第22話 付与魔法の練習
「それで、どうするの?」
「わたくしが付与魔法を覚えてマジックバッグを自作するのですわ!」
「なるほど、クレアはすばらしいな。それでいこう」
「ですわ! なので、今から家に……」
ガシッ!
わたくしがそう言って家に足を向けようとすると、マーレに両肩を捕まれた。
「マーレ?」
「海に行く。って話じゃなかった?」
「で、でも、マジックバッグも……」
「それなら、僕に考えがあるから、海に行こう?」
「は、はい」
マーレの魚を食べたいという強い圧力に屈してしまう。
というか、元々その予定だったのだからいいのだけれど……。
わたくしたちは今にも雨が降りそうな曇り空の下、海に向かって歩く。
「しかし、雨が降りそうなので家に帰りたいのですが……」
「大丈夫、雨なら僕に任せて」
「わかりましたわ」
マーレが言うのならということで、わたくしたちは海に到着する。
「それで、どうしますの?」
「こうするんだよねー『空気水球』」
マーレが魔法を発動すると、わたくしたちを水の球が囲む。
わたしたちが余裕で入るほどの大きさで、なんならわたくしたちの家よりも広いかもしれない。
しかも真ん中に板が張ってあるようで、走り回れるほどに自由に使える空間だ。
「これは……」
「これの中にいたら水も潜れるし、呼吸もできるんだ」
「すごいですわ。マーレが水魔法を使えることは知っていましたが、こんなこともできるんですのね」
「ふふん。これでも結構生きているからね。さ、これで海の中に行くよ」
「わかりましたわ」
ということで、海の中に潜るのだけれど、あいにくの天気で雨が降り、強い風が出てくる。
なので、普段は綺麗であろう海も濁っていてあまり見えない。
「もうちょっといい天気の時に来たかったですわ」
「その時にまたやるよ。でも、今日はやることがあるでしょう?」
「やること?」
「ここで付与魔法の練習をしたらいいよ」
「できるんですの?」
もしそうだとしたら、とても素晴らしい案だと思う。
マーレは自信満々で頷いてくれた。
「うん。この球は結構固いし、素材は前に採った木も結構残っているよね? あれを四角い箱型にして、それに付与魔法の練習をしていくだけでいいよ」
「なんと……しかし、それでは狩りができないですわよ?」
「僕が狩るよ。ティエラが箱を作るための鉄を作って、それを使ってクレアが箱を作って付与魔法の練習。完璧だと思わない?」
「完璧ですわ! 流石マーレです!」
「ふふん。これでもクレアの従魔なんでね」
マーレはそんな風に謙遜をしてくれる。
「ちなみになのですが、付与魔法の使い方ってご存じですか?」
「んー確か思い描く効果を強く念じながら付与魔法を使う……とかだったかな」
「なるほど、とりあえずやってみるしかないんですのね」
「だね。失敗してもいいような箱を作って、ドンドンとやってみよう」
「分かりましたわ!」
「俺もがんばるからな!」
ずっとマーレと話していたからか、ちょっと妬いたティエラがそう言ってくる。
なので、ティエラの頭を撫でて、仕事に取り掛かる。
「いつもありがとうございますわ。それでは、早速やっていきます。【倉庫】」
スキルで木材を出し、早速加工して適当な箱を作っていく。
「最初の練習だから、掌サイズの箱でササッと作っていくといいよ」
「分かりましたわ」
マーレのアドバイス通りに箱を作っていく。
本当に小さな箱なので、30分で30個くらい作ることができた。
「できましたわ……では早速。イメージをして……『付与:空間拡張』」
マーレに教えてもらった魔法を使ってみるが、何というのか……手ごたえがない。
「失敗だね。でも最初はそんなもの。っていうのか、付与魔法使いは万の失敗の上に立っている。と言われるくらいだから、気持ちを切り替えて次々やっていくべきだよ」
「そんなに失敗しますのね……」
「だからこそ価値が高いんだよ。魔道具はね」
「なるほど、分かりましたわ!」
ということであれば、気にせずにガンガンやっていくべし!
ただ……。
「因みに、失敗したこれにもう一度やったりすることはできませんの?」
「できないね。正確に言うと、失敗した付与魔法がかかっている。という状態なんだよね」
「なるほど……ではこれは【倉庫】にでも入れておきますわ」
「木だから海に捨てても問題ないけど……まぁ、どこかで暖をとる時に使えるか」
「ですわ」
ということで、わたくしは無心で木の箱を作り、付与魔法をかけ続けるマシーンとなった。
「こうですわ! いえ、こうかしら!? それともこう!?」
しかし付与魔法は失敗をし続ける。
そうしているうちに、小箱の作り方は上手くなった。
作り続けている間に効率化が進み、箱を作る時間が1時間に200個は作れるようになったのだ。
ただその箱1つ1つに付与魔法をかけていくが成功はまだない。
「むぅ……中々難しいですわ……」
「仕方ないよ。諦めずにやろう。お、あいついいサイズ」
マーレはそういいつつも、とても楽しそうに海の中の魚を物色していた。
それから、何時間経ったかわからないほど時間が経ったころ、
「やっと成功しましたわ!」




