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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
67/331

67 酒飲み大会、居酒屋烏山城

題名が既に内容を物語っています。

 




 ── 祭りの準備 ──




 正太郎は父が戻らぬ場合は先に五穀豊穣祭りを行う様に指示を受けていた、父が戻っても戻れなくても豊作の祭りの準備を進めていた、菓子職人飯之助が不在でも既に弟子達もいる、麦菓子も問題なく用意が出来る、澄酒は用意出来なくても濁酒は沢山手配している、炊出しの芋粥も万全、洋一から教えてもらった金網で猪肉、鹿肉、雉の鶏肉を焙り、塩を振って食する串焼きも手配済である。



 洋一からは時告げ鳥(鶏)の卵を使った卵焼きと目玉焼きの簡単料理の作り方も伝わったが、時告げ鳥は食べては駄目だと聞いた話を思い出し、父に聞いてから判断する事にした。



 那須には鹿も猪も沢山おり、雉は現代の令和でも街中でよく見かける鳥である、鴨も那珂川、箒川、久慈川流域には生息しており、幾らでも手配出来る肉であった。



 豊穣祭りは二日間に渡って行うと烏山周辺の村々に通達、酒、串焼き、焼き魚、麦菓子、きな粉餅、芋粥はそれぞれ銭一文で買える、銭が無い場合は、米1合で交換出来る、銭、米が無い者は賄いの手伝えばそれらを飲み食べる事が出来ると通達した。



 今年は海の領地を得た事により、漁師達にも海の魚を干物にして沢山買い取り、馬の荷車を利用し烏山に配送した、併せて漁村から300名の者達を招待した。



 豊穣を祝う獅子舞が各村から、それぞれの地域独特獅子舞が15村から繰り出される事になった、那須の領国では古くから地域に根差した獅子舞が存在しており、獅子舞はお囃子の笛太鼓が打ち鳴らされ、踊る獅子は3名により踊りが披露される、小規模ではあるが古来より続く地域の伝統であり誇りである、令和の今もそれが受け継がれている。



 高さ10間の高櫓が設置されており、二段、三段目にそれぞれ獅子舞が踊る広さがあり最上段の一番上では、烏山太鼓が設置され、烏山城前は祭り準備で賑わっていた。



 初日と翌日最終日最後の演目に櫓の周りに20名の巫女達による祝い舞いを行う事にした、呪印から解放された巫女達、そのお披露目でもあった、これにより、より領民に受け入れられる事になるであろうと考え舞いを行う事に。



 過去最大の豊作であり、農民達はこの幸せを、この恵を与えてくれた領主に感謝、天に感謝、地に感謝、諸天に感謝する五穀豊穣のお祭りであると誰もが喜んで参加しようとしていた。



 5万石が6万3千石となり、農民達には増えた半分の6千五百石という恵みが与えられた、全ての農民達に恵みが降り注いだ五穀豊穣の祭り、誰もが嬉しく健気に手を取り合い喜ぶ那須の領民。



 移民として庇護を求めてやって来た流浪の民達も、この地に来た事は間違ってなかった、これ程素晴らしき天地は何処にも無い、この地に子孫繁栄を誓った、その者達にも正太郎はお祝いを共に祝おうと呼びかけ、銭や交換する米が無くても、これよりは那須の領民であると、譜代の農民達と共に祝おうと呼びかけ、村々の者がその者達に、お祝いの米を与え、一緒に祝おうと喜びあったのである。



 喜びの姿に、人の位、上下など存在しない、誰もが尊い人であり、この地に住まう者であれば、役割は違えども、共に幸せな人生を送ろうではないか、共に苦しみ、共に喜び、当主と共に進もうではないとかという、そこには共通の意識が芽生えた祭りこそ五穀豊穣の祭り。



 竹中半兵衛は、この領民達の姿を見た時にまだ20才という若者であり多感な青年である、領民の姿に泣きに泣き、声をだして泣き崩れた、私が生まれ育った美濃の地に比べ、なんという尊き地なのであろうか、人としてこの地こそ、誰もが目指すべき答えが、ここにあるではないか、これこそ我が使命であり、我が求めていた地である、この地こそ骨を埋めるに相応しい地であると慟哭した。



 半兵衛には自分より年上の者が知識無く浅慮の者をどうしても見下してしまうと言う、己の慢心が欠点だという事を知っていた、慢心を起こす自分に嫌気をさしてしまう自分に自問自答していた、五穀豊穣祭りは、自分本来の使命と大切な事はなんなのかと言う物事の本質を気づかせる原点となった。



 正太郎は、麦菓子は3枚を一組、きな粉餅は一口サイズ2個を一組、串焼きは各一本、甘い麦茶は一杯、芋粥も一杯、濁酒も一杯をそれぞれ1文(100円)で露店販売所を20ヶ所設け、初日は辰の刻《夜八時》までとし、二日目は卯の刻《夕方六時》までとした。



 泊まり込みで参加する場合は近隣の村々で納屋でも良いので泊まらせてあげて欲しいと依頼し、親無しの子を正太郎は引き取っており、その子達は炊出しと露店の手伝いをさせ食べ物も好きなだけ食べる様にと伝えた、祭りの日に銭も米も無く参加出来ない者を見つけた場合、一緒に手伝いを行わせ、その者達にも好きなだけ食べてよいと指示する正太郎。



 炊出しの手伝いに嬉しい事に、平家の里からも天狗の奥である藤が10名の奥方と親無しの子供と忍びの訓練をしている少年達30名も駆け付けてくれた、寝泊まりは城で部屋を用意するので数日過ごして欲しいと伝えた。



