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第三章 ~『シロと聖獣』~


 シロを家族として迎え入れたエリスたちは、屋敷へと帰ってきた。


 楽しかったデートの思い出が残っているおかげで、幸せの余韻は続いている。アルフレッドも同じ気持ちなのか、屋敷に足を踏み入れた後も上機嫌だ。


 エリスたちは暖炉のある談話室に移動し、冷えた体を温める。ソファに腰掛け、薪から火花の散る音を聞いていると、心が安らいでいった。


「ここ、リラックスできる良い部屋ですよね」

「亡くなった父上がデザインした部屋なんだ。私も……そしてシロもお気に入りのようだ」


 シロは暖炉の前で丸まりながら、尻尾だけ左右に振っている。気に入っている証拠だ。


「そういえば、ここには面白いものがあったな」


 部屋の隅に置かれたチェストからアルフレッドは猫じゃらしを取り出す。ただし本物ではなく、猫と一緒に遊ぶための玩具のようだ。


「どうしてここに猫の玩具が?」

「母上が猫好きでな。昔、屋敷でも飼っていたんだ」

「シャーロット様ならきっと溺愛していたのでしょうね」

「目に入れても痛くないと可愛がっていた。きっとシロのことも歓迎してくれるだろうな」


 その光景が容易に想像でき、口元から笑みが溢れる。


(シャーロット様を交えて、シロ様と遊ぶのも楽しそうですね)


 いつか、そんな日が来ることを望みながら、まずは玩具を試してみようと、猫じゃらしを振ってみる。鈴が付いているため、振るたびに綺麗な音色が鳴った。


 当然、シロも存在に気づく。エリスの元へと駆け寄ってくると、猫じゃらしに飛びついた。


「にゃ~」

「ふふ、可愛いですね♪」


 猫とのじゃれ合いは存外に楽しめた。こんなことなら、前世でも飼っておけばよかったと後悔するほどだった。


 シロの愛らしい姿に癒やされていると、時間もあっという間に過ぎていた。いつの間にかアルフレッドの姿も消えていると気づく。


(遊ぶのに集中していたようですね)


 どこへ行ったのだろうかと視線を巡らせていると、アルフレッドがツナの入った小皿を運んできた。その皿がどういう用途かはすぐに察する。


「もしかしてペットフードですか?」

「ツナとオリーブオイルを混ぜただけの簡単な料理だ。だが味は保証する」

「ふふ、きっとシロ様も喜んでくれるはずです」


 アルフレッドがシロに皿を差し出すと、最初は警戒するようにジッと見つめていたが、その匂いだけで美味しいものだと気づいたのか、勢いよく食べ始める。


 食べている最中、シロはずっと尻尾を振っていた。味を気に入ったのだと伝わってきた。


「シロについてだが、料理のついでに調べてみた。だが図鑑に掲載されているどの種とも特徴が一致していなかった」

「未発見の個体ということでしょうか?」

「もしくは魔物かもしれない」

「え⁉ ですが、シロ様には魔力がありませんよ」


 魔物と動物の差は唯一つ。魔力の有無だけだ。魔術を扱い、魔力を肉体に纏うことのできる動物を、魔物というカテゴリに区分しているのだ。


 そのため魔力のないシロは、動物のはずだが、アルフレッドはそれを否定する。


「まだシロは子供だ。これから魔力に目覚めるのかもしれない。それにだ。伝説の聖女は、白い猫の魔獣を引き連れていたという逸話が残っている。聖獣と崇められた存在へと成長する可能性は十分にあると思う」

「シロ様がそれほど立派な存在に……」

「それにシロは知能も高い。聖獣も人語を話せるほど賢い魔物だったそうだし、シロが聖獣でも私は驚かない」

「ふふ、私もシロ様が本当に聖獣なら嬉しいですね」


 伝説のような強さがなくても構わないが、この愛らしい白猫とお喋りはしてみたい。その思いが通じたのか、「にゃ~」と鳴き声を漏らす。そんなシロの頭を優しく撫でるのだった。



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[気になる点] ご飯が美味しい時に尻尾を振るのは犬で、 猫がご飯を食べる時に尻尾を振るのは、不味いけど仕方なく食べている時では?
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