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2.夢オチ?それはそれとしてこっちの夢は叶うのか?

ジリリリリというけたたましい音が聞こえる。

―起きろ、起きなければお前の人生は終わるぞ―

そう言わんばかりの気迫に迫る音だった。

もういいよ、俺はこけて頭をぶつけたのが原因で死ぬんだよ。

しかしその音はあきらめが悪かった。

―いいから目を覚ませ、時計を見ろ―

しつこいなぁ、わかったよ。

そう心の中で思い目を開ける。

「見慣れた天井だ」

そこは自分の家の天井だった。首を動かし時計を確認する。

―08:04―

ゾッとし、体が一瞬固まる。

固まった体を無理やり起こし曜日を確認する。

―月曜日―

「クソ!やらかした!」

眠気が一気に飛び心臓の鼓動が速くなる。

月曜日の8時過ぎに起床する、つまりは―

「遅刻ギリギリだ!」

寝巻から急いで仕事着へ着替える。

朝食を食べている暇はなかった。

着替えを終え、身だしなみを整える、家を出たのは8時20分、ぎりぎり間に合う電車には乗れる時間だ。

「危なかった…」

鍵を掛け、少し早歩き気味で最寄り駅へ向かう、職場は地下鉄で1本の場所だ、乗れさえすれば遅刻することはない。

時間に余裕ができると少し冷静になる。

「今朝の夢は何だったんだ?」

そもそも俺が寝たのは金曜日の夜のはずだった、土曜、日曜を丸ごと寝ていたということになる。それに―

「夢にしてはリアルだったな」

夢の中でこけた際、ぶつけた頭を指でなぞる。傷などはないがぶつけた場所がまだかすかに痛む。

とはいえ触手の化け物やロボットが現実にいるとも思えない、つまり。

「めちゃくちゃリアルな夢だったな」

最寄り駅につくと同時に自分の中で夢だと結論付ける。

あんな化け物もロボットも現実にいたらニュースになってるはずだ、だが見たことがない。

「―線右回りが参ります、黄色い線の内側で―」

入線してきた電車に乗る、スマホでロボットや触手の化け物について調べるが、SFなどの創作以外でロボットが実戦投入された、触手の化け物が暴れるというニュースは存在しなかった。

「まあそうだよな」

わかってはいたが夢のない結果にげんなりする。

だがこれで死にそうになったのが夢だったとわかり安心した。

そう―

「死にそうになった時...」

《あーあ、こんなことになるなら玉砕覚悟で告白すればよかったな》

夢の中でつぶやいた言葉を思い出す。

「お出口は左側です、お忘れ物のないようご注意ください」

最寄り駅につき電車を降りる、が足取りは重い。

まさか夢が原因で気づくとは思ってもいなかった。

「何となく顔を合わせずらい...」

こちらが一方的に意識してるだけの話だがやはり気にしてしまう。

「可能な限り平常心、可能な限り平常心...」

ぶつぶつと唱えながら歩いていると会社にたどり着く。

「すぅー、はぁー」

無駄に一息ついてから会社に入る。

出勤の打刻をし自分の席へ向かう、隣の席には先客がいた。

「お、おはよーございまーす」

「おはよう、今日はいつもより少し遅いのね」

少しぎこちなくなったあいさつに返事をしてくれたのは隣の席の天田天、俺が意識してしまっているその人だった。

「恥ずかしながら寝坊してしまって、いやな夢見たんでそれが原因かもですが...」

「そう、仕事も今が大変な時期と聞いてるけど無理はしないようにね、私があなたに言うのもあれだけど」

天田さんは一度過労で倒れている、その時に介抱したのが俺だった。その時からだっただろうか、彼女のことが気になり始めたのは。彼女はしっかりした女性だが、面倒見の良さやかわいいものが好きという性格とのギャップが―

