第26話 付与魔法と解体
「これならいいと思いますが……そのためには、わたくしががんばらないといけませんわね!」
それから、わたくしは数日中ずっと付与魔法の練習をし続けた。
付与魔法をかける時に考えるべきことを、やればやるほどつかめてくるような気がする。
付与魔法をかける時にその効果がどう作用するのか、それも大事だけれどそれ以上に効果をかける道具自体にどのように作用するのか。
ということを考えていくことが、とっても大事な様に思う。
この前作っていた箱にかけた空間拡張を例にすると、その箱の中の空間がどう広がっていくのか、ということを考えて魔法を使うと、より成功率が高くなる。
イメージをするにも、ちゃんと段階を踏んでやっていかないといけない。
魔法というのは危険だと聞いていましたけれど、自分で考えて解決していくのは結構楽しい。
「むぅ……しかし、新しい効果の付与魔法だと難しいですわね……」
イメージをどうしたらいいのか。
ということで、付与が難しい。
でも、これを作らないと解決できそうもないので、なんとかしなければ。
わたくしがそうやって楽しく付与魔法の練習をしていると、2人に声をかけられる。
「クレア。流石に休め」
「そうだよ。無理は良くないよ」
「ありがとうございますわ。ティエラ、マーレ。でも、これはわたくしが楽しいからやっているんですわ」
「しかし、身体を壊してしまうぞ」
「大丈夫です。わたくし、身体が丈夫なのが取り柄でしてよ」
「だがな……」
「やっとできそうな感じが見えてきたので、問題ありませんわ!」
わたくしはそれから付与魔法の練習をし続けて、完成させることができた。
「出来ましたわ!」
「クレア、がんばったな」
「そうでもありませんわ、ティエラ。ただ楽しくて夢中でやっていただけですわ!」
「そうか、クレアは魔法の才能があるのだな!」
「遊んでいたことの延長線です。それよりもそろそろ『森妖精の羽衣』に行きましょうか。荷物の搬出は終わっているかもしれませんからね」
「ああ!」
ということで、わたくしたちは『森妖精の羽衣』に向かう。
「いってらっしゃーい」
「マーレも来ていただきますわ」
「僕も行くの?」
「ええ、これから建物の解体をしなければいけませんから」
「そっか、りょうかーい」
ということで、3人で『森妖精の羽衣』に到着して、マーガレットさんに会う。
「そろそろ倉庫の解体をしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、もう荷物の搬出は終わってるからね。いつでも構わないよ」
「ではすぐに始めますわね」
「頼んだよ」
ということで、わたくしたちは倉庫の解体に入る。
「それで、どうやって壊して行くの?」
マーレは座り込んでぼんやりと大きな倉庫を見ている。
「わたくしのスキルでやっていきたいと思いますわ」
「お、そんなスキルもあるんだ」
「ええその名の通り【解体】ですわ。これできっといけるはずですわ! 【解体】!」
わたくしがスキル名を叫ぶと、目の前の建物の一部が赤く光る。
そこは建物の最上部で、ぱっと見でも取り外しやすいような気がした。
あそこから……ということでいいのかしら?
「とりあえず登ってみますわね」
「僕は待ってるよー」
「俺はついていくぞ」
マーレは重さを考えてそう言ったのだろう。
ティエラは楽し気にわたくしを見ている。
「ではまずは、『身体強化』では上まで一気にいきますわ!」
シュバッ!
わたくしは一息に跳び、倉庫の屋根に着地した。
「流石クレアだ。もう強化魔法を使いこなしているんだな」
「そういうティエラもすぐに来ましたわね」
「鍛えているからな。それで、どうしたらいいんだ?」
「ティエラはどうしたら……お、見えましたわ」
ティエラは狼の魔物だ。
だから倉庫を丁寧に壊していくということはできない。
だけれど、【解体】スキルでは、ティエラはこうしていくべきだということが浮かんでくる。
ただ、それはカナヅチを使わないと出来ない場所だった。
「ティエラはもしかしてなのですが、カナヅチを使えたりしますか?」
「む、どうしてわかったんだ? クレアが付与魔法に熱中していた時に練習していたんだ」
「なんと……ありがとうございますわ。ここから……こっちの方に取り外していってくださいますか? 使える素材は再利用しようと思いますので」
「分かった。わからないことがあったら聞くがいいか?」
「もちろんですわ」
それから取り掛かろうと思ったのだけれど、マーレが下で暇をしていることを思いだす。
「まぁ、マーレなら昼寝をしているのも好きなのかもしれませんが、手伝ってもらいましょう。仕事ですし。マーレ!」
わたくしは倉庫の上から下を見ると、案の定マーレはゴロンと転がっていた。
「マーレ! お手伝いをお願いしたいのですが、よろしいでしょうか!?」
「いいよー! なにしたらいいの!?」
「降りますわ!」
わたくしは屋根から飛び降り、マーレの側に着地する。
「マーレにお願いしたいのは、下の階の壁を丁寧にはがしていって欲しいのですわ」
「丁寧に? 結構痛んでるんじゃないの?」
「痛んでない部分も多いみたいなのですわ。なので、使える部分は使っていこうかと思いますわ」
「わかったー」
マーレはそう言うとのそりと起き上がり、壁を丁寧にはがしていく。
「ではわたくしもやりますわ!」
ということで、わたくしたちは『森妖精の羽衣』の倉庫を少しずつ丁寧に解体していく。
それから数日。
「骨組み以外の部分の解体、完了しましたわ!」
後は、どうやって……やるのか。
それを……ちゃんと説明しなければならない。




