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幕間 ~『内心の共有 ★シャーロット視点』~

『シャーロット視点』



 エリスから回復魔術に目覚めたことを知らされたシャーロットの内心は複雑だった。もちろん彼女がコンプレックスから開放されたことを祝福したい気持ちは嘘ではないし、呪いを解呪できる希望を得られたことも嬉しい。


 だが心配も湧き上がったのだ。


 回復魔術の使い手となれば、貰い手に困ることはなくなる。わざわざ呪いで醜くなったアルフレッドに嫁ぐ必要がなくなるのだ。


 シャーロットは頭を悩ませるが、一人で心の内に留めておくには大きすぎる問題だった。


 彼女はアルフレッドの病室を訪れ、ベッドの側に置かれた丸椅子に腰掛けた。薬品の匂いが充満する室内に僅かに香水の匂いが漂っている。先程まで、エリスが病室にいた証拠だ。


「王都のお土産でクッキーを貰ったの。一緒に食べましょう」

「相変わらず、甘いものが好きだな」

「ふふ、女の子はみんな好きなのよ」


 木箱を開けると、宝石のようなクッキーが並んでいた。苺ジャムがクッキーの中央で固められ、本物のルビーのように輝いている。


「私はいらないから、あとでエリスに渡してほしい」

「エリスさんの分も確保してあるわよ」

「……腹が減ってないんだ」

「そう……」


 呪いの影響のせいで、日に日に食欲が落ちていた。エリスの前では心配させないために、無理に胃に詰め込んでいるが、いずれ限界が来るだろう。


「私はあとどれくらい生きられるだろうな……」

「悲観しちゃ駄目よ。少なくとも私より長生きしてもらわないと……それにエリスさんも泣いちゃうわよ」

「そうか……エリスを泣かせたくはないな……」


 アルフレッドは窓の外をぼんやりと見つめている。その瞳に浮かべた感情は読み取れない。


 静寂に包まれたあと、シャーロットは本題を切り出す。


「実はエリスさんについて相談があるの」

「回復魔術のことだな?」

「ええ。ひとまず教会への報告は保留にしたけど、いつか知られる日が来るわ。その時の対応について擦り合わせておきたいの」

「それなら私の中で答えは出ている。魔力に目覚めたエリスなら引く手数多だ。私のような呪われた男と結ばれる理由もない」

「でも、あなたはそれでいいの?」

「……本心はエリスの側にいたい。だが鏡で自分の姿を見るたびに醜いと自己嫌悪に陥るのだ……こんな私と無理に結婚させるわけにはいかない……彼女を愛しているからこそ、幸せになって欲しいんだ」


 アルフレッドの手は震えていた。呪いで影を落としていた彼の人生において、エリスは唯一の光であり、心の支えだった。その彼女を失う恐怖が頭をよぎったのだ。


「あなたにそこまでの覚悟があるなら、私もエリスさんの幸せを第一に行動するわね」

「頼む……」

「ただ当面の間、情報の公開を保留にする結論は変わらないわ。すべては安全が確保できてからの話だもの」

「私もそれには賛成だ。回復魔術で呪いを解けると知られれば、今度は彼女が黒魔術の標的となるかもしれないからな」

「決まりね」


 仮にエリスとの縁談が流れても、呪いで命を落としても、二人は彼女を幸せにすると決意する。その決断に後悔はなかった。


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