガス! ご飯を持ってきなさい!」
「「へ~い」」
廊下の方からそんな声がして、足音が去っていく。
「ぼ、ボク....お金持ってないんです」
「大丈夫よ、アタシの奢りにしてあげるわ」
「はい......」
なんだか悪いことをしている気分だ。
誰かに奢ってもらう事なんてなかったから。
「レイシェ様ぁ、持ってきました~!」
「いいわ、机を出すから並べなさい!」
「へ~い!」
レイシェさんがボタンを押すと、壁から机がスライドして現れた。
そこに、箱に入った料理が並べられていく。
神妙な気持ちのまま、食事が始まった。
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