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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
311/331

関ヶ原・・・10




話は決戦二日前の前田利家と福島正則が柴田勝家と馬防柵を巡って対峙していた時に遡り大阪城に那須資晴の使者が城に残り城代として残っている豊臣秀長に謁見を求め訪れていた、使者の名は明智十兵衛であった。


秀長は表向き城代として残っているが実際は病のため城に残り療養中であり床にあった、史実ではこの時機の秀長は病を発症し戦にはほとんど出ておらず翌年の1591年2月に病死する、具体的な病名は不明とされているが咳き込む時が多かったと言い伝えが残っており肺病を患っていたようである、肺炎か結核であろうとの説である。


当時の治療方法は咳止めとなる薬を煎じて体力を使わず横になるだけで、新型コロナが世界に蔓延し恐ろしい程の被害を与えた身近な経験で言えば肺炎の恐ろしさが目に浮かぶ、喉をやられ肺が炎症し呼吸が出来なくなる窒息死の恐ろしさは想像以上と言えた、秀長の記録では療養期間が長い様であり結核ではないかとの説が多く見られるがこの時期は城内での移動程度は充分に出来ている、そこへ明智十兵衛が使者として訪れた。



「大納言様!! 如何致しましょうか? 戦の最中であり使者と会えば関白殿下が疑いをかけませぬか? 追い返した方が良いかと思われますが?」



「戦の最中に来たと言う事が重大な意味があるとは思わぬか? 兄上は儂を疑うことなどせぬ、那須資晴殿の正式なる使者となれば礼を持って遇さねばならぬ、謁見の大広間にお通し致せ!! 礼節を持ち威厳を示すのじゃ!!」



暫くして大阪城大広間の謁見の間は上段、中段、下段、二之間等各種の部屋があり謁見する相手の格式に合わせてよって使用していた、秀長は最上段の間に明智十兵衛を招き謁見する事に、この事は政所の耳にも届いた、戦の最中に敵の重臣が来たと言う事で最善の注意を払う為に報告された。



「お久しぶりであります、小田原では何かと介抱して頂き改めて感謝致します、処で明智殿!! 今は敵味方に分かれて戦っている最中であります、使者として訪れました事些か理解が出来ませぬ、使者の口上はどの様なものでありましょうか?」



「大納言様の仰る通りであります、某も主命によってまかり越しました、戦の最中である事が最重要との主命でありましたので使者として訪れました、主であります那須資晴様より大納言様に預かりました文を御渡してから大納言様の下知を待てとの事でありました、こちらの文を是非にお読み下さい!」



「戦の最中こそが最重要と那須殿は申したのであるな!! それ程の重要なる事が書かれていると申すのでありますな、では心血を持ってお読み致そう!!」



そこに書かれていた内容は秀長の想像を優に超える事柄であった、如何に城代とは言え一人では決められぬ最重要の事が、そしてその書かれている最重要の理由となる説明は使者の明智十兵衛が知っているゆえ説明を求めるかどうかを慎重に判断して下されと判断を託す内容で文は〆られていた。




「・・・明智殿はこの先の事を説明出来ると申すのであるな!!」



「はい、大納言様!!」



「では暫し座を休憩と致そう、某も準備を致す、お待ち下され!!」




一旦謁見を終え控えに通される十兵衛ではあったが、大納言秀長の額には大粒の汗が流れていた、文に書かれていた内容に驚き恐れたのである、謁見の間を離れすぐさまに大政所と政所に来て頂く様に手配した大納言であった、実に懸命な対処と言えた。


秀長が急を要するとして母上と兄秀吉の正室を呼んだのである。



「小一郎! 如何したその様に慌ててこの母迄お呼びする事が出来致したのか? 大納言秀長ともあろう者がその様に脂汗をかくなど何事があったのじゃ!!」



「実は母上! 姉上! 先程那須資晴殿の使者が参られ豊臣家一大事なる事を書かれております文を預かりました、書かれている内容があまりにも某1人では判断出来ませぬ事柄ゆえ姉上様と母じゃに家族水入らずにて判断せねばとの急のお呼びをしたのであります、他の者達には大暁過ぎる程の仔細にて伏せております、我ら三人にてこの事について話さねばなりませぬ!」



