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没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~  作者: 土偶の友@転生幼女3巻12/18発売中!


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第27話 設計

「お疲れ様ですわ」


 目の前には木の骨組みだけになった倉庫があった。


 この骨組みに断熱材をいれたり、壁を作ったりしていくのが通常である。

 だけれど、マーガレットさんからの依頼はレンガ造りの建物。

 水漏れがしにくく、手入れもしなくても良くなる方式だ。


 なので、本当はこれも壊していかないといけないのだけれど……。


「そう急ぐ物でもありませんものね。期限までは結構ありますし」


 作ってもいいと言われている期限、実は後2か月もある。

 本当だったら急がなければいけないのかもしれない。

 ただ、わたくしには【ハウスメーカー】スキルがある。


 これのお陰で解体もかなり順調に進んだので、普通より倍くらいは早くなっているはずだ。

 だから、わたくしは目の前の骨組みを見つめて、スキルを使う。


「【設計】」


 わたくしがこれから作るのは、見張り台のようにすでに作ってあったものを作るのではない。

 新しく、一人でも多くの人が満足する倉庫を作らなければならないのだ。


「誰か数人が満足できないようなものではない。ここを使う人全てが満足できるように、わたくしは力を尽くすのです。それが、優雅ということですわ」


 わたくしの視界では、【設計】のスキルによるわたくしが考えた物の立体図が書き上がる。


 しかし、その建物は真っ赤に染まっている。


「これは……きっと駄目。ということでしょうね。見張り台の時はこんなことありませんでしたし」


 見張り台の時は、浮かぶ図形は白くて綺麗だったからだ。


 だから、ちゃんと壊れないように調整する。


「もう少し柱の間隔を狭くして……【設計】」


 わたくしは再度スキルを発動する。


 今度は先ほどよりも使い勝手は悪くなるが、頑丈に作ることができるだろう。


 その甲斐あってか、赤い部分と白い部分が出来る。


「これはきっと、白い部分は崩れたりせず、赤い部分は崩れて危ない……ということでしょうか」


 なんとなくではあるけれど、わかってきた気がする。

 白い部分なら、問題なく安全に作れる。

 赤くなったらそこは壊れる可能性があるので、止めておかなければならない。


 それでは、次は赤くなっている部分を修正していく。


「【設計】」


 ということで、わたくしは新しくやったのだけれど、それが中々に大変だった。


「今度はこっちが……」


 一か所ずつ修正をしていこうとするのだけれど、その箇所を修正したら、また別の箇所が赤くなっていく。

 そんなことが伝播し続け、一向に完成できる気配がない。


「どうしましょう……」

「どうしたクレア。何か力になれることはないか?」

「ありがとうございますわ。しかし、これはわたくしがやらなければならないことですので」

「そうか……何かあったら言ってくれ。すぐ側にいるからな」


 ティエラはそう言ってわたくしの側に座り込む。


 わたくしは彼の背中をゆっくりと撫でる。


 それから何度も何度も【設計】を使い、どうやったらできるのかを試し続けた。




「これで行けるかもしれませんわ」


 【設計】を使いはじめて、やっと全てを白くすることができた。


「おやおや、そんなに急いでいるが、無理はしなくていいんだよ?」

「マーガレットさん」


 わたくしに声をかけてくださったのは、『森妖精の羽衣』の店長であるマーガレットさんだった。


 彼女は腰に手を当て、ゆっくりと歩いてくる。


「急がなくていいとはどういうことですの?」

「解体って普通何十人で行うものだろう? まさか3人でやるとは思わなかったよ」

「そうなんですの? 結構早くやれたつもりなのですが、確かに数がいた方が良かったかもしれませんわね」

「いや、この倉庫の規模だったら、10人いたとしても1週間はかかるだろうね。それを3日でとは、恐れ入ったよ」

「ティエラとマーレががんばってくれたからですわ」

「あんたの手際もすごかったよ。普通、強化魔法を使ったらそういった細かなことは苦手になることが多いんだけどねぇ。そんなこともなくやってていやはや。すごかったよ」


 そう言ってわたくしを労ってくれる。


 わたくしは頭を下げる。


「ありがとうございますわ。そこで……少しご相談があるのですが、よろしいでしょうか?」

「相談? 一体なんの相談だい?」

「実は……マーガレットさんのご希望に沿わないように……いえ、修正して造りたいと思っておりますの」

「詳しく説明してくれるんだろうね?」


 そういうマーガレットさんの声音はとても優しいものだった。

 けれど、視線だけはしっかりとわたくしを見つめていた。


 けれど、その程度の視線でわたくしは目をそらさない。

 シエロの視線を乗り越え続けたわたくしに、越えられない視線はない。


 わたくしはしっかりとマーガレットさんの目を見つめ返して答える。


「もちろんですわ。あなたたちのために、わたくしは全力を尽くす。ここに一切の嘘はありませんわ」


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