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那須家の再興 今ここに!  作者: 那須笑楽
307/331

関ヶ原・・・6




「殿!! お国より使者が参っております!!」



「何! 使者とな、使者とは誰であるか?」



「それが私も初めて見る者で当主の義久様からの使者と言う事で夜分でありますが殿にお伝えしております、如何致しますか?」



「お主が知らぬ者が来たと! 背格好はどんな奴じゃ!!」



「それが農民の姿であります!」



「農民とな・・正規の使者姿では無いという事は内々か・・このような時間に来るとは本国で何やら儂に伝えたい事が生じたか? それとも敵側からの誘いか? どちらにしても会ってみよう、念の為豊久も同席させるように!!」



深夜に農民姿で使者が来た家は島津家の陣中であり見知らぬ使者と言う事で訝しる豊久であった、島津家の本国は薩摩の九州と言う事でこの関ヶ原とは遥か離れた遠国、当主の義久は本国に残し、戦には当主の次男義弘と甥っ子の豊久を派遣していた、豊久の父は義久の弟であり叔父と甥の間からとなる。


深夜に使者が来たと言う事で使者と会う陣幕の正面の床几に座るのは敢えて義弘ではなく甥の豊久が座る事になった、使者が義久の命を狙う痴れ者の可能性があると豊久の考えからであった。



「その方が本国からの使者であるか!」



「はっ、夜分恐れ入ります、本国の殿より遣わされました伝兵衛と申します」



「本国の殿とは誰の事じゃ?」



「先ずはこちらをご覧下さいまし!!」



質問に答えずに懐から小刀を差し出した伝兵衛と名乗る使者。



「これは・・殿《叔父上》の自慢の小刀・・では間違いなく」



「殿この者どうやら間違いなく使者のようであります!!」



横の床几に座る義弘に語り掛ける豊久。



「ふむ、儂が義弘である、文は?」



「申し訳ありませぬ、文はありませぬ、そして私は当主様の使者でありますが黒田官兵衛様お二人の使者となります、どうかご察し願いまする!!」



「何??? 我が兄上の使者でもあるが黒田殿の使者でもあると言うのか? 一体何事が生じたと言うのか? 詳しく説明せよ!!」



「はっ、実は島津様が支配されます薩摩と九州全域は黒田様と計らいまして全て支配下に置かれております、此度豊臣之関白様が九州を離れた後に島津家と黒田様にて新たに支配下に抑えております、九州の諸大名はお二人の下知の下に動いております!!」



「はっ・・・九州が島津の支配地に・・・なっていると申すのか、僅かこのひと月の間で?」



「はい、その通りで御座います、そこで私がこの事を義弘様にお伝えして慎重にこの戦で動く様にと秘密裏に遣わされました、どうかこの点を差配に間違いが生じぬようにと義弘様にお伝えするようにとの事で御座います!」



「なななな・・・なんと叔父上・・!!」



「騒ぐな! 豊久! お主に今一度確認するが九州の地は島津が抑えているのか? それも全域?」



「はい、島津様と黒田様にて合力致しまして全域を支配下に抑えました、間違いありませぬ!!」



「この事、関白殿下に通じておらぬのか?」



「はい、黒田様が全ての道及び山道を封じております、島津様は海路全てを同じく封じております、危惧されます大友関係の家々は厳しく監視下に置かれ、仮に関白殿下に知らせが届くとしても数日後になろうかと察します」



「・・・ではこの話は・・・漏れておらぬと・・信じて良いのであるな?」



「某は、黒田様配下の忍びとなりますが、島津様より義弘様に直々にこの小刀を渡す様にと預かった使者であります、この小刀をご覧頂ければ後は義弘様にて判断致すとの言付けを授かっております、後は御髄に判断して下さいまし!!」