「殿下の判断を、夫である秀吉殿の判断は要らぬと申すのか?」



「兄上はその那須家と戦っている最中になります、兄上にこの文の中身を知らせるは余りにも惨い事になります!」



「ねねよ、小一郎がこのように狼狽えているとは母である私も初めての事ぞ、ねねがその文を読み私に説明しておくれ!!」



「判りました、では小一郎殿! 文を渡して下され」



「こちらです、お読み下され!!」



使者からの文を読み始める政所・・・その額には油汗が滲み全身が鳥肌に包まれた。



「・・・・母上様・・・まさか・・・豊臣が・・・終わるのか・・・・あり得ぬ!! 絶対に有り得ぬ!・・・夫はどうなる・・・・!!!!」



「えーい、ねねまで狼狽えて、貸して見よ!!」



「・・・・えっ! ・・・慶長3年8月18日《1598年9月18日》秀吉死亡・・・慶長20年《1615年》5月8日豊臣家滅亡・・・・こここ小一郎・・・これは家が無くなると書いてあるのか? 秀吉が亡くなってから僅か17年程で・・・どうしてじゃ? なんでじゃ? 何が起きるのじゃ? 答えよ小一郎、どうしてじゃ!!」



那須資晴からの文に書かれていた内容は具体的に秀吉が亡くなる命日と豊臣家が滅亡する日付が書かれており理由を知りたければ使者に訊ねよとの内容であった。



「小一郎! 使者に会って問いたださねばならぬ、理由を知らねばならぬ、他の者に聞かせてはならぬ、広間で会ってはならぬ他の者に知られてしまう、ねねの茶室じゃ、ねねの茶室が良い!! そこへ使者をお呼び致せ!! 今から理由を聞かねばならぬ、ねね狼狽えるのは使者の話を聞いた後じゃ!!」



大政所は76才の高齢ではあるがまだ健在であり史実では秀吉が朝鮮出兵に最後まで反対を行い寿命を縮めたと言われている、早速明智十兵衛はねねの茶室に部屋を移し大政所と政所、大納言三人との謁見となった、文に書かれている内容が想像だにしない事柄ゆえ身内だけでの謁見となった。



「お前様が明智殿であるな、ここに書かれておる内容を理由を知りたい、又知らねばならぬ、一体どうしてこの時にこのような文を那須殿は貴殿に託したのでありましょうか?」



「はい大政所様、政所様! 某が遣わされました理由はそこに書かれている内容を良く知る者でありますから当主であります那須資晴様より秘密裏に遣わされました、戦の最中であるからこそ取り返しつかぬ判断を皆様に求めての文になります!」



「では年寄りの私にも解るように説明を明智殿頼む!!」



「判り申した、では恐れながらご説明を致します!!」



時間を掛けゆっくりと明智十兵衛から語られる話に驚愕するとともに回避するにはどうすれば良いのか等の話が多岐に渡って話された、史実として起こった歴史の内容を知る者以外誰も知らぬ話を次から次と説明され此度の戦が起こる事も、そのきっかけとなった朝鮮出兵の事も那須資晴は当の昔に知っており、さらに言えば小田原成敗が秀吉によって行われる事も20年以上前から知っており対策を行っていた事等の説明が詳細に語られ三名は真っ青になりながら聞き入るしか無かった。


十兵衛の話を聞き大政所も政所も既に返事が出来ぬ状態となり正気を失い呆然としていた、なんとか意識を失わずに小一郎が十兵衛に最後の確認をする事に。



「・・・ではこの戦の収め方によって豊臣家は生き延びる事が出来ると申すのか?」



「はい、天下を二分する戦である以上皆が認める示しは必要となりますが豊臣家が残る道はあります、残すべきと判断して那須資晴様は私を遣わしました!!」



「しかし・・・兄じゃが・・認めねば・・・どうすれば兄じゃがこの事を認めるのであろうか?・・・」



「・・・・」



「私が赴いても無理かも知れぬ・・・どうすれば・・・」



「・・・小一郎・・・日吉に・・日吉に・・これを渡せ!! 頼む小一郎日吉を説得するのじゃ!!」



大政所が立ち上がり茶室に悲鳴が響き渡った、その光景に拝礼し伏する十兵衛の姿がそこに。



「では大納言様!! 関ケ原にてお会い致しましょう!!」



「明智殿は戦場に赴かれるのか?」



「はい、某も那須家の武将なれば御屋形様のもとにて戦いまする、然らば御免!」



明智十兵衛は那須資晴より命を受け大任を果たしたと言って良いであろうが本人は戦場で又もや戦えぬ事に苛立っていた、小田原成敗でも帝の使者として山科を運ぶ役目を仰せつかり此度の大戦でも果たして間に合うのかどうか一刻も早く戦場にと心は逸った。


