014-変わってしまった全て
店内に入った僕たちは、まずはエスカレーターまで移動する。
エレベーターは大柄なアディブ人には向かないのだ。
「何階まで行くんですか?」
「坊主は居場所さえ教えてくれたら好きな場所にいていいぞ」
場所を聞くと、自由な答えが返ってきた。
ジガスさん達は何でも物珍しいけど、僕にはそうじゃない事をわかって言っているのだろう。
「じゃあ…四階にいますね」
「了解、俺たちは七階から見て回るから、坊主は暇になったら俺たちのところに来いよ」
「はい」
四階はゲームコーナーだ。
目新しいものといえば、それしかない。
皆と別れて、僕は四階に足を踏み入れた。
「………………」
けれど…まあ、これといって何か変化があるわけじゃない。
ニューチューブやヘイッターでよく見かけるタイトルのゲームが並んでいるだけだ。
「あ、試遊機だ」
今時は体験版を容易にダウンロードできるためか、売り場に試遊機が置かれることは少なくなった。
僕は物珍しい気持ちで歩み寄り、試遊機に手を伸ばした。
「………うーん、三本指じゃ遊べないかな?」
アディブ人の手は指が三本だし、指がとても太い。
あと……握り潰してしまいそうで、僕は試遊機から手を離した。
「――――――?」
その時、隣から声が聞こえた。
視線を動かすと、売り場の入り口あたりで、男の子が母親らしき人に抱きついていた。
僕が怖いのかな。
そう思い、僕は試遊機から離れて棚の影に隠れた。
「――――…」
そうすると、男の子は試遊機に駆け寄って遊び始める。
僕はそれを物陰から眺める。
ふと、母親らしき人と目が合った。
その人は、慌てた様子で僕から目を逸らした。
「......そうだよね」
僕は呟くと、出していた顔を引っ込めた。
一瞬分かり合えるかと思ったけれど、昔の宇宙人の映画と同じだ。
人間はみんな、初めて見るものは怖いんだ。
「いいもんね」
僕は反対側を向いて、ソフトのパッケージを一つ手に取って眺める。
……..それは、子供のころ遊んでいたシリーズの最新版だった。
「......こんなに進んでたんだ」
単調な生活を繰り返していたせいで、周囲が見えていなかったのかもしれない。
いつの間にか、僕の思っていたナンバリングよりも大分進んでいた。
「買ってみようかな」
仕事の後は特にすることもない。
この体は睡眠もほとんど必要ないし、一徹くらいなら........
僕はハードの方に向かって、
「た、高いな......」
五万円くらいした。
持たされているお金は二万円弱だから、到底買えない。
「うーん......」
自分の口座にアクセスできれば今すぐお金を引き出せるけど、襲われた時に持ち物は全部なくしてしまった。
当分はゲーム機を目指してお仕事をするしかないか。
「それにしても.......」
ゲームコーナーなんて今時、行かないな。
インターネットで購入した方が早いし、ハードがあればダウンロードも出来る。
「父さん.....母さん....」
記憶の底に沈んでいた思い出が蘇ってきて、目頭が熱くなる。
僕は目を腕で擦ると、引き続きゲームコーナーを見て回るのだった。
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