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3 全景と香り
赤貝を俯瞰すると、柔らかな山並みのような曲線が見えます。触れるとほのかな温もり。その端には小さな突起があり、まるで灯台のようにひっそりと佇んでいます。この突起は隠されていますが、内側で脈打っているのか、外からはわかりません。
山並みに視線を戻すと、その表面はほんのり赤みを帯び、先ほどの衝撃で血圧が上がり、全体が少しむくんでいます。赤貝の内側を見ると、内壁から分泌された潤滑液がわずかに滴っています。それはまるで瑞々しい果物に降りた朝露のように輝いています。
野にいる野獣たちは、この初々しい朝露の甘美な香りを嗅ぎつけて集まってきそうです。
赤貝の幼さと無垢さは、未知との遭遇によって一層際立っています。その小さな体は、まだ成長の過程にあり、すべてが初めての経験です。未知と出会うその瞬間は、生命の神秘と美しさを感じさせます。