22.戦闘
――4日後――
ピーっとけたたましいアラームが鳴り響く。
『トゥインクル02!狙われているぞ!』
一瞬レーダーを確認し、後方を目視で確認する。
「くっ!」
そこにはレーダーで表示されていない機影が確かに存在した。
自機と同型のマキナ、正しくは人型機動兵器、防衛省内ではそう呼ばれている。
敵機は目視する一瞬の隙をつきミサイルを発射、すぐさま離脱する。
「クソが!」
敵機からミサイルに意識を移し回避のマニューバをを操縦桿を通じマキナへ叩き込む。
1発目はうまく回避できた、が2発目は回避する直前に爆発、爆炎で視界が塞がる。
「どこ行った!」
レーダーは頼りにならないことはわかっている。
機体を急上昇させ爆炎を抜ける。
「どこだ…」
周囲を見渡すがどこにも機影が見当たらない。
『バカ!真下だ!』
言葉とほぼ同時、先ほどまで自身がいた爆炎の中から敵機が飛び出す。
その手には銃剣、上昇だというのにその速度に対応することはできなかった。
「マジかー」
期待を翻そうとするが間に合わず、銃剣はコックピットに突き刺さった。
電装は消え、コックピットは暗闇となる。
俺は死んだ。
プシューっと言う気密を解く音がしコックピットのハッチが開かれる。
「今日5回目、そして累計50回目の戦死だ、記念日にするといい」
そういうとハッチを開けた男は、ミネラルウォーターを投げてくる。
「夕張さん、手加減してくださいよ、こっちは最近までまともに運動もしていなかった一般人なんですよ」
キャップを開け水を一口飲む、この行為を日常と感じたのか、緊張が解け体にどっと疲れが襲い掛かってくる。
そのせいか立ち上がろうとしたところで少しよろける。
「シミュレーターとはいえ結構疲れるからな、ほら」
そういい夕張は手を差し伸べてくる、ありがたくその手を借りシミュレーターのコックピットから立ち上がり外へ出る。
「スー、ハー、地下とはいえ、コックピット内の空気よりはすっきりしますね」
「空気は同じはずだが...コックピットは圧迫感もあるからな、その解放感もあるんだろう」
手を頭上に上げ、軽く伸びながら夕張さんは言う、その様子はまだ余裕といった雰囲気だった。
「さて、どうする?俺はまだできるが厳しいなら今日はここまでにしとくか?」
「自分は少し休むことにします、彼女たちに夕張さんを譲らないといけないみたいなので」
夕張が後ろを振り向くとないないコンビのウナイ、サナイが待ち構えていた。
「げ、左右コンビ......」
「さて、夕張さん~」
「特訓のお時間ですぅ~」
俺の記憶にはないが、夕張さんはどうやら名古屋港にて彼女らに完敗したらしい。
その結果を受けて弥冨所長が彼女らを教官とし、夕張さんへ特訓させているらしいが...
「さて、記念すべき300連勝目前もくぜんですぅ」
「このまま目指せ1000連勝ですぅ」
「あ、ああぁぁぁ......」
どさっと夕張さんが膝から崩れ落ちる、最初の頃はリベンジだと燃えていたがその時に熱意は今は残っていないようだ。
崩れ落ちた夕張さんの首根っこを摑まえ彼をシミュレーターへ引きずっていく彼女らの様子は悪魔のようだった。
「あ、成田さん~」
「所長が言ってましたがぁ」
「な、何を」
いやな予感がするが聞き返してしまう、有無を言わせないオーラが今の彼女らにはある。
「夕張さんへの訓練が終わってぇ」
「成田さんが操縦になれたらぁ」
「「私たちの次の相手は成田さんらしいですぅ~」」
それではぁ~と気の抜ける声とともに立ち去る彼女らを見つめながら、俺も膝から崩れ落ちた。




