026-勇気を持って飛び出して
『いやがった! ピンを指すからそいつを追え!』
「はい!!」
数分後。
僕のもとにそんな通信が飛び、少し離れた場所にピンが出現した。
ペイラックを使い、そのピンを追う。
「いた.....」
下を見ると、黄土色の体色のアディブ人が逃げているのが見えた。
その後ろを、緑と白の人影、ジガスさんとロームさんが追っていた。
『坊主、もうすぐ曲がり角だ! 俺たちが曲がるまで目で追っててくれ!』
『都会は臭いが多くて俺らじゃ追えねえ!』
アディブ人は鼻もいいのだけど、都市部は臭いが多すぎて追えないみたいだ。
僕は曲がり角を曲がったアディブ人を追う。
彼はすぐさま路地に入り込み、そのまま右側のビルの非常階段を伝って上まで登る。
「ジガスさん! 上です! 上に逃げ込みました!」
『あ、ああ!』
通信に向かって叫ぶ。
僕も彼の後を追って飛び、その位置を追い続ける。
クジェレンにGPSみたいなのがあれば...と思ったのだけれど、あのアディブ人は改造されたクジェレンを使っていて、位置の正確な捕捉ができないようだ。
『あんまり低空を飛ぶなよ! 飛びつかれたら厄介だぞ!』
「...はい!」
そうだった。
あのアディブ人が僕の存在に気付いていないわけがない。
最悪逃げるためならペイラックに飛びついて来る可能性だってある....いや、実際過去にあったみたいな言い方だった。
『進路上に回り込むぞ! ローム!』
『わかった!』
二人はアディブ人を左右で挟むように動き出す。
僕が上から見張っているので、アディブ人の動きは常に把握できている。
「右に行きました! 七階建てのマンションです!」
『マンション......? あれか!』
『今どこにいる!?』
「ボクからは...見えないです、多分建物内だと思います」
『引き続き道路を見てろ、今向かう!』
僕はペイラックを使い、さらに上まで上昇して周囲を監視する。
「.......どこに....」
その時。
一室から、アディブ人が飛び出した。
「と、飛んでます!」
『飛翔タイプか...!』
腕から翼を広げ、背から何かを噴射して飛んでいる。
「何でいままで飛ばなかったんでしょう....?」
『後で説明する! とりあえずお前はあいつを追え!』
「はい!」
僕はペイラックを少し加速させ、飛翔するアディブ人を追う。
だけど...
「すいません、見失いました...」
数分のチェイスの末に、僕は振り切られた。
『ああ...わかった、すぐに応援を呼ぶ、お前は上空で待機しとけ』
「はい」
初任務だというのに、取り逃してしまった。
肩を落としつつ、僕は連絡を入れて上空で待つことにした。
「......帰ったら大目玉だよね」
レイシェさんが怒るのが一番怖い。
そんな感想を、僕はこっそり抱いていた。
「...ん?」
その時、僕の目が一人の人物を捉えた。
カスミだ。
コンビニ袋を持って、住宅街の広幅の道を歩いている。
僕も別に、家を知っているほど仲がいいわけじゃなかったから、この辺に住んでるというのは初めて知った。
「...」
彼氏とか出来たのかな。
そんな考えが頭を過り、僕は首を振った。
いやいや、まだ可能性はある。
「今度またご飯行こうかな」
もっとも、僕の方から誘うのは難しいんだけどね...
そんなことを思っていると、カスミが建物の陰に入った。
僕は興味を惹かれ、建物の裏側が見えるように上に回り込んだ。
「......え?」
そして、見た。
彼女の前に、僕たちが追っていたアディブ人が立っていたのを。
「知り合いだったのかな....」
そう呟いた瞬間、アディブ人がカスミに向けて腕を振り上げた。
その瞬間、僕はペイラックから飛び出した。
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