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13.リベンジマッチ

気が付いた時にはイルカショーは終わっていた。

周りにいた人々も館内に戻っていき周りは人が少なくなっていた。

今しかない。

「あの!」

「うん?なに?」

天田さんは微笑みながらこちらを見つめてくる。

「この間は変な言い訳したからちゃんと伝えたくて」

鼓動がうるさくなる、呼吸をしているはずなのに息が苦しくなる。

心臓が、内臓が飛び出そうなほど緊張する。

決心をして息を吸う。

「努力家なところに、家族思いなところに、他の誰も気が付かない点に気が付く配慮に、他にもいろいろあるけど、何よりもあなたの笑顔に―」

バッシャーン!!

音につられ反射的に振り向くとプールが水しぶきを上げていた。シャチが飛んだ程度ではない、水面が爆発したかのような水しぶきだった。

「なんだ?」

「何が起きたの?」

固まってプールを見つめる、天田さんも驚いて動けないようだった。

周りからは映画の撮影?なんかのイベント?などと声が聞こえる。

だが係員や飼育員なども驚いた顔でプールを見つめていた。

直感的にやばいと感じる。

「い、いったん避難しとこうか」

「そうね」

天田さんの手を取りスタンドを後にしようとしたが

「ま、まって」

天田さんは動けずにいた。

「ごめんなさい、足が動かないの」

あまりの衝撃で腰が抜けてしまったらしい。

「大丈夫、待ってるからゆっくりでいいよ」

天田さんが落ち着くまで動けなくなってしまった、プールは水しぶきが落ち着き始め水面が見えるようになってくる。そこにはシャチに巻き付くツタのような触手が見えた。サイズこそ違えどその触手は荒野で、そしてコロニーで襲い掛かって来たものと同じだ。

「アイヴィー!?」

向こうの世界で、異世界で人類を終末まで追い込んだ触手が現実世界で目の目にいる。

なぜ―、問うても答えは返ってこない。今わかるのはただ一つ、逃げなくてはいけない。

「天田さん大丈夫?立てる?」

なるべくせかさないように、するがこちらの焦りが伝わったのか天田さんも少し無理して立ち上がる。

「え、ええ、大丈夫、行きましょうか」

「肩貸すから少しずつ行こう」

少しずつだがプールから離れていく。

「ありがとう、もう大丈夫よ」

ある程度離れたところで天田さんもある程度調子を取り戻したのか自分の足で歩けるようになった。

「それよりさっきの水しぶきは何だったの?」

「説明は難しいんだけど、とにかく危なさそうだったから」

プールにはアイヴィーに絡みつかれ暴れているシャチが再び水しぶきを上げていた。

「そういえばマイシ―、もえがどこに行ったか見ていない?」

先ほどまでは後ろからこちらを見守っていたが姿が見当たらなかった。

「さっきまであの辺にいたはずだけど」

姿を探しているとプールのほうが騒がしくなっていた。

そしてプール方面から何人かが走って逃げてきた。

化け物だ!怪物だ!など、口々に叫びながら逃げている。

嫌な方面で予想が当たってしまった。

「天田さんはゆっくりでいいから出口の方に進んでいて、俺はもえちゃんを探してくる」

「ええ、気を付けてね」

振り向いてプールのほうへ駆け出そうととした時だった。

「あれ、お兄ちゃんお姉ちゃん、これ何の騒ぎ?」

すぐに見つかった。


妹ちゃんとも合流し、出口に向かっていたが、先に走って逃げた人たちが伝えたのか館内はパニックになっていた。係員が落ち着いてと言っても効果がなく、おしくらまんじゅう状態だ。

「こっちも身動きができないか…二人とも大丈夫?」

「私は大丈夫だけど、もえは大丈夫?」

「うん、ちょっと苦しいけど大丈夫だよ」

ゴーン、ゴーンと時折何かを叩く鈍い音が響く中、何とか館外に出たときだった。

べちゃんっという音とともに空からシャチが落ちてきた。

一瞬の静寂の後、辺りは阿鼻叫喚となった、逃げ惑う人、シャチの下から何かを助け出そうとする人、そして。

「う、うそ、こんな」

再びへたり込んでしまう天田さん、そしてこちらに抱き着いてきた妹のもえちゃん。俺も動かなくてはと頭ではわかっているが動けなかった。

落ちてきたシャチを内から食い破るようアイヴィーが触手の先端を出していた。

俺が二人を助けなくては、でもどうやって。

二人はまだ動けないでいる、向こうの世界のようにマキナがあるわけでもない。

「に、にげよう」

二人に声をかけ、右肩を妹ちゃん、左肩を天田さんに貸し少しだけでも遠くに移動しようとした。

「うわ」

だが体力があるわけでもない、少し進んだところで倒れてしまった。

その声に反応してなのか、はたまたただ近くにいたからなのか、アイヴィーはこちらを見ていた。

3度目の対面だ、だがこの場所にアイヴィーに対抗できるものはない、今度こそ終わりだ。

だが今は守らなければいけないものがある、せめて2人だけでも。

意味があるかはわからないが立ち上がり二人の前に立つ。

アイヴィーはこちらの覚悟など気にした様子もなく触手を振るってきた。触手の動きがやたらゆっくりに感じる、そしてドン!という音が聞こえる、初めてアイヴィーに襲われた時、空が救ってくれた砲撃の音だ、これが走馬灯かと思い目を閉じる。せめて二人が生き残れるようにと祈りながら。


バッシャっと顔に生ぬるい液体がかかる、血のような、樹液のような何とも言えない匂いだ。

手で顔をぬぐい目を開ける、目の前には半身を失ったアイヴィー、そして

「成田さん?あれ、なんで成田さんがいるんですか!?」

空が、そしてマキナがそこにいた。


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