表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
幼い赤貝の話  作者: つき
2/5

2 初めての試練の余韻

幼い赤貝は、まるで初めての試練に直面する幼子のように、必死の形相を見せていた。小さな身体には、異物が押し入っていた。元来、広がる余地の少ないその柔らかな皮膚は、限界を超えて張り詰めていた。まるで、初めての挑戦に臨む子どもが背伸びをするかのように、赤貝もまた精一杯にその身を引き締め、恐怖に立ち向かおうとしていた。


赤貝の小さな体は本能的に反応し、異物を排除しようと必死に締め付ける。きゅっ、きゅっ。そのリズムはまるで心臓の鼓動のよう。3秒に一度、規則正しく繰り返される。そのたびに、赤貝の精一杯の抵抗が伝わってくる。しかし、異物はびくともせず、赤貝の努力を無情にも退けていた。


赤貝はせめて皮膚の摩擦を和らげようと、潤滑液を分泌する。その液体は、異物との摩擦を少しでも減らすための自然の知恵であり、赤貝の生命力の象徴でもあった。異物は赤貝の反応を感じ取り、ゆっくりと後退し始める。その動きに伴い、赤貝は鋭い痛みを感じ、その度に小さな体を震わせた。


異物が抜けると、静寂が訪れた。赤貝は、その短いが激しい闘いから解放され、ほっと息をつくように見えた。異物は赤貝の防御反応から分泌された潤滑液で濡れ、テラテラと光り、脈打っている。一方で、赤貝の押し広げられた後の幼い穴は、ゆっくりと元の形に戻ろうとしていた。その様子はまるで、初めての経験を経て成長する若者が、新たな一歩を踏み出すかのようだ。


その幼い穴は、初めての試練の余韻に包まれ、微かに痙攣しながら動いていた。まるで鯉が口をぱくぱくさせるように、小さな動きを繰り返す。その姿には、青春の瑞々しさが宿っていた。


そこには静かな時間が流れていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