十兵衛が関ケ原に戻れた時は決戦日の正午頃であり、戦場は異様な光景と化していた、榴弾の被害を受けぬ様に近くにいた者は霧散し逃げ惑うが今度は味方の指揮官達が逃げる者達を切り伏せ混乱に拍車が掛かる中、秀吉は全軍に那須の軍勢に一気に襲い掛かれとの命令を出したことで異様な光景が・・・

(なんだあれは・・・関白側の軍勢は・・・策も無く闇雲に突入しているのか、兵数を頼りに・・・あの人垣は死塁が束なって出来た死者の死嚢か・・・)


秀吉が一斉に突撃させた事で両軍の距離が縮み味方に被害が及ぶ恐れが出たので那須側の砲弾は中止となり那須資晴がいる本陣手前500間の所に関白側の死者が山積みとなり死者が累々と土嚢のように列を成していた、狂ったように突撃を闇雲に繰り返し行い那須軍の五峰弓と石火矢によって近づく者が次々に撃たれ絶命している恐ろしい光景に出くわした十兵衛。


一度に数千もの兵が狂ったように押寄せ、それを押し返す為に飛び道具の弓にて撃退する那須軍、関白側も鉄砲と日光弓で那須側に被害を与えようと弾と弓を放つも那須に届かず那須の被害は軽微と言えた。



「御屋形様! 明智様が戻りました!!」



「おう! 戻ったか、十兵衛をこれへ!」



「御屋形様 只今戻りまし御座います、言いつけ通り大納言殿には通じました、それと大政所と政所にも話をするしか無く某の話は通じております!!」



「うむ、ご苦労であった! 難しい役目十兵衛しか出来ぬ、敵と戦いながら敵を生かす工夫までせねばならぬとは、実に不思議であり妙とも言えるがこれ全て日ノ本の為ぞ、で、どうする十兵衛、そちの騎馬隊はここにいるが?」



「中食を食してより某も出陣致します、御屋形様とのお約束であります、参戦せずに戦が終わればこの十兵衛恨みます!!」



「悪かった! 十兵衛の好きにするが良い! 戦況を判断して判断するが良い!!」



「ここに来る途中充分に見計らいまして御座います、関白側は死者累々となる事を承知であのように愚かな突撃させるなど早く終わらせねば成りませぬ、十兵衛も一役果てして参ります!」



関ケ原での戦模様は兵数を頼りに突撃させての起死回生を狙った関白側の攻撃となっており実に愚かな策との罵った十兵衛! その十兵衛が騎馬隊を率いて参戦となった。



「何故! 日光弓が届かんのじゃ!! 同じ弓であろうが、向こうの弓が届くのに何故こちらの弓が届かんのじゃ!! 鉄砲隊ももっと押し上げよ!! 倒れている者を盾と使え、後ろに下がらせるな!!」



兵数を頼りに混戦とも言うべきか又は乱戦とも言うべきか、関ケ原は騒然とした戦場と化してしまう中で突如天満山山麓で硝煙が多数上がり戦場に鉄砲の音が鳴り響いた。



「関白軍右手後方より硝煙と思われる煙が見えます・・・鉄砲の音になります、右手後方となります!」



高櫓の物見より伝声管を通じて関白側でなにやら変化が生じたとの音声が伝わった。



「何事じゃ!! 何故奥深い処で鉄砲の音が鳴り響くのじゃ? 半兵衛判るか?」



「さてここより一里は離れております、某にもまだ判断出来ませぬ」



「硝煙多数! 鉄砲音多数引き続き鳴り響いております、何かが動いております、砂塵にてはっきり変わりませぬが、何やら大きい人の塊が動いております!!」



大政所が登場しましたね、大政所と言えば家康を懐柔するために人質として送った話が有名ですね、人質だと知った上で息子の為に身を挺した母親、又、大政所の死に目に会えず、大阪城で亡くなった事を聞いた秀吉がその場で卒倒した話も有名ですね。

次章「関ケ原・・・11」になります。

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