028-立体交差
ハルカを連れたまま、僕は屋根を飛び移りつつ移動する。
ほんとは地上に降りた方が早いんだけど、あのアディブ人は僕なんかよりずっと身体能力は上だ。
すぐに追いつかれてしまう。
「諦めたらどうだ?」
「嫌だね」
時折交差するタイミングで、アディブ人が話しかけてくる。
僕はそれにはっきりノーと答える。
絶対に人間に戻ってみせる、それまでは絶対に死ぬなんて、そんなのは...
「嫌だ!」
僕はビルの合間を壁蹴りで登る。
そして、誰かの家の屋上に登った。
手すりを掴んだ時に、つい曲げてしまったので、咄嗟に元に戻す。
「――――――――!」
「まずいっ!」
その時、ハルカが声を発した。
後ろを振り向くと、空中でターンしたアディブ人が真っ直ぐこっちに突っ込んできていた。
慌てて、屋上から飛び降りる......ふりをして、ベランダを掴んでぶら下がった。
アディブ人がその上を通り過ぎていく。
その際、彼と目が合った。
「...」
突っ込まれては面倒だからと僕はベランダの手摺りから手を離し、一番下まで降りた。
「.........」
「――――、――」
「....わかった」
ハルカを一旦降ろして、直ぐそばの木に隠そうとした。
でも、ハルカは首を横に振って僕の腕にしがみついた。
「........行くよ」
直後、錐揉み回転しながらアディブ人が飛び込んでくる。
慌てて僕は跳び上がって、四階のベランダを踏みつけて更に上へと昇る。
「あわわ......弁償、いくらするんだろう」
どうでもいいことを気にしながら、僕は屋根を伝って移動する。
「.....そういえば」
その時、僕の頭の中にとある考えが過った。
「...何で最初から飛ばなかったんだろう」
逃げるときに飛んでいれば、僕らを振り切れたはずなのに.....
「.....よし」
僕は再びフェイントでアディブ人を振り切り、その身体を観察する。
翼は、前もあったけど....あれで飛べるとは思えない。
足の裏に何かがあるといったこともない。
じゃあ.....背中は?
「.......!」
背が湾曲し、穴が開いている。
口から空気を取り入れて、それで飛んでいるんだ。
....だから、ある程度貯まるまでは飛行できない。
「あの穴が弱点なのか?」
あれを潰したら、上手く飛べなくなるのかもしれない。
そう思いついた僕は、屋上で立ち止まる。
「――――?」
「僕の背中に」
「――...」
僕はハルカを背中に背負い、飛んでくるアディブ人を正面から待ち構えた。
「死ね!」
「断る!」
アディブ人は僕の目の前で着地して、僕のことを突き飛ばそうとしてきた。
僕はその腕をかわして、後ろに回り込む。
そして、背中に肘鉄をかました。
「グウウッ!?」
「.....やった!」
僕は左足に重心を置いて、蹴りをアディブ人に放つ。
一度もやったことのない動きだったのに、なぜか自然に身体が動いた。
「よしっ、逃げよう!」
僕は急いで、指定した建物目指して駆け出した。
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