第20話 ベッドを作ろう
「それでは、ありがとうございました」
「いえ、こちらこそありがとうございました。それでは、失礼します」
ルーシーさんの建物の検査が終わり、彼女は頭を下げて帰っていく。
わたくしもしっかりと頭を下げた後に、ティエラとマーレの方を向いた。
「それではわたくしたちは新しい家具を作りませんか? 昨日は時間がなかったので」
「何の家具を作るんだ?」
「まずはベッドがいいかなと」
「ベッド? どうしてだ?」
「わたくし、ティエラに乗せてもらって寝ていますが、ずっとそれでは良くありませんわ。それに、みんなのベッドも作って、働いた後はちゃんと休めるようにしたいのです」
わたくしはティエラに向かってそう言う。
ティエラはちょっと考えた後に、ゆっくりと頷いた。
「確かにそれもあるか。分かった。俺たちは何をしたらいい?」
「釘とハンマーを出して欲しいですわ」
「分かった」
ティエラが作ってくれた釘とハンマーを使って、ベッドの木枠を作る。
わたくしはそこに【倉庫】から出したコカトリスの羽を入れていく。
「完成しましたわ!」
こんなのスキルを使うまでもないのです。
そもそも家具に使えるかどうかわかりませんが。
完成したベッドは四方を木枠で中にコカトリスの羽が入った素材の味を使った造りになっている。
「これはちょっと……ないかな」
「……クレア。流石にこれは俺でも擁護できない」
「そんな!? これに寝たら気持ちいいのではなくって!?」
「羽の付け根の方が刺さって痛いよ。だから、布団にいれるのが普通でしょ」
「そういえば家のお布団はそうでしたわね……」
コカトリスの羽毛はとてもいいと聞いていたから舞い上がってしまった。
「それなら布団を買いにいかないといけませんわね……」
「前に行った時の店にあるんじゃない?」
「そうですわね。早速行きましょう」
「俺はついていくぞ」
「僕はどうせ入れないだろうから待ってるよー」
「分かりましたわ」
ということで、わたくしとティエラの2人で以前行ったお店に行く。
「そういえば……お店の名前は……『森妖精の羽衣』というお店ですのね。失礼いたしますわ」
「俺は待っている」
「すぐに戻って来ますわ」
ということで、わたくしだけで店の中に入ると、以前いたわたくしと同年代の少女がいた。
彼女はイスに座って机に突っ伏していたけれど、わたくしが入るとゆっくりと顔を起こす。
「いらっしゃい。どうしたの? そろそろ服を変える気になった? あたしが作ってあげるわよ。高いけど」
「いえ、今回は布団に使うものが欲しいのですわ」
「布団ねぇ……自分で家具も作るの?」
「そうですわね。それもやっていこうと思っていますわ」
スローライフといったらやはりそういうことも自分でやらなければと思う。
「へぇ、すごいじゃん」
「そうでもないですわ。頼りになる友人に囲まれているからです」
「ああ、あの狼と熊の」
「ええ、それで、布団用の物はありますか?」
そう聞くと、彼女は立ち上がって頷く。
「当然あるわよ。ウチのお店はカレドニアで最も古くて伝統がある店。お客の要望に応えて色んな物を作るから、大きな倉庫も持ってて色々とあるんだよね」
「そちらを見せていただけるのですか?」
「もちろん。見ていっていいのを選んで。こっちよ」
そう言って、彼女はわたくしの先導をしてくれる。
彼女の後ろ姿はエルフの耳が見えた。
服は服飾店で働いているからか、薄い緑を下地にしつつも所々に青い装飾が入った服を着ている。
スラリとした身体にとてもきれいな金髪の髪をまとめていて、正直羨ましい。
彼女の後をついて行くと、木でできたとても広い倉庫に案内された。
高さは3階はあろうかという建物で、広さは体育館ほどもあるかもしれない。
「さ、こっちよ」
その広さに圧倒されていると、彼女はそう言って歩き出す。
「とても広いのですね」
「そうよ。伝統と格式があるからさ。それに、エルフは木と共にあるっていうくらいずっと一緒にいるの。だから石造りが多いこの街でもこっちの方がいいんだ」
「そういうこともあるんですのね」
「そういうこと。さ、ここにはエルフ仕立ての服を沢山売っているんだから、そっちを見てもいいのよ?」
「その服もそうなのですか?」
「そうよ。いいでしょー」
彼女はそう言ってクルンと回る。
その際にミニスカートがふわりと舞い上がった。
「下が見えませんの?」
「あたしたちエルフは本来木の上で暮らすからね。見えてもいいように下に履いているのよ」
彼女はそう言ってスカートを持ち上げると、そこには薄緑色の短パンを履いていた。
ちゃんとしっかりとしているようだった。
「すごいですわね」
「でしょ。ちゃんとしてるんだから。さ、ここがそうよ。選んでちょうだい」
「ありがとうございますわ」
それから、わたくしは彼女に色々と相談すると、とても親身になって相談に乗ってくれた。
この前はぐったりとしていたけれど、相談しようとすると、ちゃんとやってくれるみたい。
「これにしようと思いますわ」
「いいと思うわよ。それじゃあ戻りましょうか」
「はい。それにしても……少しだけよろしいでしょうか?」
「なに?」
「この建物……そろそろ修理した方がいいと思いますわ。とても立派な物だとは思うのですが、流石に……」
わたくしは相談をしている最中に時折床が鳴るのを何度か聞いていた。
それ以外にもかなり昔からあるからか、所々悪くなっているのが見える。
しかし、彼女は苦笑いをするだけだった。
「そうかもしれないわね」
「……」
わたくしはそれから代金を支払い、布団を持って家に帰った。
「僕たちの分も買ってくれたの?」
「ええ、当然です。入れないと聞いていたので、勝手に選んでしまいましたが、これで良かったですか?」
「僕はこれでいいよ」
「俺もクレアが選んでくれたのならなんでもいいぞ!」
ということで、布団にコカトリスの羽毛を詰め込み、ベッドが完成した。




