20.東進
ガタン、ガタンと定期的に揺れる。
その揺れは眠りに誘うゆりかごの揺れにも、自身を起こすために誰かが揺らしているようにも感じられる。
その揺れを頼りに何とか意識を取り戻そうとする、今は起きなければいけない、なぜなら―
「天田さん、もえちゃん......」
何とか目を開け状況を確認する、薄暗い室内には向かい合うように椅子が配置され、反対側に座る男の手には小銃が携えられていた。
「起きたか」
頭を上げたのに気付いた男が声をかけてくる。
男は灰色の迷彩服を着ており、あたりを見るとほかにも複数名同様の恰好の男がいた。
「えっと......ここは?」
目の前の異様な光景に自身の心配事が消える。
「思ったよりも取り乱さないんだな」
男はスマホを取り出し、現在地をマップで表示する。
現在地を示す点は道路上を移動しており、今いるこの部屋が車内だということを知る。
そして現在地は
「浜名湖......?」
ちょうどマップ上で通り過ぎたのは浜名湖SA、つまり今いる場所はもともといた名古屋ではなく静岡、浜松ということになる。
「え、ん?なんで?どういうこと?」
覚醒したての脳がようやく回り始め、ようやく自身の置かれる状況の意味不明さに気づく。
「ふ、やっとそれらしい反応が返ってきたな、ようやくお目覚めか?」
目の前の男はふっと笑い話しかけてくる。
「え、ええ、わけわからない状況ということが理解できました」
「そりゃよかったよ、成田くん」
名前を呼ばビクッとする。
なぜ名前を知られている、と一瞬思ったがまあ普通に考えれば免許証でも見たんだろう。
「で、なんで俺は自衛隊に囲まれて高速に乗ってるんですか?」
「まあ詳細はついてから説明があると思うが......」
そういい男はマップを見せていたスマホをしまいながら話し始めた。
「今回の事件で成田夕、お前の存在が厄介な存在に目を付けられたんだよ」
「今回の事件?それに厄介な存在っていうのは...」
「厄介な存在についてはおいおいわかる、今回の事件は名古屋港のことだが...覚えてないのか?」
心配するようにこちらを見てくる、今の自分にとって厄介な組織は自衛隊だろと思っていたがそれよりも優先すべきことを思い出す、名古屋港でのアイヴィーとの戦闘だ。
「あの!天田さんともえちゃん、俺と一緒にいた2人は大丈夫なんですか?!」
男はきょとんとした顔で淡々と伝えてくる。
「回収したのはお前だけだ、ほかには誰もいなかったぞ?」
「えっ」
血の気が引き、意識が遠くなるのを感じる。
守れなかったのか?何もできなかったのか?
力がなかったから...
「おい、大丈夫か!おい!」
飛びかけていた意識を男が引き戻す。
「あ、いえ、大丈夫じゃないです」
「すまん、そこまでだとは思っていなかった」
男が頭を下げる、その様子をきょとんと見ていると男が頭を上げ、続ける。
「今のは質の悪い冗談だった、二人についてもこちらで回収している、今は別車両で手当てを受けているだろう」
説明をすると再度「すまん」と謝りながら頭を下げる。
「ああ、よかった...」
安心からか再び意識が遠のく、再度男が声をかけてくるような気がしたが今度は戻れず意識を手放した。