使者が話した内容は関白軍が関ケ原に向かった事で九州の地が空白地帯となり豊臣家元軍師であった黒田官兵衛が島津家当主、島津義久に誘いをかけ島津家と黒田家に残って居る兵数で九州全域を掌握したという話であった、何故その様な暴挙に走ったのか? 黒田官兵衛は必ずこの戦は豊臣側が、関白側が大敗し天下がひっくり還る事になる、那須家主導の天下になると、豊臣秀吉を誰よりも一番知る黒田官兵衛からの話であり那須家主導の天下となった暁には九州の地は黒田家と島津家にて差配になるという理由であった、本来九州の地は大友家と凌ぎを削り覇権を争い島津が勝ち取った地である、そこへ秀吉が関白となり大友宗麟が秀吉に救援を懇願され大友家に領地を返還せよとの命を断った事で島津成敗が行われ、島津家は薩摩一国に減俸されたという苦々しい経緯があった。



「叔父上! 今の話が本当であれば明日の決戦はどう動けば良いのでありましょう、夜明けと共に総軍にて戦闘を行う事になっております、我ら島津2万はどうすれば?」



「九州の地が既に我が島津の物になっているのであれば数日後には露見するであろう、仮にこの戦が関白側が大勝しても島津家は成敗される事になる、であれば露見しても何ら問題ないように那須側が勝利すれば九州全域とは言わずともそれなりの領地は島津に戻るように後押しするように動かねばならぬ!!」



「しかし叔父上! 我らの横にあの大友の元配下であった立花の軍勢がおりますぞ、慎重に動かねばあの立花が我らに襲い掛かりますぞ!!」



「立花の小僧があれ程伸びるとは、今では関白殿お気に入りの出世頭になるとは大友も裏切られたものよ!! 立花が4万であったな!! 我らが2万、此方には鉄砲が、向こうが長柄足軽と騎馬じゃ、立花を釘付けにすればどうじゃ!? 島津と立花だけで6万が那須に向かわねばどうなる!!」



立花宗茂は大友宗麟を主家とする立花家の当主であったが島津成敗に置いてその働きは群を抜き見事な功を上げた事で大友家から離し豊臣家の与力に格上げ、島津と九州全域の抑え役として築後一国27万国を与えられ大出世した宗茂であった、その戦いぶりは自ら先頭に立ち騎馬の上からの槍裁きで道を開き敵勢をなぎ倒して行く阿修羅との異名であった、主家に対する忠誠心が強く、史実での関ケ原合戦でも西軍の三成に参戦していた、しかし西軍は敗北し立花家は改易されるも宗茂の人としての生き方に家康も感心し後に筑後柳川10万9千石へと復帰する、それ程の逸材として名を残す武将であった。



「ここに動かぬ我らが6万となれば那須軍が8万、残り関白側が約14万じゃ、黒田殿の話では那須が大勝すると予想しているのであれば立花が我らに釘付けとなれば充分な後押しとなるので無いか?」



「充分どころか御釣りが来る計算となりますぞ、叔父上! 翌日には北条軍と小田軍がここになだれ込んで来ます、明日一日踏ん張れば良いのです!」



「豊久! 急ぎ重臣を集めよ! 軍議を開く!!」




── 的中 ──




南宮山に那須資晴を亡き者とする為に鈴木孫一自らが手練れた暗殺部隊を送った事を知った側室の梅と鞍馬小太郎達は罠を張り警戒していた、そして深夜その時は訪れた、最初に動いたのは狼が暗闇に向かって走り出した、その後を追う獣使いの申が走り出し、暗闇の中、狼の動きが止まり狼の見つめる暗闇に申が苦無を投げ放った、静寂な闇が支配する苦無を投げ打った先から小さきうめき声が上がり忍び同士による闇の戦いが開始されていた。


小太郎は当主鞍馬天狗の嫡子であり次代の頭領となる万能なる忍びでありその強さは既に当主天狗を凌ぐ力量の持ち主であり地面に耳を当て微かな地音を聞き、闇夜の中で指にて敵の位置を仲間に知らせ走らせていた、小太郎の周囲には戌を初め、飛風、颯、大申、申、子申、100貫という各棟梁級の腕確かなる鞍馬衆が配下を率いて南宮山陣地に、鞍馬達は夜目は勿論、視力、聴力が飛びぬけた者達で構成されておりどの忍びの集団より抜きん出た技の持ち主と言えた、次々と指示を出しその方向に向かって闇夜に走り出す忍び達、陣地の中心には梅が配下の菊と忍んでいた。


その中心の陣地目掛けて多数の足音が近ずく!