 中には野宿をする者がいるであろうと考え、暖を取れる焚火台も複数用意した、食する模擬店とは別に童用の弓で行う的当、輪投げなど遊べる露店も用意し、騎馬武者達と誰もが取り組める相撲の催しを開催する事にした。



 5人抜きした者には砂糖半斤《300g》が与えられるという特賞を用意し、砂糖目当てに力自慢が集まり、日頃誰よりも力があると自慢していた武士達も驚く程の猛者が那須には沢山いた。



 いよいよ祭りを明日に控え、鞍馬小太郎より、新たな歩き巫女4名を捕縛したと報告を受けた、今までの巫女達より年上で、手慣れた感じの巫女であると、恐らく戻らぬ巫女を不思議に思い手練れの巫女を寄越したのであろうとの事であった。



 正太郎は取りあえず天狗が戻るまで監禁して置くように指示し、祭りに集中する事にした、中には不埒な事を行う者がいるであろうと考え、鞍馬の者達には農夫等に変装させ警備も万全にする事に、それとは別に周辺警備の騎馬隊も交代で配置する事にし、これ以上ない万全の態勢で当日を迎えた。





 ── 酒飲み大会、居酒屋烏山城 ──





 いよいよ五穀豊穣祭りの幕開けである、合図は火薬を筒で鳴らし、どーん、どーん! それに合わせ太鼓が鳴り響くドンドン~ドンドン、露天コーナーは朝から仕込みが始まっており、開始前から酒と甘い麦茶コーナーには既に人だかりが出来ていた。



 昼前には、こんなにいたのかと言う程の領民が集まっている、あっちこっちで車座になってわいわい盛り上がっている、酒と甘い麦茶はどんどん減っていく、串焼きを待つ長い列、これでは収集が付かない、急ぎ臨時の配布所を増設、肉にたっぷりと塩が付いた串焼きと、海魚の干物の人気は凄く、海の魚を初めて食する者達も多数おり、塩味が効いた干物人気は想像以上であった。



 午後三時頃より相撲大会が行われた、自由参加である、5人抜きした者は砂糖半斤《300g》が賞品だと聞き、目の色を変えて参加し観衆を沸かせた、行事より、男は褌を付け、褌が取れたら負け、女は乳を出したら負けであると説明し爆笑となった。



 次から次と勝ち抜き戦が行われる、五人目で負けた者は悔しがり、見ている者は勝った者に声援を送り、やんや、やんやの大盛り上がり、そこへ最初の5人抜きの勝者が生まれた、土俵に上がった時に、その体の大きさにどよめきが起き一瞬静かに、その巨体の持ち主はアウンであった。



 身長は190を優に超え、肌は黒く光っており、筋骨隆々の男を見て、感嘆する観衆、登場しただけで凄い奴が出てきたとの歓声が沸いた、勝ち残りで残った男との勝負、行事が、はっきょいと声を出した瞬間にアウンが男の胸に手を差し出し当てただけで相手は土俵から転げ落ちてしまった。



 一瞬でアインが勝ってこれまた凄い歓声が起きた、力自慢の漁師も、ならば俺が一丁手ほどきしてやろうと、土俵に上がるも、アインの手が長く、頭を押さえられて、両手が空回りする漁師に爆笑が沸き起こり、漁師も顔を真赤になるも諦め自分から土俵を割ってしまった。



 簡単に5人抜きをしたアインであった、その後何組も取り組みが行われ、女子でありながら5人抜きをした者が出た、名を福という、福も立派な体格をしており、男どもをなぎ倒し、見事5人抜きしたのである、福の勇姿を見た奥方の藤は祭りの後に侍女として採用した。



 ウインもアウンに見習い見事5人抜きをした、結局5人抜きした者は二日間で30名も出る事に、武士、農民、マタギ、工夫など中には一人女性が含まれており、大いに賑う相撲大会になった。



 後日アウンとウインから、相撲大会で勝ち抜いた只一人の女性福と結婚を懇願された、あの様に立派な体格の女子と結婚すれば生まれて来る子供も健康であろう、素晴らしい体の女性であると説明された。



 アフリカの戦士の部族ならではの話であった、日ノ本の女性は綺麗でも小柄で結婚をしたい女性がいなかったと、育った環境で女性を見る目も違うのだなと感心した正太郎、いずれ母上に話してみると伝えた。



 初日と二日目の最後の演目は巫女達は豊穣のお祝い舞いを行った。



 シャンシャンシャー─鈴の音 シャンシャンシャー~  

(夏川りみさんの五穀豊穣の歌詞をお借りしました)


 五穀豊穣 サー(てぃん)ぬ恵み ハリ今日(くとぅし)

 果報(かふ)しどぅスリ サー御祝(うゆえ)さびら 嘉例(かりー)さびら

 太鼓三線小(てーくさんしんぐゎ) うち鳴らち ハリ今日(ちゅう)

 (もう)いる美童(みやらび)(ちゅ)らさ (ゆす)にまさてぃ


 野山(ぬやま)緑、 花や咲ち

 真南(まふぇ)(かじ)稲穂(いなふ)撫でてぃ

 来年(やーん)また 神ぬ美作(みさく) 御願(うに)げさびら

 五穀豊穣 サー(てぃん)ぬ恵み ハリ今年(くとぅし)


 20人が舞う、美しく可愛い巫女達の舞にうっとりする観衆、もう男衆の心を心臓をがっちり掴む巫女達の舞い、小さい女の子達からも私も巫女になりたい、どうすればなれるのかと、人気急上昇の巫女達。



 那須巫女48でも結成と思う程の大歓声の中幕五穀豊穣の祭りが閉じた。



どうやら大成功の五穀豊穣のお祭りで良かったです。

次章「新年会1」になります。

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