025-イナクシス
「えっ?」
レイシェさんに呼ばれた僕は、意外な新任務を伝えられた。
「ジガスさんたちに?」
「そうよ、そろそろ慣れてきたと思うから、パトロール任務に見習いとして参加してもらうわ」
「.....分かりました」
「ペイラックに乗れるようになったから、追跡も可能でしょう。あとは対アディブ人経験だけど、制圧はジガスに任せるからあなたはサポートに徹して頂戴」
「.....はい!」
.....というわけで、僕の所属は無所属から、アディブ人異星治安維持隊「イナクシス」所属になった。
これからはアディブ人の使う通話アプリの「フェイリル」から連絡を待ち、出動する生活になる。
「それで、イナクシスってどんなことをするんですか?」
僕は尋ねる。
業務内容を知らないと、もしかしたら逆らう地球人を殺せとか、そういう怖い任務を任されるかもしれないからだ。
「そうねぇ.......日本の”警察予備隊”と変わらないわよ?」
「警察予備隊って言うと.....新旧どっちですか?」
アディブ人が地球を実質的に統治し始めてから、日本に存在していた「自衛隊」は徐々に規模を縮小して、その前組織である警察予備隊に名前を変えた。
「勿論、新・警察予備隊ね」
「分かりました」
いくらアディブ人によって平和が保たれているとはいえ、アディブ人達は小さな紛争やテロリスト事件には関与しないから、警察ができない救助や戦闘行動を新・警察予備隊は行っている。
「....アディブ人事件のパトロールだけじゃなく、災害救助、難民支援、国防任務....まぁ、いっぱいあるわね」
「随分....地球人に優しいですね」
よくよく考えると、何か変だ。
どうしてアディブ人は、地球人に対価を求めないんだろう?
何か特殊な物資がこの星にあるとも思えないし....
「そうね、あなたに言っておかないといけないわ、それはね....」
レイシェさんが口を開くと同時に、僕のクジェレンが起動した。
「はい!」
フェイリルが開き、ジガスさんが映った。
『坊主、出陣だ! ちょっと遠いが、先週暴行事件を起こしたヤツが見つかった! 制圧して連行するぞ!』
「はい!」
僕は通話を切って、レイシェさんに頭を下げる。
「その話は、また今度ですね」
「....ええ」
レイシェさんは意味深な顔をして、僕を見送ってくれた。
僕は外に出ると、ジガスさん達と合流した。
「どこに行くんですか!?」
「付いてこい! ペイラックに乗るぞ!」
「はい!」
ジガスさんとロームさんは、充電台に置かれていたペイラックに乗り込む。
僕もそれに続き、ペイラックがクジェレンと連動するのを確認した。
「行くぞ!」
「...はい!」
僕は助走をつけ、ペイラックを起動した。
足が地面を離れ、僕は空を飛んでいた。
「うわぁ......」
「坊主、俺の後をついて来いよ!」
「はい!」
僕はペイラックを操作し、ジガスさんの後にピッタリついて飛ぶのであった。
暫く飛ぶと、ジガスさんが高度を下げ始めた。
「坊主は上で待ってろ、地図と実際の風景を比較して俺たちに教えてくれ」
「了解!」
戦力外通告だけど、そっちの方が安心する。
いきなり歳を重ねた強者を制圧しろ、なんて言われたら僕なんてあっという間にやられてしまう。
「じゃ、降下するぜ....頼んだ!」
「はい!」
僕はクジェレンで地図を表示し、空からジガスさん達の姿を目で追った。
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