第51話 スリープシープ
「平原ですわ!」
「どうした急に」
「ビックリしたよ」
わたくしはベッドの中身の話をルーシーさんに相談した所、平原にいる羊型の魔物、スリープシープがいいと提案された。
なので、わたくしたち3人は揃って平原にきたのだ。
時間はまだ昼前で、これから探すには十分な時間があると思う。
「それではスリープシープを探していきましょう。といっても危険な魔物が出た時は逃げるということでよろしいですか?」
「俺はかまわない」
「美味しそうな魔物だったら僕が狩るよ」
「危ないことは禁止ですわよ?」
「大丈夫。僕より強いのって基本いないから」
「マーレもそんなこと言うんですのね」
基本ぐったりとしているマーレがそんなことを言うなんてと思いつつも、わたくしたちは平原を歩く。
マーレはあくびをしながらのんびりした様子でついてくる。
周囲に魔物はいないようなので、問題ないと思うけど。
「それにしても……魔物は全然いませんわね」
「だな。まぁ……な」
「だねー」
ティエラはマーレをじっと見つめて言い、マーレはぼんやりと言う。
「マーレが何かしてますの?」
わたくしは2人に聞くと、マーレはゆっくりと頷く。
「うん。魔物が来ないようにちょっと圧力出してるだけー。あ、でもスリープシープがいたらちゃんと捕まえるようにするから」
「そんな器用なことができるんですの?」
「うんー。あ、いたかも」
「もうですの!?」
マーレがそう言うと、ティエラに視線を向ける。
「行ってくる」
ティエラはそう言って姿を消した。
それから10秒も経たない間に、ティエラが体長2mくらいある大きな羊をくわえて戻ってきた。
「こいつか?」
「多分そうなんじゃない? こういう時図鑑があると便利だねー」
「それは……確かにそうですわね。お金に余裕はありますし、今度買いに行きましょうか」
「これだけで足りるのか?」
「もう何体か狩っておく?」
「そうですわね。ルーシーさんもスリープシープのお肉はそれなりに美味しいと言っていましたし、お2人は疲れていないですか?」
「大丈夫だ」
「問題ないよー」
それから、わたくしたちは役割分担をしてスリープシープを狩ることにした。
わたくしはその場でスリープシープの解体。
マーレはぼんやりと立ってスリープシープの発見。
ティエラはマーレの言葉で見つけたスリープシープを捕獲。
という役割だ。
そうしていると、あっという間にスリープシープが5体も集まった。
「マーレ、ティエラ、本当にすごいですわね。ありがとうございますわ。とりあえずこれだけで問題ありません」
「そう? それなら一度戻ろうか」
「ですわね。お昼の時間も大分過ぎていますし、ララのお店で食べて行きませんか?」
「賛成! 食材食べつくそうね!」
「いくのはいいが、食べ過ぎるのはダメだぞ」
「えー」
マーレが跳び上がるようにして喜び、ティエラはマーレをいさめる。
「時間も昼時を過ぎていますし、人も少なければちょっと多めに食べるくらいはいいかもしれませんわね」
ということで、わたくしたちは『土小人のかまど亭』に行くと、ララが出迎えてくれる。
「いらっしゃいませ」
「なんだかとっても可愛らしいですわね?」
「……遅刻したからいじられた」
そう言うララの髪形が変わっていた。
いつもは肩口で適当に切られた赤髪だけれど、それが両耳の上あたりからねじられて後ろにまわされている。
本人は無表情だけれど、もっと色々としてあげたいと思う。
「いいではありませんか。可愛いですわ」
「……面倒だからいい。席はいつもの所でいい?」
「ええ、構いませんわ。それと、スリープシープの肉を解体し「いる」
「うけとっ「受け取る」
「分かりましたわ。マーレ」
ララはさっきまでの無表情を消し去り、目をキラキラさせながらわたくしに近寄っていた。
わたくしはマーレに目をやると、頷いてスリープシープの肉をどこからともなく出してくれた。
「とりあえず3体分でいい?」
「ええ、構いませんわ」
「ありがとう、人を呼んで来る」
ララはそう言ってキッチンの奥に戻り、人を連れてきた。
マーレはララやその人たちにスリープシープの肉を引き渡し、いつもの様に席につく。
「それじゃあ食材全部食べちゃおうかな!」
「それ本当にやる気ですの?」
「クレアが止めないと本気でやるぞ」
「マーレ、ほどほどに止めておいてくださいな」
「……まぁ、分かったよ。今夜の楽しみにしておくね」
マーレはちょっと可哀想だったけれど、その後に20人前の食事をペロリと食べきったのを見たら、可哀想には思えなかった。
「げぇっぷ。もう食べられないよ……」
「あれだけ食べたらそうなりますわよ」
「一度マーレは腹が破裂するまで食べたらいいと思う」
「一回やって怒られたからもうやらないよ」
「やったんですの!?」
「やったのか……」
そんなことを話しながら、わたくしたちは街中を歩く。