「どうしたの?黙ってこちらを見つめて。」

脳内で好きになった理由を再確認していると、ぼーっとしてしまっていたのかずっと天田さんを見つめてしまっていたらしい。

「あぁ、ごめん別に何でも」

ぐぅ~

空気を読まない音が自分の腹から聞こえた、恥ずかしすぎて死にたい。

「はぁ、しょうがないわね、今回だけよ」

そういうと机の引き出しを開け、中に入っていたカロリーメイトを1箱分けてくれた。

腹の虫が害虫ではなく益虫だと初めて知った、今日は何らかの記念日にするべきじゃないだろうか。

「天田さんありがとう、大切にとっておくよ…」

「いや、とっておかないで食べなさいよ...もうすぐ始業時間なんだから...」

飽きれたという表情をしながら席に向き直る。自分も鞄を置き席に座る。

「ありがとう、いただきます」

改めてお礼を言うと「どうぞ」とだけいい自分の作業を続けていた。

もらったカロリーメイトを箱、袋から出し食べ始める。その片手間にパソコンを立ち上げ日課のニュース確認を行う。

やれ税金が―やれ裏金が―やれ隣国でクーデター未遂が―と、いつも通りのニュースが流れt、いや、クーデターはいつも通りじゃない。

詳細を見ると大統領が自身の支持率低下を挽回するために実施したとあった。

ほへぇーっと他の記事も含めいくつかのニュースを流し読みをしていると気になるニュースがあった。

―重力子による並行世界への転移について―

気になって内容を見るとどうやら架空の粒子である重力子を利用すれば並行世界、簡単に言えば異世界へ行くことができるらしい。細かい理屈はよくわからないがどうやら理論的には可能とのことだった。

「とはいってもなぁ」

記事にも書かれていた通り、そもそも重力子が本当に存在するのかわからないこと、その重力子の特性が理論に一致するかが不明と、机上の空論の上に机上の空論を立てているようだった。ロマンはあるが現実的じゃないなと思い記事を閉じようとする。

「あ、一応どこの発表なのかだけ―」

確認しようとしたタイミングで9時のアラームが鳴り朝礼が始まった。

「今日も一日頑張りましょう」

中身のない話をし、いつもの掛け声で仕事が始まる。とはいえデスクワーカーの特権、就業中にネットサーフィンとい禁忌の手を使い、記事の発表元を確認しようとしたが―

「404エラー?」

先ほどまで見ていた記事がすでに見れなくなっていた。履歴を確認してもこのページは存在しませんとなっている。

見間違いかと思いブラウザ、SNSで少し調べるが似たような記事はなく、SF好きの妄想アカウントが少し引っかかるだけだった。

「見間違い?気のせいだったのか?」

いや、そんなはずないと思い検索を続けようとしたタイミングで

「成田君、ちょっといい?」

「はーい」

上司からの呼び出しを受け検索は一時中断となった。




「疲れた...」

上司から任された一連の仕事を終え一息ついたときにはすでに定時だった。大きなタスクはなかったため何とか定時までに終わることができた。

「今日分のタスクは何とか終わったし、ここまでにしとくか」

パソコンを閉じふぅとため息をつく。

よしと軽く声を出し作業台を後にする。自席と作業台は階が違うためエレベーターで戻ろうとしたが...

「定時即退勤組め...」

定時になり退勤した社員でエレベーターは大盛況だった。

「仕方ない、階段で登るか」

仕事で疲れた体に鞭を打ち階段を上る。

デスクワーカーの宿命、運動不足を感じながら自席のある階へたどり着いた。

自席にたどり着くともう一度一息つく。

終礼もおわり、定時も過ぎているということもあり、周りもちらほら空席があり、帰る準備をしている人も多かった。

「俺も帰る準備するか」

日報に今日実施した作業を羅列する。

今日一日かけた作業たちも文字にすれば数行、十数文字とあっけないものだ。

日報を提出しパソコンをシャットダウン、今日の仕事は終わりだ。

そんな日々を重ね、ようやく週末となった。


今週5度目の退勤時間、席に戻るとペットボトルを開封し水を一口飲む、朝買ったが飲み時を逃したそれはぬるくなっていた。もっとも時期的にキンキンに冷たいものよりはぬるくなっているほうが飲みやすい。

もう一口口に含んだ時、隣の席が動き天田さんが着席した。

「お疲れ様、今日はもう退勤?」

「はい、今週分の手持ちタスクは終わったので」

「そう、最近は比較的早いわね」

彼女はキーボードを叩きながらそうとだけ言い自分の作業に戻っていった。

作業に戻ったのに話しかけるのは悪いなと思い席を立つ。

「それじゃあ、お疲れさまです、お先失礼しまーす」

自席周りのまだ残っている社畜にあいさつし席を離れ

「成田さん、この後なんだけど少しいい?」

ずにもう少しだけ残ることにした。


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