風に乗って
あたりはすっかり春一面です。ぽかぽか陽気に、色とりどりの花たちが咲いて、揺れています。ですが、道路のすみっこに咲いている、たんぽぽだけは違いました。
「さぁ、行くぞ!」
誰にも知られず、ひっそりと花は散って、今ではわたげがふわふわとゆれています。わたげたちは、今か今かと待ちかまえています。
「…きたっ!」
風がたんぽぽのくきを大きくしならせて、わたげたちはいっせいに風に乗りました。飛んでいくわたげたちに、たんぽぽが大きな声を届けました。
「飛んでいけぇ! 風に乗って、ぐんぐん、ぐんぐん、飛んでいけぇ! わたしみたいな道路のはしっこなんかじゃなくて、広くてお日さまの光がいっぱい当たる、大きな野原へ飛んでいけぇ!」
たんぽぽの声があと押しして、わたげたちはぐんぐん高く飛んでいきました。その姿を、たんぽぽはいつまでも、いつまでも、ずっと見送り続けるのでした。