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9.目が覚めて、一方そのころ

「ソラ!」

手を伸ばし起き上がる、カーテンレールに囲まれたここは病室のベットだろうか。

「はぁ、やっと起きましたかぁ」

「私たちの休み時間が遅くなってしまいましたぁ」

横を見ると二人の少女がこちらをのぞいていた。一人は髪を右側だけ結び、もう一人は左側だけを結んでいるそっくりな二人だ。

「えっと、君たちは?そしてここは?」

「亡霊は黙ってここで待っていてくださぃ」

「私たちは隊長を呼んできますからぁ」

質問に答えることなく彼女たちは部屋から出て行きバタンと扉が閉じる。

「亡霊って…」

まさかとは思うが空と同じくこの世界のナリタと勘違いしてるんじゃ…

しばらくすると廊下から空と、もう一人、男の声が聞こえてきた、

「………なせ、あいつは一発殴らなけりゃならん」

「だからまず話を聞いてください!待ってください!成田さんはナリタさんじゃないんです!」

聞こえてきた言葉から嫌な予感がした、とりあえず歯を食いしばる準備はしておこう。

ガチャっという音とともに部屋に入って来たのは空、そして俺より少し年下に見える男だった。

「待ってくださいユメウチさん!」

「ナリタ!帰還報告もせずぬけぬけと!」

空の静止を振りほどきユメウチと呼ばれた彼がこちらに近づき腕を振り上げた。

【うわぁー殴られるんだろうな】と思ったがこぶしは飛んでこずそのまま腕を下した。

「別人だ…、もしかしたらナリタの戦死は嘘なんじゃないか…そう信じたかったんだ…」

彼は肩を落としながらつぶやいた。殴られずにほっとしたが何か申し訳ないことをしてしまった気持になる。

「えっと…なんかすみません…」

「な、成田さんは気にしないでください、私の説明が足りなかったのもあるので」

そういうと空はユメウチと呼ばれていた彼のほうを向く。

「だから最初に言ったじゃないですか…この成田さんとあのナリタさんは別人だと…」

空もすこし寂しそうにユメウチに伝える。

「すまない…」

力なく吐き出された言葉で部屋は静寂に包まれる。

そんな空気を見かねてなのか、または空気が読めないだけなのか二人組が声を出した。

「私たちにはナリタはナリタにしかみえないんですがぁ」

「どこがちがうんですかぁ?」

「確かに、私も最初は成田さんが生きていたと勘違いしていました、それを一瞬で見抜くなんて」

双子と空の言う通りだ。最もナリタの近くにいたであろう空が勘違いするほど容姿は似ているらしい。

「確かになんでわかったんですか?」

俺からも疑問を返すとユメウチは申し訳なさそうに言った。

「悪く言うつもりはないがナリタと違って目つきが悪くないというか、全体的にとがっていない印象を受けたからだな、


「だとしたらここにいるナリタさんはぁ」

「何物のナリタさんなのですかぁ?」

空のほうを見ると空もこちらを見ていた、彼、彼女らになら伝えてもいいということなのだろう。

「俺は―」

空に伝えた内容と同じことを彼らにも伝える、異世界から来たことを。


納得半分、疑い半部といった表情だった。空が補足してくれなければ頭のおかしい奴と思われていただろう。そういう意味では最初に出会ったのが空でよかった。

「突拍子もない話ではあるが…」

「わけわからない単語であったりぃ」

「うそついてる様子もないので本当なのでしょうねぇ」

とりあえずは信じてもらえたようだ。

「それで、成田は無効の世界に帰れないで困っているということだな」

「あ、いやー、実はこの世界に居れるのは週に2日の可能性があるんだ…」

「「「「え?」」」」




目が覚めてスマホを確認する。月曜午前7時、既読がついてから丸二日以上は立っているが返事はまだない。せっかくの三連休だが気分は憂鬱だった。いっそのことなかったことにしようかとメッセージを長押しするが送信から24時間がたっており取り消しできなかった。

あの人が先にきっかけを作ったのになぜ私がもやもやしないといけないのかしら。

むくれながらベットに横たわっているとコンコンっとドアをノックする音が聞こえた。

「なに?」

そう一言だけ言いベットから起き上がるとマイシスター、もえが部屋に入ってくる。

「おねーちゃん、今日水族館行こうと思うんだけどおねーちゃんも一緒に行かない?」

急にどこかに行こうというのはもえのいつもの癖だ。

「私は―」

予定があるから、そう言おうと思ったが既読未返信のメッセージを思い出す。

「いえ、たまにはいいわね、行きましょうか」

「やった!じゃあ9時に出発する予定でもいい?」

「私は構わないけど、マイシスター、あなたは2時間で準備できるの?」

「ふ、ふーん!今日はお姉ちゃんとのお出かけだからね!気合い入れてすぐに準備しちゃうよ!」

そう言い残し自分の部屋に戻っていった。

「そんなこと言っていつも遅刻しているのだけど…」

本人には聞こえない心配をこぼしながら自分の用意を始めることにした。


結局もえが服選びに時間がかかってしまい、家を出たのは10時過ぎになっていた。


やって来たのは港の近くにある水族館だ、通常月曜休みだが祝日の今日は営業している。

着いたのは11時、昼前だったが家族連れや友達と来ているグループなどで混雑していた。

「やっぱ祝日だと混んでるね~、こんなこともあろうかと、入場券は前売りで買っておきました~」

じゃーんとチケットをカバンから出す。

「準備がいいわね」

そういう私にマイシスターは「はい、これお姉ちゃんの分」といいチケットを渡してくれた。

「ありがとう」

「うん、じゃあ行こうか!」

そう言うマイシスターに手を引かれ水族館へ入っていった。


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