(この足音は・・・既に10名程葬っている筈だ・・この足音はこれまで以上の手練れた忍び・・・五名か?・・いや一人が止まった・・・来る・・四名が急ぎ陣幕に向かって来る・・・)


小太郎が梟の声で敵が四名陣幕に向かっている事を告げたその瞬間に一発の銃弾が闇夜に響き渡った、その銃弾が鳴り響いた瞬間に鎧に弾が命中した、その鎧こそ資晴が着ていた金ぴかの鎧であった。


陣幕の中心で床几に座っていたのは鎧を着た颯であった、金ぴかの鎧は南蛮鎧であり鎧の下には半袖の鎖帷子くさりかたびらを着ていたが鉄砲の弾は鎧を撃ち抜いていたが鎖帷子が変形し弾を防いでいた。


鉄砲を撃たれた颯は鎧を脱ぎ捨て身構えるも那須資晴がいる者と勘違いした新たな刺客が、しかし那須資晴では無く別の者が成り替わっていたとすぐさま理解し、偽本陣であると叫び離れようとするもその忍びは颯、梅、菊に三方向より囲まれる、鍵爪の縄が結ばれた飛び苦無を忍びに放つも宙を舞い身軽にかわす敵の忍び、颯が飛び掛かろうとするも逆に攻撃をされ危うく傷を負うところを鎖帷子のお陰で回避した。



「こやつは手練れの忍び、梅殿は下がれ! 菊よ前に!!」



梅は側室でありくノ一と言えども別格の者、適切な指示を出すも、手練れの前に出る梅!



「梅殿下がれ!!」 



颯が飛び苦無を片手に握り切りつけるも容易にかわす敵の忍びに、小太郎殿と同等の手練れと判断する颯! その額には皺が滲む、手前に出る梅の右手にも飛び苦無と左手には帯を獲物を巻き取る為の帯が!!



「菊! 妾の帯が宙を舞ったら苦無を敵の頭上に投げよ!!」



梅が声を上げて指示を出した事で颯もその意味を理解した。


薄暗い闇の中で対峙した敵の忍びこそ鈴木孫一本人であった、孫一はこの本陣は偽本陣であると悟り近づく仲間達に笛を吹き撤退の指示を出したが孫一は三人に囲まれているため独り対峙する事に。


(・・・偽本陣に撤退する者とさらに近づく者がいる・・その足音・・・2か?・・本陣には颯と梅と菊、敵は独り、そこへ2名の忍びが・・・他は遠ざかる・・・いや50間先の樹木より飛び降りた者がいる・・その者は何処に・・・拙い見失った・・そ奴こそが鉄砲の忍びだ!!)



小太郎はこの夜の指揮官であり全責任を負う者である、その小太郎が下した判断は!


指示を待つ飛風! 大申! と100貫に颯のもとに梅の下に行けという指示と、小太郎自らは那須資晴がいる本当の本陣に走り出した、敵は撤退したのでない、南宮山が偽本陣であると露見した事で戦の支度を整えている那須軍の中心地に向かったと判断した、そこには那須資晴がいる、最悪の状況を見越しての小太郎の判断であった。


暗闇が支配する静寂な偽本陣、本当に戦闘が行われているのか・・・呼吸音も聞こえぬ闇の世界で敵将の鈴木孫一、そこへ新たな忍び二名が風と共に地面を這うが如く現れた、もう一人は樹木から降りた後もそれほど近づかず鉄砲を構え暗闇に的を絞っていた。


この暗闇の中鉄砲を構えている者こそ鈴木孫一の盟友杉谷善住坊である、史実では信長を鉄砲で暗殺しそこねたその人物である。



忘れていた黒田が島津と計らい九州を抑えていたとは・・史実とほぼ同じですね、それと決戦前夜に忍び達が動くとは。次章「関ヶ原7」になります。

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