第38話 補修作業
「さて、ということで、わたくしとティエラは一緒に補修ですわね」
「任せろ」
わたくしたちはドワーフの宿舎に戻ってきた。
「わたしはマーレと一緒にご飯を作る」
「楽しみだよ。なんでも言ってね! 必要なら調味料もとって来るよ!」
ララさんはそう言ってわたくしの家に向かい、マーレもそれに続く。
「では、わたくしたちもやって行きましょう」
わたくしたちは宿舎の中に入り、まずは崩れた土壁を集めていく。
「使える物は使いませんとね。ちゃんと集めて行きましょう」
「だな。俺も手伝おう」
「ティエラも出来るんですの?」
「尻尾にトンボをつけて集めてくる」
「なんと、お願いしますわ」
ティエラはそう言って魔法で鉄のトンボを作って、土を集めてくれた。
とりあえず、床に落ちている土は集めた所で、これを再利用する。
「ではまずは外壁を補修するために色々と混ぜて行きますわ」
「ああ」
「まずは粘土、藁すさ、砂を1:1:1の割合で混ぜるのです」
「待て、藁すさと砂はいつどこで手にいれた?」
「こんなこともあろうかと買っていたのですわ!」
ちなみに粘土は売っていなかったのだ。
その理由として、みんな必要ならとりに行くから全然売れずに場所を取るので販売を止めたということらしい。
「なるほどな。流石クレアだ。こんなことまでやっているとは」
「まぁ、建築系としてやってくので、色んな素材に触れたいということもあるんですけどね。砂漠の砂とかもどこまで使えるのか試してみたい気持ちもあります」
「ならそれをしたらいいのではないのか?」
「お仕事ですので、ちゃんとスキルを使った最高の物を作ることがわたくしがしなければならないことですわ」
「……流石クレアだ。もう建築士としてトップになったのではないか?」
「流石にそこまで自信家ではありません。ですが、わたくしの作った家が一番良かった。そう言ってもらえるようになりたいですわね」
わたくしは没落して家を失った。
その家はとても古い家だった。
だけれど、昔に使っていた方が丁寧に使っていて、両親やメイドたちもとても大事にしていた。
だから古いながらも温かみがあり、とても居心地のいい家だった。
今でも、その家の温かみを思いだせる。
「クレアならなれるさ。とりあえずの目標は前に住んでいた家を越えることか?」
ティエラにはわたくしの想いはバレてしまっていたようだ。
嬉しいような恥ずかしいような気持ちだけれど、嫌な気持ちはない。
「ふふ、その通りですわ。ですので、ちゃんとこのドワーフの方々の家を、最高に補修しましょう!」
「もちろんだ」
ということで、わたくしは家の補修に入る。
先ほどの粘土などを混ぜ、そこに水を混ぜこんでいく。
すると、それは粘り気を得てよく壁に塗る時のねずみ色の土になる。
それを左官職人が持っているコテと呼ばれるものに乗せ、壊れた壁に塗って補修をしていく。
結構深い穴もあるのだけれど、そういう時は、
「こうして結構塗ってから……【乾燥】!」
スキルの出番だ。
これでちょうどいい塩梅になるように乾かし、綺麗になるように塗っていく。
ただ、当然ながら問題もある。
「天井はどうしましょうか……」
だが、この天井に土壁を塗っていくことはできない。
天井に塗った側から落ちてきてしまうのだ。
「俺が魔法で固定しようか?」
「うーん。魔法でもいいのですが、せっかくなら、使わずに直してみたい気持ちがあります」
「なるほど、ならどうするのだ?」
「そうですわねぇ……こうしましょう」
ということで届かない部分にはティエラが作ってくれた脚立を使って登る。
わたくしは大きな穴の下から少し上の部分に木の板を十字になるように打ち込んでいく。
この木の上に土壁を盛り、【乾燥】で乾かして土壁を盛って行くのだ。
「これなら問題なく補修していけますわ」
「なるほど、そんなやり方があるのだな。ただクレア、落ちるなよ? 危ないからな?」
「このくらいは大丈夫ですわ」
「怪我をしたら許さんからな?」
「心配しすぎですわ」
ということで、天井の木の上の補修は終わる。
ただ、これではまだ木の下側がまだ修理できていない。
「その部分はどうするんだ?」
「ええ、実は……ちょっとズルではあるんですが……」
わたくしはコテの上に薄っすら土壁を乗せ、天井の部分に当てる。
そして、
「【乾燥】!」
そうすると、コテの上にある土壁が乾燥し、天井に張り付く。
安全性については【設計】スキルで確認しているので問題ない。
これを繰り返すことによって、ほぼ完璧に補修できた。
「出来ましたわ!」
「すごいぞクレア! 普通はもっと時間がかかるはずだろうに!」
「スキルのお陰ですわ!」
「それも使うクレアの力だぞ!」
「ありがとうございます。では早速報告に行きましょう!」
「ああ!」
ということで、わたくしたちはララさんのところに完成した報告に行く。




